お城note

夜のお城でクラシックコンサート

10月4日に「名古屋城秋まつり2022-2023」の催しの一つとして、夜間特別公演「タレイア・クァルテットコンサート」が開催されました。会場は名古屋城・本丸御殿南側の中庭。日中は暑さが感じられたものの、日が暮れると少しひんやりとした空気が感じられる中で、クラシック音楽をはじめ多彩な音楽に耳を傾けました。秋の気配と、音楽の響きに酔いしれたひとときをレポートします。

名古屋城築城の時代に花開いた「バロック音楽」

スクリーンショット 2022-11-12 17.01.08.png2021年「名古屋城秋まつり」で開催されたヴァイオリンコンサートに続いての開催となる本コンサート。名古屋城と西洋のクラシック音楽という、一見するとまったく異なるものと思えるこの2つには、実はちょっとした共通点があります。

それは「時代」。現在クラシック音楽と呼ばれる器楽音楽(=インストゥルメンタル、楽器演奏による音楽)は、楽器の進歩に伴って1600年代初頭から大きく発展したといわれています。中でも1600年代初頭から1700年代中頃までの約150年間は「バロック時代」と呼ばれ、バッハやヘンデル、ヴィヴァルディといった、音楽の教科書にも名を連ねる作曲家が活躍しました。

対して、名古屋城や名古屋のまちの歴史に目を向けると......1610年に名古屋城築城が始まり、尾張藩初代藩主の徳川義直が入城したのは1616年のこと。時を経て1730年には徳川宗春が7代藩主となり、尾張名古屋は日本随一の文化都市として繁栄の時代を迎えます。

クラシック音楽の始まりの時代と義直と宗春の栄華が重なる点に、コンサート開催を企画した担当者も注目。普段は目にすることのできない「夜の名古屋城」を舞台に、今回のコラボレーションが実現しました。

天候なども演出のひとつ。その日、その場でしか得られない体験に

スクリーンショット 2022-11-12 17.01.27.png演奏を披露するのは、東京藝術大学在学時に結成し、第12ヴァイオリンとヴィオラ、チェロで構成される弦楽四重奏「タレイア・クァルテット」。これまでコンサートホールはもちろんのこと、お城の城内や寺院などでもコンサートを開催してきました。

「ホールとは違う景色の中で演奏できるのは、私たちにとってもとても新鮮な体験です」と語るのは、第1ヴァイオリンの山田香子さん。「歴史的な建造物に囲まれて演奏することで、新たなインスピレーションが生まれます。その場でしかできない特別な演奏をお届けできるよう、いつも意識して本番に臨んでいます」と続けます。

確かに「環境」のもたらす影響は大きいもの。奏者にとっても観客にとっても、とても重要です。屋外だからこそ感じられる、ときおり通り抜ける夜風の音や草木の間から聞こえる虫の声も、コンサートを彩るアクセントとなるのだと感じました。

クラシック音楽に加え、映画音楽や民謡、ポップスなどを披露!

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当日は雨も降らず屋外で過ごすのに適した気温に。明るかった空も受付開始時間の頃には暮れ始め、開演時間には、すっかり夜の景色になっていました。ライトアップされた名古屋城天守閣がくっきりと浮かぶ様子は壮観で、開演前に写真撮影を楽しむ人の姿も。

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1時間のコンサートで演奏されたのは14曲。「さまざまなジャンルの音楽を楽しめるプログラム」をコンセプトに、モーツァルトやハイドン、エルガー、グラズノフといった作曲家の曲目に加え、映画音楽やデンマーク民謡、童謡「もみじ」やJ-POPといったさまざまな音楽が届けられました。名古屋城天守閣と本丸御殿を背景に、奏者4人の真紅のドレスが映え、上質な演奏と優雅な光景に観客もうっとりとした様子。曲が終わるごとに大きな拍手が起こりました。

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耳慣れた曲も多かったことから、観客からは「あっという間のひとときだった」「自然とのめり込めて、ますますクラシック音楽が好きになりました」との声が。ステージと観客席の距離がホールなどと比べて近かったこともあり「指さばきに感動した」「生音の響きを体で感じられた」との感想も寄せられました。

特に多かったのが、お城とクラシック音楽の共演に対する感想で、企画担当者の方も「景色も含めて楽しんでいただけたようで何よりです」とにっこり。「ここ(南側庭園)って入れたのですね」とのお声もあったので、まだ足を運んだことのない方は、ぜひお立ち寄りください。

Text:Hidemi Ito Photo:Kazuyuki Okumura

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本丸御殿の南側に位置する中庭。三方を囲まれた「コの字型」構造で、表書院・対面所・上洛殿に面しています。「表二之門」を抜けて最初に目にする「玄関車寄」を左に進んだ先に位置するのですが、本丸御殿受付までのルートからは外れるため、通り過ぎてしまう人も。ですが、名古屋城に来たのなら足を運んでもらいたい、イチオシスポットなんですよ。というのも、南側中庭から本丸御殿を望むと…背景に天守閣が! 本丸御殿と天守閣を同時に楽しめるんです。空間が開けているので写真が撮りやすいのもポイント。さまざまな催しが行われることもあるので、ぜひ立ち寄ってみてください。