表紙のページ 名古屋城天守閣整備事業の進め方に係る総括について 令和7年5月 観光文化交流局 表紙の裏のページ はじめに 本資料は、令和5年6月3日に行った「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」(以下「市民討論会」という。)において発生した差別事案(以下「差別事案」という。)を契機とし、観光文化交流局(以下「当局」という。)として天守閣整備事業(以下「本事業」という。)の進め方に係る総括(以下「総括」という。)を行うものです。 市民討論会においては、進め方や対応の不備、職員の人権感覚の希薄等、様々な問題により、人権尊重、障害者差別解消を先導すべき行政が差別事案を引き起こしてしまいました。市民討論会に参加され、差別発言を受けられた方の心を深く傷つけ、また他の参加者や市民に対しても不快な思いをさせてしまったことにつきまして、当事者や関係する方々に心からお詫び申し上げます。 この差別事案を受けまして、有識者等で構成する「『名古屋城バリアフリーに関する市民討論会』における差別事案に係る検証委員会」(以下「検証委員会」という。)による検証が行われ、令和6年9月18日に「『名古屋城バリアフリーに関する市民討論会』における差別事案に係る検証について(最終報告)」(以下「最終報告」という。)及び「検証委員会最終報告書(概要)」(資料1)が示されました。 当局といたしましては、最終報告に掲げられている内容を、組織として、また、職員一人ひとりが重く受け止め、深く反省し、再発防止や信頼回復に全力を挙げて取り組んでいかなければならないと認識しております。 こうした認識のもと、最終報告を踏まえ、これまでの本事業全体の総括を行い、二度と同様の問題や更なる問題を生じさせないための再発防止策や今後の事業の進め方を示し、適宜見直しを図りながら、本事業を適切かつ着実に進めていく考えです。 注1 本資料において、「前市長」は河村たかし前市長を指す。ただし、第3章に記載のある「市長」も「前市長」を指す。 注2 本資料における引用は、該当部を掲載し、必要に応じて編集を加えている。 注3 最終報告は、令和7年5月1日現在、以下の本市ウェブページに掲載されている。 https://www.city.nagoya.jp/sportsshimin/page/0000178461.html 目次のページ 第1章 総括の目的と構成 1ページ 1 目的 1ページ (1)背景と経緯 1 ページ (2)目的 2ページ 2 構成 2ページ 第2章 最終報告に対する当局の受け止め 3ページ 1 当局の受け止め 3ページ (1)反省と決意 3ページ (2)見込みの甘さや、様々な意識の不足について 3ページ (3)差別事象に対して適切な対応ができていなかった背景・遠因等について 4ページ (4)再発防止について 4ページ (5)今後に向けて 5ページ 第3章 天守閣整備事業の振り返り 6ページ 1 天守閣整備事業の経緯 6ページ 2 天守閣整備事業の展開に大きな影響を及ぼした事象 10ページ (1)文化庁の見解に対する誤った認識と不十分な議会報告(平成25から27年度) 事象@ 11ページ (2)木造復元に係る関連議案の継続審査につながる調査検討不足(平成27から28年度) 事象A 18ページ (3)石垣保存方針とりまとめに向けた石垣調査・体制不足(平成29から30年度) 事象B 30ページ (4)現天守閣解体申請の継続審議につながる調査検討不足(平成30から令和4年度) 事象C 39ページ (5)エレベーター不設置方針に係る障害者等当事者への説明不足(平成29から30年度) 事象D 54ページ (6)公募で選定した昇降設備の設置方針に係る市内部の調整不足(令和3から4年度) 事象E 64ページ 3 所管副市長が障害者の方とやり取りした文書について 72ページ 4 過去の担当者への聞き取りで判明した職員の苦悩や葛藤 74ページ 第4章 原因の整理とまとめ 77ページ 1 原因の整理 78ページ 2 まとめ 80ページ (1)事業の進め方に直接関わるもの 80ページ (2)事業全体に影響を与えたもの 80ページ 第5章 今後の事業推進に向けて 81ページ 1 事業を進める上での基本的な方針 82ページ (1)市内部の共通認識と円滑なコミュニケーション 82ページ (2)人権意識の向上と障害者等当事者との建設的対話 82ページ (3)特別史跡内における整備の丁寧な進め方 82ページ (4)市民等への丁寧な説明と理解促進・機運醸成 82ページ 2 再発防止策を含む今後の事業の進め方 83ページ (1)市内部の共通認識と円滑なコミュニケーション 83ページ (2)人権意識の向上と障害者等当事者との建設的対話 83ページ (3)特別史跡内における整備の丁寧な進め方 87ページ (4)市民等への丁寧な説明と理解促進・機運醸成 87ページ 3 今後の事業の流れ 89ページ (1)整備基本計画とりまとめまでの流れ 89ページ (2)天守閣整備事業の今後想定する流れ 90ページ 参考資料 91ページ 1ページ 第1章 総括の目的と構成 1 目的 (1)背景と経緯 本事業では、事業を進める中で様々な課題が生じてきた。その都度、多方面から様々な議論や厳しい指摘をいただき、事業に対する姿勢や進め方について軌道修正しながら、事業実現に向けて全力で取り組んできたが、市民討論会において差別事案を引き起こしてしまった。 差別事案に対しては、スポーツ市民局において検証委員会が立ち上げられ、人権の観点から検証が行われることとなり、令和5年6月15日、30日に開催された経済水道委員会所管事務調査において、観光文化交流局長から、本事業全体について振り返り、検証や総括が終わらない限り事業を前に進めない旨の答弁をした。 加えて、検証委員会の中間報告を受けて開催された令和6年2月16日の総務環境委員会所管事務調査において、委員から、差別事案発生の根底について、本事業のこれまでの進め方を深く掘り下げないと、根底的なものが解決しないとの指摘もあった。 