観覧ガイド
本丸御殿
近世城郭御殿の最高傑作
本丸御殿は、尾張藩主の住居かつ藩の政庁として1615年(慶長20)に完成しましたが、初代藩主徳川義直は1620年(元和6)に二之丸御殿へ移り、以後は徳川将軍専用の宿館になりました。御殿の内部は障壁画や飾金具などで絢爛豪華に飾られ、江戸時代の先端技術を注いだ近世城郭御殿の最高傑作とたたえられるほどでした。1930年(昭和5)には、城郭では天守とともに国宝第一号に指定されましたが、1945年(昭和20)、空襲により残念ながら焼失しました。その後、第一級の史料をもとに復元工事を開始。2018年(平成30)、往時の姿を忠実に復元した優美な空間が完成しました。
本丸御殿では、部屋の格式や用途によって天井や欄間、飾金具、障壁画などのつくりや意匠がさまざまに変化します。これは江戸時代初期に完成したといわれる武家風書院造という建築様式の特徴であり、その様式美には武家文化の粋が息づいています。
復元にあたっては、現代の名工たちが細部に至るまで技巧の限りを尽くしました。天井に、欄間に、襖の引き手に、襖絵に、受け継がれてきた匠の技と叡知の数々をご覧いただけます。
各部屋の紹介
玄関
本丸御殿を訪れた人がまず通され、対面を待つ場所であり、古くは遠侍(とおざむらい)と呼ばれた建物です。襖(ふすま)や壁に金地の障壁画「竹林豹虎(ちくりんひょうこ)図」が描かれており、虎之間とも呼ばれました。
表書院
1615年(慶長20)の創建時には、最大かつ最も格式の高い間として正式に藩主に謁見する際に用いられ、江戸時代には広間と呼ばれていました。本丸御殿が尾張藩主の居館だった時の上段之間は藩主の徳川義直が座る部屋で、正式の座敷飾りを揃えています。
対面所
藩主が身内や家臣との私的な対面や宴席に用いた部屋です。上段之間及び次之間の障壁画は、「風俗図」と呼ばれ、京都や和歌山の四季の風物や名所、風俗がおだやかな筆致で描かれています。豪華な折上小組格天井(おりあげこぐみごうてんじょう)も見どころです。
上洛殿
1634年(寛永11)、三代将軍家光が京都に向かう途中、名古屋城に宿泊します。それに先立ち増築されたのが、本丸御殿で最も絢爛豪華な上洛殿です。江戸時代には御成書院と呼ばれていました。室内の装飾は細部まで贅の限りが尽くされ、当時33歳の狩野探幽(かのうたんゆう)によって描かれた「帝鑑図(ていかんず)」や「雪中梅竹鳥図(せっちゅうばいちくちょうず)」などは、傑作とされています。
湯殿書院
将軍専用の浴室(湯殿)です。風呂といっても現在のように湯船はなく、外にある釜で湯を沸かし湯気を内部に引き込むサウナ式蒸風呂でした。床は排水のために傾き、排水溝が設けられていましたが、蒸風呂として使用されなくなって以降、水平に改造されたと考えられます。斜面床だった時の記録が残されていないため、古写真にみられる水平床で復元しました。
黒木書院
落ち着いた風情のある黒木書院は、清須城内にあった家康の宿を移築した建物とも伝えられています。本丸御殿のほかの部屋は、総ヒノキ造りですが、この部屋には良質な松材が用いられており、その用材の色から黒木書院と呼ばれるようになりました。
本丸御殿スペシャルムービー
VT(バーチャルツアー)本丸御殿
観覧にあたってのお願い
本丸御殿では、柱はもちろん床板や障子の桟にいたるまで、ヒノキをはじめとする貴重な木材を用いています。飾金具や障壁画復元模写も、職人や絵師が心をこめて制作しました。今のこの美しさを保つため、皆様のご協力をお願いします。
- 入口で靴を脱いでいただきます。素足・ストッキングの方は、備え付けのスリッパに履きかえてください。
- スーツケースなどの大きな荷物は、御殿内の無料ロッカーに預けてください。
- 襖、障子、金具類には、絶対に手を触れないでください。
- 障壁画保護のため、カメラのフラッシュを事前に切ってください。切り方などが分からないときは、係員におたずねください。
- 建物を傷つける行為は控えてください。
- 飲食、喫煙はできません。
- 携帯電話の使用はできません。
- 車椅子の方は、御殿北側のスロープを利用してください。御殿内専用の車椅子を用意しています。
- 江戸時代の空間を正確に復元するため、照明を控えています。冷暖房設備、トイレなどはありません。体調に気をつけて観覧いただくようお願いします。
本丸御殿入館時間・入館料・入館出入口
入館時間
午前9時から午後4時まで
入館料
無料 ※ただし、名古屋城観覧料が必要です。
入館出入口
本丸御殿の観覧にあたっては、2つの入館出入口があります。それぞれの入館出入口からご覧いただける主な部屋は下記のとおりです。
中之口部屋横出入口 | 玄関、表書院、対面所、上洛殿 |
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湯殿書院前出入口 | 湯殿書院、黒木書院 |
本丸御殿音声ガイド
名古屋城本丸御殿内を音声で解説します。詳しくはこちらをご覧ください。