保存整備 / 本丸御殿の復元
復元模写
狩野派の美と色彩を現代に。

本丸御殿は、狩野貞信や狩野探幽など日本画史上最大の画派「狩野派」の絵師たちにより、部屋ごとに異なる題材で、床の間絵や襖絵などが描かれ、豪華絢爛に彩られていました。
戦災により本丸御殿は失われましたが、取り外すことができた襖絵や天井板絵などは焼失を免れ、今も大切に保管されていて、そのうちの1,047面が国の重要文化財に指定されています。
名古屋市では、「狩野派」の絵師たちが全精力を注いで描いた障壁画の美と色彩感覚を現在によみがえらせるため、1992年(平成4)より本格的な復元模写を進めています。
忠実に復元するためには、当時の絵師が使っていた素材や技法を用いなければならず、顕微鏡やコンピュータ、史料などで研究・分析を重ねています。
ミクロ単位の観察をもとに緻密な作業が行われ、江戸時代の絵師たちの感性とダイナミズムの再生に挑み続けています。
復元模写については、1,362面の完成に向けて計画的に進めています。
復元模写作品









復元工程

1.原画の調査・研究
観察・顕微鏡などで原画に用いられている材料の調査。文献による研究

2.原寸大写真を作成
原画と同寸の写真を作成。

3.上げ写し(転写)
原寸大写真の上に薄い和紙やトレース紙をあてて、線書きをする。

4.大下図作成
原画が欠損している所は、資料などをもとに補完する。

5.和紙(料紙)を漉く
和紙(料紙)を原画と同質の材料で特別に漉く。

6.ドーサを引く
料紙の上にドーサを引く。(ドーサは料紙のにじみを止めながら、絵の具の定着を可能とするもので、明礬と膠の混合液です)

7.料紙へ転写
ドーサを引いた料紙の上に大下図をのせて、間に念紙を入れて、骨筆(象牙や鉄で作った筆の形をしたもの)でなぞり、料紙に転写する。

8.墨線を引く
料紙に写った念紙の線を墨線で描きおこす。

9.箔足を貼る
原画と同様に手で打った金箔の感じを出すため、金箔で箔足を貼る。

10.金箔を貼る
原画と同じ大きさの金箔(おおよそ1辺が8.5センチくらい)を全面に貼る。(現在の金箔は、1辺が10センチから12センチくらい)

11.彩色
絵の具に膠を練り合わせて、彩色する。

12.下塗り
薄い色(絵の具の粒子の細かいもの)で下塗りをする。

13.中塗り
日本画の絵の具は鉱物質が多く、粒子の細かいものから粗いものへと重ね塗をしながら、中塗りをする。

14.仕上げ塗り
彩色に細心の注意を払って仕上げ塗りをする。

15.隅取り
立体感を強調するため、隈取りをする。

16.仕上げ
細部の線描きをして、仕上げる。
模写作品制作者
名古屋城本丸御殿障壁画復元模写制作共同体
(愛知県立芸術大学日本画保存模写研究会および加藤純子氏)
指導者紹介

加藤純子氏
東京芸術大学大学院日本画修了
1992年(平成4)名古屋城本丸御殿障壁画「竹林豹虎図」復元模写
名古屋城本丸御殿障壁画の復元模写に取り組む
2003~2005年(平成15~17)「国宝源氏物語絵巻」復元模写