最終報告を踏まえながら、当局としての総括を実施する。 差別事案の概要 1 市民討論会開催に至る経緯 ・平成30年5月に公表した「木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針」(資料2)(以下「付加設備の方針」という。)に基づき、令和4年度に「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」(以下「公募」という。)を実施し、最優秀者を選定した。 ・令和4年12月5日の経済水道委員会所管事務調査で公募の選定結果を報告した同時刻に、市長定例記者会見で前市長から「1階、2階のところので、とりあえずはお願いしたいということです、僕の気持ちは」との発言があった。 ・選定結果の公表後、賛否に関して、多くの意見が寄せられた。 ・令和5年4月から5月にかけて、無作為抽出した市民を対象に、昇降技術の設置についてアンケートを実施した。また、アンケート対象者のうち、参加申込書を提出した市民が参加する市民討論会を令和5年6月3日に開催した。 2 当日の状況 ・市民討論会においては、一部の参加者から他の参加者に対する差別発言がなされ、言い合いが生じる場面があった。 ・その場にいた職員は、言い合いを制止するため駆けつけたが、その後、別の参加者から差別用語を含む差別発言がされたことも含め、発言の制止や注意喚起などの適切な対応を行わなかった。さらに、市民討論会終了後においても、差別発言に対する本市としての説明や謝罪などの対応も行わなかった。 2ページ (2)目的 検証委員会の最終報告を当局として受け止めるとともに、今後、二度と同様の問題や更なる問題を起こさない観点から、これまでの本事業全体の振り返りを行うことにより、事業を進める上での基本的な方針を整理し、再発防止策を含む今後の事業の進め方を示す。 2 構成 最終報告 第2章 最終報告に対する当局の受け止め 第3章 天守閣整備事業の振り返り ・天守閣整備事業の経緯 ・天守閣整備事業の展開に大きな影響を及ぼした事象 原因分析の対象、過去の担当者への聞き取り、評価・検討 第4章 原因の整理とまとめ 第5章 今後の事業推進に向けて 事業を進める上での基本的な方針、再発防止策を含む今後の事業の進め方 ・今後の事業の進め方 ・差別事案に対する再発防止策 3ページ 第2章 最終報告に対する当局の受け止め 今回の差別事案は、本来、人権尊重、障害者差別解消を先導すべき行政が引き起こしてしまったものであり、最終報告に記載された全ての内容を、組織として、また、職員一人ひとりが重く受け止め、深く反省し、再発防止や信頼回復に全力を挙げて取り組んでいかなければならない。 本章では最終報告における様々な指摘に対する当局の受け止めを記載し、次の第3章では、最終報告の指摘も踏まえ、事業全体を振り返り、評価・検討を行う。 1 当局の受け止め (1)反省と決意 検証委員会においては、当局が引き起こした差別事案に係る検証として、当局が作成した資料や議会に報告した資料及び関係職員等に対するヒアリングなど、1年以上にわたり、様々な状況を確認し、調査・議論・検証を行っていただいた。「討論会での差別事案に直接的に関わる事項に関する検証」をはじめとした最終報告における指摘事項を当局として全て真摯に受け止め、起こしてしまったことや至らなかった点について、改めて深く反省するとともに、指摘事項について十分に理解を深め、今後の事業につなげていかなければならないと決意するところである。 (2)見込みの甘さや、様々な意識の不足について 最終報告においては、市民討論会の企画段階から実施決定後の準備段階、更には当日の実施に至るまで、全ての段階において問題があったと指摘されており、当局として市民討論会開催に対する見込みの甘さや本事業の重要性に対する様々な意識の不足があった。 市民参加による市の事業の実施にあたっては、通常、参加者に、開催の趣旨のみならず、事業の目的や内容について正確な情報が認識・理解されて、はじめてその開催目的を達成できるものだと認識している。様々な意見が想定される重要な事業であったからこそ、「討論会」の名称について、その目的や内容を正確かつ端的に表現し、「市民への影響」の視点に立った、十分な検討と正確な情報発信が必要であったと感じており、表現や発信方法を工夫することにより、事業の意義などについて、丁寧かつ分かりやすい情報発信に努めてまいりたい。 参加者同士が自由に意見を交わす場面が生じる可能性のある、今回の市民討論会は運営方法が特殊であると当局として認識できておらず、職員はスケジュールや業務量への負担により様々な想定ができない状態に陥っていたと指摘されている。委託業者とともにあらゆる想定をし、過去の経緯を含め関係者間で共有・理解し進めることは、主催者の当然の責任であり、本市が定めていた差別事象マニュアルの内容を十分に理解しないままに、運営上のリスク想定が不足し、差別事案への不適切な対応につながったということを改めて認識するとともに、人権感覚が低かったと痛感している。 行政として公平性に疑義のある運営を行ったこと、また、差別を容認しない姿勢を毅然と示さなかったことは決して許されるものではなく、市民の本市に対する不信感は大きいものと捉えているところである。「表現の自由も、すべての市民が等しく基本的人権を有するかけがえのない個人として尊重されることが前提である」との指摘を今一度心に刻み、関係局と連携を図りながら、信頼回復につながる取り組みを確実に実施してまいりたい。 4ページ (3)差別事象に対して適切な対応ができていなかった背景・遠因等について 最終報告では、差別事案に対して適切な対応ができなかった背景・遠因等に言及されており、市内部での考え方の共有不足や、大規模プロジェクトにおける共通理解等の不足、スケジュールの優先が、市民の混乱を招くとともに、市民の間での意見対立を招いた背景であることに加え、「史実に忠実な復元の解釈等の不一致」が「情報提供の不十分性」や「職員の苦悩や葛藤」にも影響すると指摘されているとおり、本事業を進めるうえで、非常に大きな要素であったと改めて認識したところである。 