お城note

木曽・裏木曽で3年ぶりに「市民の森づくり」〜名古屋の城とまちをつくった森へ〜

名古屋城は、本丸御殿の復元をきっかけに、木材の産地である木曽・裏木曽で「名古屋市民の森づくり事業」に取り組んできました。江戸時代の名古屋のまちづくりにおいても欠かせなかった木曽ヒノキをはじめとする良質な木々。森の恵みでふたつの地域がつながってきたのです。
2022年9月と10月、新型コロナウイルスの影響で中止されてきた森づくりが3年ぶりに開催されました。たくさんの方が参加した、バスツアーの様子をレポートします。

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名古屋と木曽・裏木曽。江戸から続くつながり。

はじめに、名古屋と木曽・裏木曽の関係をご紹介します。長野県木曽郡から岐阜県中津川市にまたがる木曽・裏木曽エリアは、昔々から木曽ヒノキをはじめとする良質な木材の産地として知られてきました。江戸時代には尾張藩の所領とされ、名古屋城や城下町をつくるのに、たくさんの木が両地域から送り出されたといいます。時をこえ、現在の本丸御殿の復元にも最高の木曽ヒノキが使われました。

(この歴史については、以前のお城noteで詳しく取り上げています。そちらもぜひご覧ください)

名古屋にも多くの恩恵を与えてくれる木曽・裏木曽の森林。その環境をこれからも守っていくために始まったのが「名古屋市民の森づくり事業」です。2008年にスタートし、毎年120名規模のバスツアーが実施されてきました。参加者は植樹や森の管理を体験。10年間で実に1万本もの木が植えられました。この活動が3年ぶりに実施されたのです。

裏木曽の森に木を植え、豊かな自然も満喫

2022917日、岐阜県中津川市、裏木曽エリアでの育樹バスツアーが開催されました。早朝に名古屋を出発し、中津川市加子母の森へ。今回は、参加者全員が植樹を行いました。山の斜面に穴を掘り、木を植え、防護用のネットをかけます。

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自然環境で、若い樹木がすくすくと育つのは決して簡単なことではありません。鹿などの動物に食べられてしまったり、角で樹皮を剥がされてしまったり。過去の市民の森づくりで植えられてきた木々も、すべてが残っているわけではないのです。

そこで、木を植えるだけでなく、守るための工夫も必要となります。参加者のみなさんは、加子母森林組合のプロの指導を受けながら、作業を進めていきました。育樹経験の有無に関わらず参加できるのはこのプログラムのいいところ。「植樹は初めて」という方も、木を植える穴の深さやネットの掛け方など、コツを教わりながら一所懸命に取り組んでいました。小学生くらいのお子さんも、森林組合の方に手伝ってもらい無事に植樹を完了。森で過ごす時間を楽しむ様子が印象的でした。

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午前で育樹を終え、午後は中津川市の観光名所「乙女渓谷キャンプ場」でグループに分かれて体験プログラムを実施。山道を散策し渓谷の美しさを味わうウォーキング、葉っぱや木の実での遊びも楽しむ森探訪、ヒノキを使ったバターナイフづくり。各々が選んだ体験を通して、裏木曽の自然を堪能しました。その後、帰路には名物の栗きんとんなど中津川土産を購入する時間も。市民の森と合わせて、中津川市の魅力を知る一日になりました。

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木曽の森で枝打ちを体験。地域の歴史や産業にもふれる。

1022日には、長野県木曽郡、木曽エリアでの育樹バスツアーを開催。この日も早朝に名古屋を出発し、木曽福島の森を目指します。この日は、すくすくと育ちつつある木々の枝打ちを体験。周辺市町村によって組織される木曽広域連合のみなさんのご協力のもとで作業を行いました。

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良質な木が育つには、十分な光と空間が必要です。光の当たり方などによって、まっすぐ育つかどうかが決まります。さらに、節のない美しい木材に仕上げるためにも、成長過程での枝打ちは欠かせません。森の管理でとても大切な作業のひとつなのです。参加者のみなさんは、のこぎりを手に森の中へ。樹皮を剥がしてしまわないように、上手な刃の入れ方のアドバイスももらいました。裏木曽同様にプロの方々に見守られながら、次々と枝が切り落とされていきます。枝打ちが完了した森の景色は、作業前と比べて一目で分かるほど明るいものに。光の差し込むスペースができたのがよく分かります。たくさん日光を浴びて、順調育っていくのではないでしょうか。参加者さんからは「なかなか入れない場所で、良い体験ができた」と喜ぶ声も聞かれました。

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育樹を終えた後、午後には「御嶽神社 王滝口里宮」と「長野県製薬株式会社」をめぐりました。御嶽神社 王滝口里宮は、「岩戸権現」とも呼ばれ、室町時代から信仰を集める由緒ある神社。地元王滝村の村史編纂にも携わったガイドさんの案内で、普段は閉じられている社殿の中も特別に見学できました。続けて、長野県製薬は「百草丸」で知られる老舗薬品メーカー。愛飲する人も多い百草丸の他、直営店でしか購入できない商品を多数ご用意いただきました。その後、木曽福島の道の駅でお土産を買う時間もあり、木曽の歴史、産業、特産品を楽しむ時間を過ごしました。

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これからも続く森を見守る取り組み

3年ぶりの開催がかなった「名古屋市民の森づくり事業」。今後も、木曽・裏木曽とのつながりを礎に、名古屋市民にとっても大切な森を保護していく活動が続けられます。小さなお子さんも参加できるプログラムです。この記事や森づくりの様子をおさめた動画をご覧いただき、この取り組みを知るとともに、たくさんの方にご参加いただけたら嬉しいです。ぜひ次年度以降の情報もチェックしてください!

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Text:Yuta Kobayashi Photo:Tenyu Inaba