催し
イベントアーカイブ障壁画に描かれた異国
2026年01月11日
名古屋城本丸御殿の障壁画には異国を描いた場面があります。それら障壁画の主題や図像の成立を紹介します。
日時
2026年1月11日(日)10時〜11時30分
会場
本丸御殿孔雀之間(本丸御殿ミュージアムショップ前で受付)
※会場は和室のため、座布団にご着席いただきます。机の用意はございません。
講師
渡野 りつ佳 / 名古屋城調査研究センター 学芸員
料金
無料(別途、名古屋城入場料が必要です)
定員
35人
申込方法
12月10日(水)10:00から大ナゴヤ大学HP よりお申し込みください。
当日スケジュール
9:30 受付
10:00 講座開始
11:30 終了
主催:名古屋市(名古屋城総合事務所)
運営:大ナゴヤ大学
2026年1月11日、城子屋「障壁画に描かれた異国」が本丸御殿孔雀之間で開催されました。今回の講師は、名古屋城調査研究センターの渡野りつ佳さん。本丸御殿を飾る障壁画とその制作に携わった狩野派の絵師たちについて、障壁画に描かれた異国のものや情景に注目しながら解説をいただきました。

なぜ障壁画の異国のモチーフに注目するのか。当時の権力者は、異国からの学びや交易によって得たものを力の象徴としていました。そのため、描かれたものに権力者たちの理想を見てとることができ、当時の文化や政治を探るヒントが得られます。さらに、日本にないものをどう描いたのかもひとつのポイントです。制作過程を明らかにすれば、当時の絵画制作の実態が見えてくるといいます。
冒頭、室町時代以降の狩野派の絵師たちが紹介されました。初代の狩野正信、流派の基盤を築いた狩野元信。彼らが狩野派への支持を広げ、本丸御殿の障壁画は創建時も増築時も狩野派の絵師が制作しました。現存する障壁画は1049面。江戸時代のものがこれだけ残っているのは貴重なことです。

では、なにがどのように描かれていたのか。具体的な作品の画像を投影し、同様のモチーフが描かれた作品とも比較して、詳しく説明いただきました。主題のひとつとなったのは、障壁画の中のめずらしい動物たち。例えば、慶長19年(1614年)制作の表書院三之間の「麝香猫図」には日本には生息しない麝香猫(ジャコウネコ)が描かれています。異国情緒を演出する麝香猫は、権力の象徴として機能しました。また、狩野派の麝香猫は、過去の中国絵画や同流派の先例に倣っていることが分かるそうです。
同時期に、吐綬鶏(トジュケイ)という、中国から舶来したキジ科の鳥も描かれています。元信も室町時代から吐綬鶏を描いており、狩野派のレパートリーのひとつだった吐綬鶏も異国を想起させる動物であり、本丸御殿では藩主の坐す部屋の障壁画に選ばれていました。
時代が進み、寛永期に入ると「江戸狩野の祖」とされる狩野探幽守信が登場。本丸御殿の障壁画で、すっきりとした端麗な画風を完成させたといいます。探幽が寛永11年(1634年)に描いた「琴棋書画図」が紹介され、その描かれ方には同流派の先例だけでなくさまざまな作品の図像が取り入れられているそうです。探幽の積極的な絵画学習の様相がうかがえます。
障壁画に描かれた動物や景色について細部まで解説をいただき、参加者のみなさんもこれからどこに注目するといいか、いくつものポイントを押さえられたと思います。ご自身の学生時代からの研究エピソードにもふれられた渡野さんのお話はとても興味深い内容でした。
カメラ・レポート/小林優太