本事業の情報発信は名古屋城の公式ウェブサイトや市民向け説明会等を活用し、一定行ってきたが、その時々の断片的な情報に留まっており、事業全体を正確に理解してもらうには不十分であったとともに、十分な共通認識がないままの情報発信であったと捉え直した。また、関係者間の円滑なコミュニケーションが取れていない時期が生じていたとの指摘にあるように、健全な職場環境であったとは言えず、「風通しのよい職場」に向けて一層取り組まねばならないと認識を新たにした。今後は、事業における考え方などの方針を整理し、市内部をはじめ広く共有することで、本市の姿勢を示し、取り組んでまいりたい。なお、今後、「市長及び副市長のハラスメント事案に関する第三者調査委員会」による調査報告書が提出された際には、その内容に応じて適切に対応していくこととする。 加えて、当局には市民討論会が人権に関わる訴えを聴く貴重で重要な場であるという認識がほとんどなく、参加者に誤解を与えるような結果を招いたことや、これまで事業を進める中では障害者団体の方のご意見を丁寧に伺ってきたにもかかわらず、市民討論会においては十分な対応をしなかったことを指摘されている。これまで積み上げてきた事業の経緯を前提とした進め方ができていなかったと認識しているとともに、「公募選定後に無作為抽出によって市民討論会を開催する際の進め方」において指摘された「人権感覚の希薄さ」は、当局として重く受け止め、特に、障害者や高齢者をはじめ配慮を必要とする当事者(以下「障害者等当事者」という。)への人権に対する配慮については、十分な検討が必要と感じている。 なお、背景・遠因等については、その影響を及ぼす範囲が市民討論会に限らないと認識していることから、本事業全体にわたり振り返る必要があると捉えている。 (4)再発防止について 再発防止に向けては、最終報告の提言に掲げられた事項が、全ての基礎となる重要な取り組みであると認識している。また、「おわりに」に記載された「人権が市民にとって最も大切なものであることを改めて認識し直し、障害者をはじめ様々な立場の市民の人権に関わる事業を推進する際には、当事者の意見を真摯に聴くとともに、建設的な対話を通じて当事者の真意をしっかりと捉えながら、人権侵害を生じさせないよう事業を実施されたい」との指摘は、行政として基本的な対応を誤ったという根本的なものであると理解していることから、今後このようなことのないよう、市全体として実施される各種研修を活用することはもちろんのこと、当局としても障害者等の疑似体験や障害のある方に講師を依頼するなど、職員一人ひとりが障害及び障害者理解をより一層深めるとともに、改めて人権とは何かを自分事として捉えることができるよう、研修の充実を図っていく必要がある。加えて、「差別事象マニュアルの抜本的見直し」を受け改訂された差別事象対応ガイドブックの適切な理解は、再発防止に向けた基礎となる重要な取り組みであると認識しており、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)」、条例等も含めて職員に対し確実に周知徹底しなければならないのはもちろんのこと、実際の現場において感じた差別発生のリスク等を放置することなく、差別事象対応ガイドブックが具体的かつ実践的な内容となるよう関係局とも随時情報を共有していくこともそれぞれ重要である。さらに、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(以下「バリアフリー法」という。)」の精神を踏まえつつ、障害者差別解消法に基づく環境の整備や合理的配慮の提供を関係者との建設的対話を通じて市民等の合意の基に進めていく必要性を改めて捉え直した。 これらについて、当局では、人権に関する責任者である人権監理者を、名古屋城総合事務所含め2名配置し、その人権監理者を中心として、職員一人ひとりが主体的に適切な判断を行うことができるよう取り組むとともに、本事業に関する市民向け説明会等を実施する際には、事前の準備段階から人権監理者によるチェック、助言・指導等を行うことにより適切に進めてまいりたい。 5ページ (5)今後に向けて 今回の差別事案は、本市の事業が発端となり人権問題にまで発展させた、あってはならない問題であった。「『名古屋城バリアフリーに関する市民討論会』における差別事案に係る検証委員会設置要綱」第1条に、「差別事案について、人権の観点から、問題点や課題等を整理・分析したうえで原因を探求して再発防止を図り、もって市民の信頼回復につなげるための検証を行う」とあるように、当局として、市民の信頼を大きく損なったことを肝に銘じ、失った信頼の回復につながるよう、指摘事項を十分に理解し、再発防止を図り、将来にわたって活(い)かしてまいりたい。 6ページ 第3章天守閣整備事業の振り返り 本事業は、特別史跡名古屋城跡の本質的価値の向上と理解促進を目的とし、多くの方に外観だけでなく内部を含めて観覧し、往時の歴史的・文化的空間を体験していただくものである。また、近世期から残存する石垣等遺構の厳格な保存管理を前提とする特別史跡内で大規模木造建築物を復元すること、本市のシンボルであり重要な歴史的・文化的資源である名古屋城に係る整備であること、多額の財源を要する事業であることなどから、市民、議会、文化庁、有識者など、様々な関係者の十分な理解を得るとともに合意形成を図りながら、丁寧に事業を進めていく必要があるものである。 本章では、このような事業を進める中で直面し、対応してきた課題から、対象事象を選定し、過去の担当者への聞き取りを踏まえて行う評価・検討において、最終報告の指摘事項との関係性を確認しつつ、その原因を推定する。 1 天守閣整備事業の経緯 ・名古屋城天守は、慶長17年(1612年)に完成し、昭和5年に城郭建築として国宝(旧国宝)第1号に指定されたが、昭和20年に戦災により焼失した。