催し

イベントアーカイブ

御深井丸に佇む古代の石造物 ―団原古墳石室と河内飛鳥寺塔心礎―

2022年11月23日

御深井丸に佇む古代の石造物 ―団原古墳石室と河内飛鳥寺塔心礎―の画像

名古屋城とつくる学びの場「学びでつながる城とまち。城子屋」。
今回のテーマは名古屋城内にある「石造物」です。

皆さん、名古屋城の御深井丸に古代の石造物が置かれているのをご存じですか?
現在、御深井丸にひっそりと佇む、石棺式石室と塔心礎。
これらは戦後、個人から名古屋市へ寄贈されたといいます。
この石造物、いったいどんなものなのでしょう...?

専門家の解説を通じて遺物の歴史、学術的価値について学びましょう。

日時

2022年11月23日(水・祝)14時〜15時30分

会場

本丸御殿孔雀之間(本丸御殿ミュージアムショップ前で受付)

講師

大村 陸 / 名古屋城調査研究センター 学芸員

料金

無料(別途、名古屋城入場料が必要)

定員

35人

申込方法

大ナゴヤ大学HP内ページよりお申し込みください。

当日スケジュール

13:30 受付
14:00 講座開始 
15:30 終了

主催:名古屋市(名古屋城総合事務所)
運営:大ナゴヤ大学

2022年11月23日、本丸御殿孔雀の間で城子屋「御深井丸に佇む古代の石造物―田原古墳石室と河内飛鳥寺塔心礎―」が開かれました。



今回のテーマは、名古屋城北西隅の御深井丸に現存する古代の石造物。みなさんは御深井丸に茶席庭園があるのをご存知でしょうか。昭和に建てられた茶席が4つと書院があります。そして、その茶席庭園に、実は貴重な石造物がいくつも置かれているのです。今回はその中でも、団原古墳石室と河内飛鳥寺塔心礎のふたつに注目し、名古屋城調査研究センターの学芸員・大村陸さんにお話しいただきました。



まずは、団原古墳石室について。名前の通り、もとは団原古墳に存在した石室です。団原古墳があったのは現在の島根県。多くの遺跡が密集する古代出雲の中心地に位置していたそうです。石室は、幅約2.5m、奥行約1.8m、高さ約2mの石棺式石室。1400年ほど前に出雲地域を中心につくられた特徴的な埋葬施設です。
なぜ、島根の石室が名古屋城にあるのか。その経緯についても詳しく説明されました。昭和11年に名古屋の古美術商 長谷川長宜堂によって購入されたこと、石室がどのように運ばれ保管されていたのか、昭和24年に御深井丸整備に伴って名古屋城へ寄贈されたことなど、石室が現在の場所に至るプロセスはとても興味深いものでした。さらに、団原古墳石室の見どころの解説も。各部材の加工から、当時に出雲の人々の技術の高さが窺えるといいます。





続けて、河内飛鳥寺塔心礎の解説がされました。こちらは、昭和9年に大阪府羽曳野市で発見され、昭和32年に名古屋城へ寄贈されたもの。塔心礎とは、お寺の塔の背骨にあたる心柱を支える礎石です。長さ約3m、幅約2.3m、高さ0.7mの岩の真ん中に、直径約1mの大きな穴があいています。かつて茶席庭園では、この穴に水をためて手水鉢として使われていたそうです。
大村さんより、塔心礎が見つかった河内飛鳥地域についてや、塔心礎の発見から寄贈までの経緯など、さまざまなエピソードが話されます。塔心礎の出土地周辺で寺の遺構や遺物が見つかっておらず、「河内飛鳥寺は本当に存在したのか?」と今なお謎が多いことも紹介されました。長い時間をかけてもすべてが明らかになるとは限らない、歴史の世界の奥深さを感じました。



なかなか目を向ける機会のない石造物にも、一歩踏み込んでみると歴史と知識が詰まっている。今回の講座を通して、名古屋城内のさまざまなものに注目してみる面白さを実感できたのではないでしょうか。

カメラ・レポート:小林優太