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名古屋城を、世界に話してみた!

名古屋といえば、やっぱり名古屋城。けれど、その魅力は、まだ十分に世界へ届いているとは言えないかもしれません。名古屋城の魅力を世界に伝えること、そして地元の人にも改めて知ってもらいたい。そんな思いから始まったのが「名古屋城×世界の文化遺産 国際交流プロジェクト」です。学生たちが名古屋城を学び、自分の言葉で伝えながら、海外の学生と交流するこの取り組み。文化遺産を通して生まれる対話は、国際交流にとどまらず、学生一人ひとりの成長にもつながっていきます。本記事では、今年度実施されたプロジェクトの様子を紹介します。

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名古屋城×世界の文化遺産 国際交流プロジェクトとは

今年度で3回目を迎えたこのプロジェクト。今回の交流先は、イタリア・トリノとオーストラリア・シドニーです。名古屋の学生と、両都市からの学生35オンラインでつながり、海外の学生は自国の文化遺産を、名古屋の学生は名古屋城を紹介しました。

互いの文化遺産について語り合い、質問し合う時間は、国や言葉の違いを越えた交流の場に。名古屋城を「伝える」ことで、学生たちはあらためて、その魅力と向き合っていきました。

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このプロジェクトの魅力の一つが、名古屋城での事前学習を重ねながら準備を進められることです。学生同士が交流しながら名古屋城について学び、理解を深めていくプロセスそのものが、大切にされています。2025年度は、全2回の事前学習を実施し、3月にはトリノとシドニーを結ぶオンライン交流本番を迎えました。学生たちは名古屋城について学び、考え、「どう伝えるか」を自分なりに模索しながら、少しずつ準備を重ねていきました。

プロジェクトを企画・運営する堂原有美さんは、「名古屋城を世界に伝えると同時に、学生自身がその魅力を知り、好きになってほしい」と話します。

参加する学生の多くは、最初から名古屋城に詳しいわけではありません。けれど、レクチャーや現地見学を重ね、準備から本番へと進む中で、少しずつ理解を深めていきます。名古屋城の魅力を一方的に「伝える」のではなく、対話を重ねながら「交流する」こと。その積み重ねが、学生たちにとって大切な経験となっていきました。

1回事前学習(1025日)名古屋城を「知る」から「体感する」一日

名古屋能楽堂会議室に、約30名の学生が集まりました。大学や学年、専攻はさまざま。海外経験が豊富な学生もいれば、「国際交流に関心があって参加しました」という学生も。会場には、これから始まる時間への期待と、少しの緊張感が漂っていました。

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冒頭の挨拶では、名古屋城総合事務所の西浦志乃さんが「海外の方に名古屋城を自慢する気持ちでプレゼンしてください」と学生たちに呼びかけました。続くレクチャーでは、名古屋城の見どころに加え、本丸御殿の復元や天守の木造復元計画など「未来の名古屋城」についても紹介。名古屋城が、未来へ向けて整備が続く文化遺産であることが伝えられました。

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プレゼンテーションに向けて行われたチーム分けでは、「名古屋のまち紹介」「名古屋城の歴史」「名古屋城の紹介」「本丸御殿」の4つのテーマに分かれ、各チームで自己紹介を行いました。初対面のメンバー同士でしたが、このプロジェクトに参加したきっかけや、現在学んでいること、将来の目標などについて話し合い、活発な交流が生まれていました。

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能楽堂に美しいマンドリンの音色が響きわたりました

この日の特別ゲストは、イタリア人マンドリン奏者のアレックスさん。イタリアの名曲やオペラ、日本の曲「さくら」などが演奏され、学生たちはその音色に耳を傾けました。演奏の合間には、文化の違いを越えて活動してきた自身の経験が語られ、国際交流は相手へのリスペクトがあってこそ成り立つという言葉が、学生たちの心に残りました。

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午後は、本丸御殿や城内を巡る体感ツアーへ。レクチャーを受けたうえで歩く名古屋城は、それまでとは違って見えます。建築の細部や石垣の積み方、庭園の構成など、一つひとつに理由があることに気づき、学生たちの視線は次第に「伝える側」のものに変わっていきました。