現天守閣は、戦後の復興に伴い、昭和34年に市民の強い希望により、鉄骨鉄筋コンクリート造で再建されたものだが、再建から現在に至るまで相当年数が経過し、コンクリートの劣化や設備の老朽化、耐震性の不足などの課題が生じており、平成18年度に策定した「特別史跡名古屋城跡全体整備計画」では、耐震改修を行う方針としていた。 ・そのような中、平成21年4月に就任した前市長は、天守の木造復元を進めたい意向を示し、平成22年度以降、耐震改修と木造復元の両面から検討を進めることとした。 ・耐震改修の検討としては、平成22年度に現天守閣の耐震補強や改修方法等に係る調査を実施した。木造復元の検討としては、平成22年度に耐震性、避難安全性、バリアフリー、木材調達等の課題調査、平成24年度に概算経費、工期の算出調査、平成25年度に現天守閣解体と木造復元の工事に伴う現天守閣が担う博物館機能や工事期間中の入場者数に対する影響調査等のほか、天守閣整備に係る市民意見の聴取を行うため、現天守閣の耐震補強や改修、鉄骨鉄筋コンクリート造で再建、木造で復元等を選択肢とした「ネットモニターアンケート」を実施した。 ・平成26年6月定例会において、議員から「文化庁は、史実と異なる鉄骨鉄筋コンクリートでは建て替えができないとの見解」、「鉄骨鉄筋コンクリート造での再建の可能性について、文化庁に十分確認しないで市民の皆様に意見を聞くことは、作為的な世論形成につながりかねない」との質問がされ、文化庁の見解を確認することなくアンケートを実施したことについて、市民経済局長が謝罪した。 ・その後、平成22年度からの一連の検討を踏まえた課題の整理や、文化庁の見解が「再建する場合は木造復元に限られる」との当局認識のもと、「耐震改修し概ね40年後の木造復元」と「可能な限り早期の木造復元」を比較し、木材調達、社会情勢、施設運営の各項目において、「可能な限り早期の木造復元」を行うことに優位性があることについて、平成26年度の調査でとりまとめた。 ・平成27年6月の経済水道委員会所管事務調査において、「可能な限り早期の木造復元」を目指すことを説明したが、文化庁の見解に係る当局の認識の正確性について指摘をいただき、同年7月の経済水道委員会所管事務調査で、市民経済局長が、正確性を欠く説明をしたことについて謝罪した。また、同所管事務調査において、松前城の再建が、文化庁の復元検討委員会において木造復元しかないという結果となったことを報告したが、事実関係に誤りがあり、同年9月定例会において前市長及び市民経済局長が謝罪した。 7ページ ・その後、前市長からの指示書を受け、木造復元に係る工期、工程、概算事業費を明らかにするため、2020年(令和2年)7月を竣工期限として技術提案・交渉方式による公募型プロポーザルを実施し、平成28年3月に優先交渉権者を決定した。 ・平成28年度に本事業は、市民経済局から観光文化交流局に移管され、「名古屋城天守閣の整備2万人アンケート」を実施し、木造復元を選択した回答が6割以上あったことも踏まえ、本事業を実施するための基本設計等に係る補正予算等の議案を提出した。しかしながら、総事業費を賄うための財源フレームのあり方や入場者数見込みの算出方法、竣工期限の考え方等について、当局の調査検討不足により議会から厳しい指摘をいただき、1年近くに及ぶ継続審査の中で、結果的に竣工期限を二度にわたり見直した。 ・平成29年5月の優先交渉権者との基本協定締結後、2022年(令和4年)12月の竣工期限に向け、平成30年10月の文化庁の文化審議会で木造復元に係る現状変更許可申請の内容が審議されることを念頭に、本事業に係る基本計画書のとりまとめを開始したが、石垣の保全方針に関して、有識者との認識の一致に至らず、文化庁との協議が困難な状況に陥った。また、平成29年11月の天守閣部会において、エレベーターを設置せず、チェアリフト等の代替案で車いす使用者等の合理的配慮を目指す方針案を示したことについて、障害者等当事者から反対の声が上げられた。 ・平成30年5月には、「特別史跡名古屋城跡保存活用計画」を策定し、特別史跡内の建造物として本質的価値の理解を促進するとの点において優位性が高いことなどから、本事業の整備方針を木造復元とし、検討を進めることを掲げた。一方で、耐震性が低いことから現天守閣を閉館した。 ・また、バリアフリーについて、バリアフリー法に準拠したエレベーターを設置せず、新技術の開発などを通じてバリアフリーに最善の努力をする「付加設備の方針」を公表したが、障害者等当事者から反対の声が上げられた。 ・平成30年6月定例会に、木材調達や製材の契約に係る議案を提出し、議会から「木材の調達にあたっては、文化庁から与えられた課題を確実に解決し、現状変更許可の見通しを立てたうえで計画的に行うこと」等の要望が付された上で可決されたが、2022年(令和4年)12月の竣工に向けた現状変更許可取得のために向けて全力で取り組むという認識のもと、同年7月に優先交渉権者と「名古屋城天守閣整備事業先行工事(木材の製材)」の契約を締結し、木材の調達を開始した。 ・平成31年4月には、耐震性の低い現天守閣を放置できないことから、石垣部会と認識が一致しないまま、文化庁に対して現天守閣解体に係る現状変更許可申請を行ったが、継続審議となり、同年6月定例会に提出した補正予算の議案を取り下げるとともに、令和元年8月には、竣工期限を延期することとした。同年9月には、文化庁から現天守閣解体に係る現状変更許可申請に対する指摘事項として、現天守閣の解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための調査・検討が不足していること、現天守閣解体という現状変更を必要とする理由が耐震対策のみであるのか、木造復元のためであるのかについて整理がなされていないことなどが示された。 8ページ ・令和2年3月には、竣工期限を優先して進めてきた反省を踏まえ、実現可能な手順や工程を積み上げた、2028年(令和10年)10月を竣工時期の目安とする「新たな工程」の素案を全体整備検討会議で公表した。