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本丸御殿「上洛殿」に見る、彫刻欄間の技と歴史

2023年03月23日

本丸御殿「上洛殿」に見る、彫刻欄間の技と歴史の画像

名古屋城とつくる学びの場「学びでつながる城とまち。城子屋」。
今回のテーマは「彫刻欄間」です。

名古屋城で彫刻欄間といえば、本丸御殿「上洛殿」の彫刻欄間。本丸御殿を象徴する7枚の彫刻欄間の復元を手がけたのは、富山県南砺市井波に拠点を置く「井波彫刻協同組合」でした。
井波は、古くから木彫が盛んで「日本一の木彫刻のまち」といわれるほど。職人が全国各地の現場に出向いて、彫刻欄間製作をしてきました。「井波彫刻」は国の伝統工芸品に指定されています。

井波彫刻伝統工芸士・岩倉綾泉さんを先生に迎え、井波彫刻や欄間に関する基礎知識をはじめ、本丸御殿「上洛殿」の彫刻欄間復元のいきさつなどを紹介。本丸御殿の見学タイムも設け、「上洛殿」の彫刻欄間の特徴や職人目線の「見どころ」などを解説します。

日時

2023年年3月23日(木)17時45分〜20時

会場

本丸御殿孔雀之間(名古屋城正門前で受付)

講師

岩倉 綾泉 / 井波彫刻伝統工芸士

料金

500円(別途、名古屋城入場料が必要)

定員

35人

申込方法

大ナゴヤ大学HP内のページよりお申し込みください。

当日スケジュール

17:30 名古屋城正門にて受付開始
17:45 正門から孔雀之間に移動
18:00 授業開始
20:00 終了

主催:名古屋市(名古屋城総合事務所)
運営:大ナゴヤ大学

桜が開花し、春の雰囲気が一層色濃くなり始めた3月23日に、城子屋講座「本丸御殿『上洛殿』に見る、彫刻欄間の技と歴史」が開催されました。

今回の題材は、2018年に完成した名古屋城本丸御殿を彩る、豪華絢爛な彫刻欄間。古くから木彫が盛んな「日本一の木彫刻のまち」富山県南砺市井波に生まれ、本丸御殿内の彫刻欄間の復元にも携わった、井波彫刻伝統工芸士の岩倉稜泉さんが講師を務めました。

まずは岩倉さんによる講演からスタート。井波のまちの歴史や井波彫刻の特徴など、井波で彫刻が盛んな理由を、岩倉さんが現役の職人の目線で紹介します。

井波彫刻の始まりは江戸時代中期。井波の瑞泉寺本堂再建のため京都本願寺から派遣された御用彫刻師・前川三四郎に、・番匠屋九代七左衛門ら4人の地元大工が彫刻の技法を習ったことを契機に、多くの木彫職人が輩出されてきました。

井波で腕を磨いた彫刻職人は寺社の創建や修復に従事するため、全国各地を飛び回っていたのだとか。そんな歩みもあり、現代も歴史的建造物の修復に井波の職人が関わっているといいます。

講座では、名古屋城本丸御殿復元のあらましも紹介。京都・二条城の視察の様子や残っている資料の検証の流れなどの解説がありました。

名古屋城は図面や文献、湿板写真などの資料がとりわけ多く残っていることで知られ、復元にも大いに役立ったといいます。しかし、だからといって復元が容易だったかというと、そうではありません。真正面から撮影している写真は限られますし、加えてレンズの歪みなども考慮する必要があります。真正面に近しい角度から撮影した写真を調整加工しても、実物を真正面から見た場合とは必ず差異が生じます。

「モノによっては、OKが出るまでに1年以上を要しました」という岩倉さんの言葉からも、一度失ってしまったものの復元の難しさがうかがえます。

講座中、生徒の皆さんは真剣そのものといった様子で岩倉さんの話に耳を傾けていました。時折、岩倉さんが口にする、現場に携わった人だけが知る「ここだけの話」を耳にして、目を丸くしたり笑い声をこぼしたりする場面もありました。

後半は、岩倉さんの案内のもと、夜の本丸御殿を見学。工事中は、現在観覧客が通る廊下に足場を組んで欄間を持ち上げて設置したそうです。

見学中には、生徒さんから「この部分はどうしてこうなっているのですか?」「この欄間はどちらが正面?」といった質問が飛び交いました。

欄間のふちに装飾の一部が重なっていることを指摘された際には「もしかしたら、もともとは重なっていなかったかもしれませんね」と岩倉さん。今までは、美しさに目を奪われるばかりでしたが、岩倉さんの言葉に「過去に思いを馳せる」のも、復元されたものを鑑賞する醍醐味なのかもしれないと感じました。

匠の技はもちろん、当時の様子を自分なりに思い描きながら「もしかしたら当時はこうだったのかもしれない」と想像してみたら、新たな発見があるかもしれません。

写真:大野嵩明
レポート:伊藤成美