学生たちの声名古屋城と国際交流

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左から、奥村優衣さん、内藤穂乃果さん、田中斗真さん

大学4年生の田中斗真さんは、半年ほどイタリアに留学した経験があり、イタリア語も使いながら積極的に他の学生やアレックスさんとも交流。「イタリアの人に名古屋城を説明するというのは、まさに自分のための企画だと思いました。日本に興味を持ってもらえるきっかけになればうれしいです」。

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名古屋城でガイドボランティアをしてきた内藤穂乃果さんは、オペラ歌手を目指してイタリア語を学んでいます。「名古屋城は再現性が高いところがすごいと思っています。名古屋城もイタリアも大好きなので、両方に関われてうれしいです」。
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このプロジェクトの特長の一つが、学生が運営にも関わっている点です。今回で3回目の参加となる奥村優衣さんは、全体のファシリテーターにも挑戦しました。「以前、ウズベキスタンと交流した回のあと、現地の方と知り合って、会話が広がったことがあります。一つのことが、いろいろな人との関わりにつながり、広がるのがうれしいです」

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また、ドキュメンタリー制作班として、名古屋大学を中心に活動するSBF中日本学生放送連盟の学生たちが、動画カメラやスチールカメラを手に、参加者へのインタビューや記録撮影を行いました。動画撮影を担当した隅谷圭貴さんは、撮影を通して、国際交流を目指す学生たちに触れ、刺激を受けたといいます。また、「重機もない時代に築かれた城の技術力に、改めて驚いた」と、名古屋城が持つ技術的な価値を実感しました。
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会場では学生が撮影を行い、インタビューも

2回事前学習1214日) 本丸御殿で、世界に向けたプレゼンテーション練習

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2回事前学習は本丸御殿・孔雀之間で行われました。文化財の中での実施となり、学生たちは緊張感を持ってプレゼンテーション練習に臨みました。

プレゼンテーションの前にはWTOCスタッフの寺田祐さんからチームビルディングについて。名古屋大学の森典華教授からは、「多様な人と協働する力、チャレンジ精神、相手に合わせて伝える力。これらは、まさに今回のワークそのもの」と、今回の取り組みをキャリア形成の視点で捉えるお話があり、学生たちにアドバイスが送られました。

多彩な切り口で伝える名古屋城。プレゼンテーション練習とフィードバック

プレゼンテーションの切り口は多様で、都市同士の共通点に着目した比較、観光・食・文化・ポップカルチャーまで名古屋の魅力を幅広く伝える構成、名古屋城の歴史や建築を軸にした解説など、さまざまな視点が見られました。

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スクリーンショット 2026-03-31 10.30.26.jpgクイズ形式で発表を行うなど、各チームが工夫をこらしてプレゼンを実施

江戸時代の古地図を用いた説明や、クイズ形式で理解を深める工夫、写真を効果的に使ったスライドなど、伝え方にもそれぞれの個性が表れていました。イタリア語の挨拶で親しみやすさを演出したり、英語を中心に発表したりと、海外の学生を意識した姿勢も印象的でした。

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積極的に発言をして意見交換する学生たち

フィードバックは学生同士で行われ、互いの発表を尊重しながら意見を交わす、前向きで活発な場となりました。

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スクリーンショット 2026-03-31 10.31.52.jpg熱心に聞き入る学生や、楽しそうにうなずく学生

「写真が多くて分かりやすい」「言語を交えた表現が印象に残った」といった評価に加え、「専門用語が伝わっているか」「情報量が多すぎないか」といった具体的な改善点も挙げられました。さらに中継先のシドニーからは、「漢字にはふりがながあると理解しやすい」「名古屋城ならではの魅力がより伝わる構成にしてほしい」といった海外ならではの視点が示され、学生たちは"相手に伝える"ことの大切さを実感していました。

オンライン交流―シドニーからのメッセージ

後半は、シドニーからの中継です。自治体国際化協会(クレア)シドニー事務所の西川修平さん、Georgia Ramsay(ジョージア・ラムジー)さんによるプレゼンテーションが行われました。