なお、同月に名古屋城重要文化財等展示収蔵施設の外構工事において名古屋城内の遺構をき損する事故を生じさせ、本事業の進捗にも影響を及ぼした。 ・文化庁の指摘事項を受けて、文化庁や有識者からの指導・助言をいただきながら、石垣等遺構の追加調査や現天守閣の解体・仮設物設置に伴う石垣等遺構の保護対策の検討に最優先に取り組むとともに、令和3年3月には、本丸整備の基本理念や木造復元の意義などをとりまとめた「本丸整備基本構想」及び「天守整備基本構想」を策定した。 ・令和3年5月に文化庁の指摘事項に対して、各種調査・検討結果や、木造復元が現天守閣解体の理由であることの回答を行い、文化庁から、調査・検討が一定程度進捗したものと評価できること、現天守閣解体と木造復元を一体の計画として審議していく必要があることとする文化審議会文化財分科会の所見が本市に伝えられた。そのため、引き続き、石垣の詳細調査を進めるとともに、現天守閣解体と木造復元を一体とした現状変更許可申請を出し直すことについて文化庁に説明し、7月に現天守閣解体に係る現状変更許可申請書を返却していただいた。 ・「名古屋城天守閣整備事業先行工事(木材の製材)」に関し、令和2年3月及び令和3年3月に契約金額の減額変更を専決処分としたことを議会へ速やかに報告しなかったことについて、令和3年11月定例会において前市長が謝罪した。 ・令和4年5月に文化庁の指摘事項に対する追加回答を行い、文化庁から、調査・検討が進捗したものと評価できることとする文化審議会文化財分科会の所見が本市に伝えられた。 ・その後、令和4年7月には、有識者会議での議論を本格的にスタートさせ、石垣保存方針、基礎構造、バリアフリーの方針を含めた「特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画(以下「整備基本計画」という。)」のとりまとめを進めたが、公募で選定した昇降設備の設置方針について、令和4年12月5日の同時刻に行われた市長定例記者会見と経済水道委員会所管事務調査において、前市長からは「1、2階までなら合理的配慮と十分言えるのではないか」、当局からは「できる限り上層階まで目指していきたい」と異なる発言を行い、議会から厳しい指摘をいただき、観光文化交流局長が謝罪した。 ・令和6年2月定例会における質疑及び附帯決議を踏まえ、当局行政監理委員会のもとに名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会検証部会を設置し、過去の市民向け説明会における公平性及び公正性に疑念を持つような働きかけ及び発言等の有無などについて検証を行い、経済水道委員会所管事務調査に「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会に係る検証報告書」を報告した。 ・令和6年7月3日の総務環境委員会所管事務調査にて要求のあった資料の形式について、「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会の総点検」に係る経済水道委員会で当局から提出された資料も踏まえた上で作成するよう意見があり、同年9月10日の総務環境委員会所管事務調査及び同日の経済水道委員会請願審査において、委員会提出資料の考え方に係る三副市長の共通認識として、内容の正確性はもちろん、関係する当事者の確認、了解が得られたものであることが必要だと考えており、総点検においては特別な事情があったとはいえ、議員と職員とのやり取りについて、当事者の一方である議員に確認を取らずに報告書に記載したという点で正確性の担保が不十分であり、また記載内容としても、委員会資料として提出するにあたり適切な判断が行われなかった点があったことに対し、副市長として改めてお詫びするとともに、今後このようなことがないよう、全庁に徹底する旨を報告した。 9ページ ・令和6年9月定例会本会議において、議員より、所管副市長が障害者の方とやり取りした文書の存在が示され、人権問題が解決していない段階で障害者団体と合意しているような記述がされていること、再発防止策を含めて総括を行った後に事業を再開する方針に矛盾すること、水面下で合意が進められ、市民等の信用失墜につながるとして徹底的に調査すべきこと等について質問され、所管副市長からは、経緯を説明するとともに、自身や関係者の人権の観点から、質問に異議を唱えたと受け取られかねない答弁を行った。本会議後の記者とのやりとりで、議員が当該文書の存在を示したことにより、名古屋城に関して計り知れない影響が出る、修復できるかどうかわからない、更には、情報公開条例違反の恐れがある旨を発言した。 ・当該事案について、令和6年10月11日に経済水道委員会所管事務調査及び総務環境委員会所管事務調査、経済水道委員会・総務環境委員会連合審査会が行われ、所管副市長が謝罪した。 ・その後、所管副市長は、令和6年11月8日に臨時記者会見を開き、謝罪するとともに、名古屋城天守閣木造復元の進め方についても、今一度立ち止まってよく考え、所管副市長として局の事業推進をしっかりと管理監督するとともに、他の副市長とも連携を図りながら、時間をかけて丁寧に進めていかなければならないと発言した。 ・このように、事業を進める中で様々な課題を生じさせ、都度、多方面からの指摘等をいただき、事業に対する姿勢を見直しながら取り組んできたが、公募で選定した昇降設備の設置方針を決定するにあたり、市民の意見を聴取するために令和5年6月に開催した市民討論会において差別事案を引き起こしてしまったことにより、本事業について一旦立ち止まり、検証委員会の最終報告を踏まえた事業全体の総括を行うこととした。(資料3) 10ページ 2 天守閣整備事業の展開に大きな影響を及ぼした事象 前項に掲げた経緯のうち、関係者の理解や合意形成を図るうえで課題が生じ、その後の事業展開に大きな影響を及ぼすこととなった下記の事象を対象として、最終報告の指摘も踏まえ、その原因分析を行う。 