催し
西の丸御蔵城宝館企画展西の丸御蔵城宝館展示「表書院の障壁画―めずらしい動物―」
2025年07月18日 ~ 2025年08月31日

趣旨
名古屋城本丸御殿の室内は、御用絵師である狩野派(かのうは)の障壁画によって彩られました。寛永11年(1634)の増築部分を含む現存する本丸御殿障壁画のうち、表書院の障壁画とそれに関連する資料を紹介します。
表書院の障壁画には、三之間の麝香猫(じゃこうねこ)や上段之間の吐綬鶏(とじゅけい)など、主に中国からもたらされためずらしい動物が描かれていました。時の権力者たちはこのような舶来品に関心を寄せており、絵画の画題として広く用いられました。
時を経て、舶来品は明治時代の博覧会にも出品され、「博覧会諸人群集之図」(名古屋城振興協会所蔵)には市井の人々もめずらしい動物を鑑賞していた様子が描かれます。
この度の展示では、異国の動物が集う空間をお楽しみいただきます。
会期
令和7年(2025)7月18日(金)~8月31日(日)
※展示状況は、出品目録(PDF)にてご確認ください。
会期中は無休(ただし、催事等で変更になる場合があります)
主催
名古屋城総合事務所 名古屋城調査研究センター
協力
一般財団法人 名古屋城振興協会
主な出品資料
重要文化財 名古屋城本丸御殿障壁画 表書院三之間「麝香猫図」 慶長 19 年(1614) 名古屋城総合事務所所蔵
重要文化財 名古屋城本丸御殿天井絵 上洛殿一之間「猿図」 寛永11年(1634) 名古屋城総合事務所所蔵
名古屋城ガラス乾板写真「表書院上段之間東側帳台構(焼失)」 昭和15~16年(1940~1941) 名古屋城総合事務所所蔵
昇斎一景「博覧会諸人群集之図」 明治5年(1872) 名古屋城振興協会所蔵 名古屋城総合事務所寄託
重要文化財 名古屋城本丸御殿障壁画 表書院三之間「麝香猫図」 じゅうようぶんかざい なごやじょうほんまるごてんしょうへきが おもてしょいんさんのま「じゃこうねこず」
西側4面のうち左側2面 慶長 19 年(1614) 名古屋城総合事務所所蔵
麝香猫は、東南アジアに分布するジャコウネコ科の哺乳類です。鎌倉時代には日本にもたらされと考えられており、権力者の目を楽しませました。
ここに描かれた麝香猫は、胸に白くふさふさとした毛をたくわえ、子に乳を飲ませています。体毛が一本ずつ丁寧に描かれ、さらさらとした毛並みの感触が伝わってきます。狩野派の絵師たちは、中国や日本の古い作品を手本にして画面を描いています。この麝香猫もよく似たものがあり、実物を見て描いたのではなく、狩野派の古画学習と制作の積み重ねが生かされていると考えられます。
重要文化財 名古屋城本丸御殿天井絵 上洛殿一之間「猿図」 じゅうようぶんかざい なごやじょうほんまるごてんてんじょうえ じょうらくでんいちのま「さるず」
寛永11年(1634) 名古屋城総合事務所所蔵
手長猿(てながざる)が墨だけで描かれています。中国の猿の図はほとんどが手長猿で、日本にもそれが伝わり、室町時代から描かれてきました。猿は中国語で「猴(こう)」とも表され、「猴」の読みは爵位(しゃくい)のひとつである「侯」と音が通じるため、出世を意味する喜ばしい画題となっています。
名古屋城ガラス乾板写真「表書院上段之間東側帳台構(焼失)」 なごやじょうがらすかんぱんしゃしん「おもてしょいんじょうだんのまひがしがわちょうだいがまえ(しょうしつ)」
昭和15~16年(1940~1941) 名古屋城総合事務所所蔵
名古屋市は、昭和15年(1940)から翌年にかけて、名古屋城内の当時の国宝だった建物24棟の写真撮影を行いました。撮影に用いられたガラス乾板は、ガラスに感光剤を塗布したもので、写真フィルムに相当します。名古屋市が撮影した565枚のうち一部が空襲で焼失しており、他の機関が別の機会に撮影した写真を複写して補い、738枚を所蔵しています。
戦争で焼失した表書院上段之間の帳台構には、キジ科に属する吐綬鶏と呼ばれた鳥が描かれていました。今日ではヒオドシジュケイといいます。描かれたことが少ない鳥で、めずらしいものですが、表書院で最も格式の高い上段之間に描かれていることが注目されます。
昇斎一景(しょうさいいっけい) 「博覧会諸人群集之図」 「はくらんかいしょじんぐんしゅうのず」
明治5年(1872) 名古屋城振興協会所蔵 名古屋城総合事務所寄託
明治5年(1872)に湯島聖堂(ゆしませいどう)(東京都文京区)で開催された日本で最初の博覧会を描いた浮世絵です。名古屋城の金鯱も出品され、画面の中央に描かれています。色鮮やかな鳥もその手前に描かれています。620点ほどが出品されたこの博覧会は、大盛況のうちに二度も会期を延長し、総観覧者数は19万人を超えたといいます。この作品はその盛況ぶりを伝えています。
江戸時代の初め頃に障壁画に描かれためずらしい動物は、限られた人しか見ることができない貴重なものでした。博覧会は、より多くの人がめずらしい動物を見て楽しむ場となりました。