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シドニーは日本と季節が反対で、中継時は夏。冒頭では、ジョージアさんが現地の様子をライブ中継し、真夏のクリスマスの風景を伝えてくれました。

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海外で働くということ、文化や働き方の違い。リアルな経験に基づく話に、学生たちは真剣な表情で耳を傾けます。「海外に出ると、日本の良さにも気づく。海を越えることで、視野は確実に広がります」「If you want to make it happen, it will happen!」。その言葉は、国際交流を目指す学生たちの背中を、力強く押していました。

本番に向けて―学生たちの声

スクリーンショット 2026-03-31 10.32.51.jpg伊藤綺音さん、橋本瑚美さん、平野瑞葉さん。写真を中心にしたスライド構成や和柄の背景など、視覚的な工夫が好評。

シドニー「名古屋のまち」担当の伊藤綺音さん(大学3年生)、橋本瑚美さん(大学1年生)、平野瑞葉さん(大学2年生)。伊藤さんは海外と関わる仕事をしてみたいと、活動中。橋本さんは英語を話したいと語学の勉強に励んでいます。また、平野さんはシドニー留学を経験し、このプロジェクトに参加しました。今回は緊張もあったので、時間配分や話し方を本番までに修正したい、と振り返ります。

スクリーンショット 2026-03-31 10.33.08.jpg伊藤陽奈さん(左)と片岡大輔さん(右)。プレゼンテーションは全編英語でチャレンジ

シドニー「本丸御殿」担当の片岡大輔さん(大学院1年生)と伊藤陽奈さん(大学2年生)。片岡さんは将来は英語を使って海外と関わる仕事に就きたいと考え英語は独学で習得中。今日は他チームの発表にも積極的に質問を投げかけていました。伊藤さんはアメリカ留学を経験し国際交流に関心を深めています。次回に向けて、よりシドニーの学生との接点を意識した内容づくりにしたいと振り返ります。

プレゼンテーション本番!オンラインで世界と交流

そして、いよいよ本番です!トリノ、シドニーとのオンライン交流を迎え、各チームがブラッシュアップしたプレゼンを披露しました。初めは緊張感もありましたが、発表が始まるとチャットには「いいね!」やコメントが飛び交い、場は一気に和やかな雰囲気に包まれました。画面越しにうなずきやリアクションが交わされ、互いに関心を寄せながら交流する様子が印象的でした。

スクリーンショット 2026-03-31 10.06.42.jpgトリノとのプレゼンテーション1回目の様子。緊張していた学生たちも次第に和み、にこやかな表情に

進め方は英語中心のチームや、やさしい日本語で進めるチームなどさまざまでしたが、どのチームも丁寧にプレゼンを行い、資料の工夫も含めて事前の学びがしっかりと活かされていました。トリノやシドニーの学生も日本語で地域の歴史や文化を発表し、その上手さに参加者が驚く場面もありました。

質疑応答では率直な質問が次々と交わされ、自己紹介タイムではブレイクアウトルームに分かれて少人数の交流で会話も弾み、オンラインでも距離を感じさせない温かな時間に。発表後には「難しかったけれど伝わってうれしかった」「自信につながった」「自分の地域について新たな発見があった」といった声も聞かれ、緊張の中にも確かな達成感と成長が感じられる、あたたかな交流のひとときとなりました。

名古屋城から、可能性あふれる未来へ!

このプロジェクトを通して学生たちは、名古屋城の魅力を「知る」だけでなく、「自分の言葉で伝える」経験を重ねてきました。相手に伝わる工夫を考え、対話を重ねる中で、視野は大きく広がっていきます。今回の経験は自信や達成感へとつながり、自分自身の成長を実感する機会となりました。

この経験は、これからの未来を切り拓く大きな力になります。名古屋城をきっかけに広がったこの交流が、学生たち一人ひとりの可能性を、さらに豊かにしていくことが期待されます。

Text:Yuko Mouri
Photo:Yasuko Okamura