事象@ 文化庁の見解に対する誤った認識と不十分な議会報告(平成25から27年度) 事象A 木造復元に係る関連議案の継続審査につながる調査検討不足(平成27から28年度) 事象B 石垣保存方針とりまとめに向けた石垣調査・体制不足(平成29から30年度) 事象C 現天守閣解体申請の継続審議につながる調査検討不足(平成30から令和4年度) 事象D エレベーター不設置方針に係る障害者等当事者への説明不足(平成29から30年度) 事象E 公募で選定した昇降設備の設置方針に係る市内部の調整不足(令和3から4年度) 11ページ (1)文化庁の見解に対する誤った認識と不十分な議会報告(平成25から27年度) 事象@ ア 事象の概要及び経緯 (ア)概要 ・平成26年6月定例会の本会議質問において、議員の「文化庁は、史実と異なる鉄骨鉄筋コンクリートでは建て替えができないとの見解」、「鉄骨鉄筋コンクリートでの再建の可能性について、文化庁に十分確認しないで市民の皆様に意見を聞くことは、作為的な世論形成につながりかねない」との質問に対し、文化庁の見解を確認することなくアンケートを実施したことについて、配慮が足りなかったとの答弁を市民経済局長が行った。 ・平成27年6月の経済水道委員会所管事務調査において、文化庁の見解が「再建する場合は木造復元に限られる」として、今後は、可能な限り早期の木造復元を目指していく考え方を報告したが、委員からは、文化庁の見解に係る当局の認識の正確性について疑義が呈された。そのため、文化庁に確認したところ、「天守の再建については、整備主体である地元の自治体がどのような整備を行うか考えることが第一」、「天守を復元する場合は、原則として材料等は同時代のものを踏襲する必要があるが、それ以外の可能性を排除するものではない」との回答を得たため、同年7月の同所管事務調査において、文化庁の見解について正確性を欠く説明をしたことを、市民経済局長が謝罪した。 ・松前城の再建は、文化庁の復元検討委員会において木造復元しかないという結果となったことを同所管事務調査において報告したが、事実関係に誤りがあり、同年9月定例会において前市長及び市民経済局長が謝罪した。 ・また、同所管事務調査において、木造復元以外の選択肢についての検討が不足していることについて議会から指摘をいただいた。 (イ)経緯 平成26年2月から3月 ネットモニターアンケート」実施 天守閣整備に係る市民意見の聴取を目的としたアンケートを実施 結果 ・現在の天守閣を存続させて、耐震補強や改修などを行う 71.0% ・現在の天守閣を解体して、現状と同じく鉄骨鉄筋コンクリートで再建する 2.7% ・現在の天守閣を解体して、木造で復元する 15.3% ・わからない 8.8% ・その他 2.2% 12ページ 平成26年6月 6月定例会 議員から天守閣整備の考え方について質問 【本会議質問(6月27日)】 質問 今後、名古屋城の再建をするにあたって、文化庁は、史実と異なる鉄骨鉄筋コンクリートでは建て替えができないとの見解を示しています。昨年度、実施された名古屋城の整備についてのネットモニターアンケートにおいて、現在の天守閣を今後どうしていくとよいと思いますかという問いの中で、天守閣の耐震補強、木造復元という項目と並んで、鉄骨鉄筋コンクリートで再建という項目がありますが、先ほど述べた通り、文化庁に確認したところ、鉄骨鉄筋コンクリートでの再建は認められないとの回答を得ました。アンケートの実施に際し、鉄骨鉄筋コンクリートでの再建の可能性について、文化庁に十分確認しないで市民の皆様に意見を聞くことは、作為的な世論形成につながりかねないと考えます。 答弁 昨年度のネットモニターアンケート実施に際しまして、鉄骨鉄筋コンクリートでの天守閣再建の可能性について、文化庁に照会をしなかったということにつきましては、配慮が足りなかったものと認識しております。(局長) 平成26年9月 名古屋城天守閣フォーラム(9月6日) 前市長から、2020年(令和2年)の東京オリンピックに完成が間に合うよう復元したい旨を発言 平成26年度 名古屋城整備検討調査 文化庁の見解が「再建する場合は木造復元に限られる」との本市の認識のもと木造復元と耐震改修に係る検討、課題の整理、比較を実施  「耐震改修し概ね40年後の木造復元」と、「可能な限り早期の木造復元」について比較検討を行った結果、木材調達、社会情勢及び施設運営の各項目において、「可能な限り早期の木造復元」を行うことに優位性があるとの結論 平成27年6月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備に関する調査について」(6月17日) 文化庁の見解が「再建する場合は木造復元に限られる」として、平成26年度に実施した調査結果を踏まえて、可能な限り早期の木造復元を目指すという、今後の整備の進め方を報告 委員から、文化庁の見解に係る当局の認識の正確性や事業の進め方に厳しい指摘 【経済水道委員会における質問】 当局説明 現天守閣を解体し、再建する場合は木造での復元に限られるといった文化庁の見解がございます。平成26年度の調査におきまして比較検討を行いました結果、可能な限り早期の木造復元に優位性があることがわかりました。このことから、今後は可能な限り早期の木造復元を目指し、調査結果などを市民に丁寧に説明しながら、財源の確保や技術的課題といった様々な課題について、一つ一つ整理していきたいと考えております。 委員からの主な指摘 ・天守閣の再建は木造復元しかないとする根拠はあるのか。 ・木造が唯一無二の選択肢なのかという部分については疑義がある。平成26年の質問の中でミスリードされてしまった感が私はある。それ以外の選択肢について議論をした記憶がない。本市の議論の中からは復元的整備という選択肢が抜け落ちている。 ・耐震改修と合わせて大改修を行えば、長寿命化はもっと図れるのではないか。 ・概算経費の算出根拠というのは、例えばゼネコンだとかにヒアリングをして出されたものか。 ・つくったものに対して、その後どういう波及効果があるのかどうかということも一つの大きな判断材料になると思う。 13ページ 平成27年6月 文化庁の見解を確認 平成27年6月17日の経済水道委員会所管事務調査(資料4)を踏まえて、名古屋城天守閣の整備に関する文化庁の見解について文化庁へ確認し、同月22日付けで文化庁長官より見解を受領 ・天守の再建については、整備主体である地元の自治体がどのような整備を行うか考えることが第一 ・その上で、天守を復元する場合は、原則として材料等は同時代のものを踏襲する必要があるが、それ以外の可能性を排除するものではない ・名古屋城天守閣については、往事の資料が十分そろっていることを踏まえると、いわゆる復元検討委員会において木造によるできうる限り史実に忠実な復元をすべきと意見が出される可能性が極めて高いと考えられる 14ページ 平成27年7月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備に関する調査について」(7月1日) 文化庁の見解について、正確性を欠く説明をしたことについて市民経済局長が謝罪 委員から他都市事例を問われ、当局から、松前城(北海道松前町)について、文化庁の復元検討委員会の中で、木造復元しかないという結果になったことを説明したが、委員から当該事例に係る当局の認識の正確性について指摘 委員から、平成26年度の本会議質問で、「文化庁の見解として、鉄骨鉄筋コンクリートでの再建は認められない」と示されたことに対する当局の受け止めについて質問 その他、7割の方が現天守閣を存続させて耐震改修する選択をしている(ネットモニターアンケート/平成25年度)ことを踏まえ、様々な整備の選択肢を示した上で、財源や経済効果なども示しながら、市民や議会に丁寧に説明をしていくことについて意見 【経済水道委員会における質問】 答弁 文化庁の見解について、私どもの受け止め方により、前回の委員会における資料及び説明において正確性を欠くこととなりました。この点につきまして、誠に申し訳ございませんでした。(局長) 質問 復元検討委員会の方から、史実に忠実な復元をすべきという意見が出る可能性が極めて高いと示されているが、他都市で例えばこれに類するような例はあるか。 答弁 平成23年度に北海道松前町の松前城が、文化庁の復元検討委員会の中で復興天守の今後の考え方について議論がされる中でRC(鉄筋コンクリート)再建がいいかというようなことも議論され、その時には木造復元しかないということになったと伺っている。 質問 昨年6月の本会議で出た質問に対して、当局としては、重たい質問だと、文化庁の見解がこうだと思い、これまでやってきたのか。 答弁 大変重たい質問だという認識をした。 委員からの主な指摘 ・文化庁の見解からすると、復元的整備だったら、ハイブリッドだとか、鉄骨だとかいうことも含めて可能性はある。 ・71%が現在の天守閣を存続させて、耐震補強や改修を行うということが選ばれた。この市民の意見を否定するだけの根拠はないと思う。 ・財源や工期などは行政だけではわからないと思うので、ゼネコンなどにヒアリングした上で考えないと結論が出ない。 ・経済効果も誘客効果も示してほしい。 15ページ 平成27年9月 9月定例会 松前城の件について、前市長が謝罪 【市長提案説明(9月10日)】 説明 私が先方に確認をしたところ、松前城には焼失前の天守についての詳細な図面などがないため、壁の厚さを増すような耐震改修しかできないと思っていたが、文化庁から木造復元でもよいとのお墨付きをいただいた。そのことを踏まえて、耐震改修にするのか、木造復元にするのかを町民の意見を聴取して検討することとしたとの説明を受けました。誤った答弁をいたしましたことについて訂正させていただきます。誠に申し訳ございませんでした。(前市長) 松前城の件について、市民経済局長が謝罪 【経済水道委員会付議議案審査における質問(9月18日)】 答弁 市民経済局の確認が不十分であり、受け止め方により誤った答弁となったものでございまして、心からお詫びを申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。(局長) 16ページ イ 事象が生じた原因分析 (ア)原因分析の対象 ・名古屋城天守閣の整備に関する文化庁の見解について、「再建する場合は木造復元に限られる」と当局は認識していた。 ・整備手法の選択肢や財源スキーム、経済効果等について議会に十分な報告ができなかった。 (イ)過去の担当者への聞き取りにより把握した内容 ・ネットモニターアンケートを実施した平成25年度の時点では、木造復元への前市長の思いを分かっていても、局として木造化がマストだと考えておらず、前市長には、木造復元にあたっては、最低でも5年は調査させてほしい旨を伝えていた。 ・平成26年度には、前市長は木造復元をいろいろな所で話をし、極めて強い意向があった。前市長は、2020年(令和2年)までに完成させると公言されており、当局は、文化庁との調整や審議、設計などで6年や8年とか掛かる工程を考え、2020年(令和2年)までの完成は無理であると言っていたが、前市長は最後まで、東京オリンピックまでに竣工しないとやる意味がない、昔(慶長期)は2年で建てたからできるはずだというようなことを言われていた。そういう中で、鉄骨鉄筋コンクリート造で再建する選択肢もまだあるという話はとてもできず、局としても、前市長の意向に沿って、木造復元に向けて検討を始めていた。 ・文化庁には、木造復元の考え方や、木造復元をどのような道筋でやっていくかを教えてもらいに行っていた。「再建する場合は木造に限られる(文化庁の見解)」は、文化庁と頻繁にやりとりしていたが、文書で貰ったことはなかった。市としては復元するには木造でしかないと考えており、これは文化庁の意向も同じだとの認識の中で「再建する場合は木造に限られる(文化庁の見解)」と平成26年度に実施した「名古屋城整備検討調査」の報告書に記述した。 (ウ)評価・検討 ・平成26年6月定例会の本会議質問における「史実と異なる鉄骨鉄筋コンクリートでの再建はできない」との見解を文化庁が示しているとの議員の発言を重く受け止めていたことに加え、文化庁に対する丁寧な確認を怠ったことにより、文化庁の考え方について、再建する場合は木造復元に限られるという誤った認識に至っていた。 ・当初、木造復元に向けた調査や工事にはある程度の期間が掛かると見込んでいた当局と、2020年(令和2年)7月の東京オリンピックまでという早期の木造復元を目指していた前市長の間には、考え方の相違があったと認識していた職員はいたが、平成26年度の調査において、「耐震改修し概ね40年後の木造復元」と、「可能な限り早期の木造復元」との比較検討を行い、「可能な限り早期の木造復元」に優位性があるとの結果に至っていたことから、可能な限り早期の木造復元が市内部の方針となった。 ・再建する場合は木造復元に限られるとの認識が正確性を欠いた説明につながり、可能な限り早期の木造復元を目指す市内部の方針が他の整備手法での再建などを含めた検討の不足につながったものと考えられる。こうしたスケジュールを優先する進め方は、最終報告でも同様の指摘(スケジュール設定の無理)がされている。 17ページ (エ)推定した原因 ・文化庁の見解に関する丁寧な確認を怠った。 ・市内部の方針を可能な限り早期の木造復元とした。 18ページ (2)木造復元に係る関連議案の継続審査につながる調査検討不足(平成27から28年度) 事象A ア 事象の概要及び経緯 (ア)概要 ・技術提案・交渉方式の公募型プロポーザルにおける優先交渉権者の決定後、平成28年5月に、「名古屋城天守閣の整備方針」に係る2万人アンケートを実施し、その結果、木造復元を選択した回答が6割以上となったこともあり、本事業を実施するための基本設計に係る補正予算等の関連議案を同年6月定例会に提出した。 ・この補正予算に対し、議会から、竣工期限を2020年(令和2年)7月とする考え方の是非や、竣工時期の見直しに伴う事業費等に係る法的整理、財源フレームの妥当性等について様々な指摘があり、1年近くに及ぶ継続審査となった。 ・収支見込みについて第三者機関での調査を実施するとともに、熊本地震を契機に石垣の安全性の確保について更なる調査が必要としたことから、竣工期限を2022年(令和4年)12月に見直すこととなった。 ・平成29年2月定例会において「収支相償の財源フレームを堅持するために、入場者数目標の達成に向けてあらゆる努力をすること」との附帯決議が付され木造復元に係る関連議案が可決された。 (イ)経緯 平成27年8月 市長指示書(8月24日)(資料5) 前市長から、天守復元の手法について技術提案・交渉方式を採用することについて、市民経済局長あての指示書を受領 3.本丸天守の復元の手法については、技術提案交渉方式を採用するものとし、9月議会までに法的・技術的課題をクリアすること。また、技術提案交渉方式を進めるために必要な予算を9月議会に提出すること。 以上、本件の全責任は私が取るので、各員全力で取り組まれたい。 平成27年9月 9月定例会(9月30日) 木造復元に係る工期・工程、概算事業費を明らかにするための技術提案・交渉方式の実施や、名古屋城の魅力向上策の検討調査のための補正予算「名古屋城整備検討調査」を提出 技術提案・交渉方式については、東京オリンピックが開催される2020年(令和2年) 7月完成を条件とすることなどを説明  附帯決議を付して可決 附帯決議 1、名古屋城天守閣の木造復元に係る概算経費が約270億円から400億円と莫大であり、厳しい財政状況の中、市民生活に大きな影響を与える懸念があることから、関係局との協議を踏まえ、国・県支出金、寄附金、地方債、市税等の割合を含めた財源フレームを明確にし、優秀提案選定後の工期、工程、概算事業費等が明らかになった段階で速やかに、市民アンケートを実施し合わせて議会へ報告すること 19ページ 平成27年12月から 技術提案・交渉方式による公募型プロポーザルの実施(12月2日公告) 2020年(令和2年)7月竣工を条件とする公募 平成27年12月から 「名古屋城天守閣の整備タウンミーティング」の開催 全16区において天守閣の現状・課題・過去の調査結果、技術提案・交渉方式の調査内容、経済波及効果などを説明 開催期間 平成27年12月6日から平成28年1月17日 平成28年1月 市長定例記者会見(1月18日) 市長定例記者会見にて、市債を発行し、特別会計を組むとの発言 ・この間までは、つい1カ月ぐらい前までは、75%起債しかできんということでして400億円だとしますとね、仮に。400億円だとしますと、100億円は起債でなしに現金をつくらないとけないという話もあった。 ・1カ月ほど前に、正式に総務省の方から、「観光その他事業債」ということで、100%起債してもよろしいということになりまして、その代わり特別会計を組んでほしいということで、なりました。 平成28年2月から3月 2月定例会(3月18日) 平成28年度当初予算案に「名古屋城天守閣の整備検討(技術提案・交渉方式による公募結果等の報告会、市民アンケート等)」を計上  附帯決議を付して可決 附帯決議 1、名古屋城天守閣の整備検討に係る市民アンケートの実施にあたり、当局が市民に対し情報提供を行うとした技術提案・交渉方式に係る優秀提案の内容、天守閣整備に係る財源フレーム(案)などが、本予算審議において明らかとならなかった。こうした状況に鑑み、名古屋城天守閣の整備検討に係る市民向け報告会、市民アンケート及び広報なごや特集号の各予算については、正確な情報提供に基づいて天守閣整備に対する意向を市民に判断いただく必要があるため、優秀提案の選定結果、財源フレーム(案)及びこれらの内容を正確に踏まえたアンケート項目などが明確になった段階で、その内容について速やかに議会へ報告・協議したうえで執行すること 20ページ 平成28年3月 「名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式による公募型プロポーザル」に係る優先交渉権者決定(3月29日) 優先交渉権者 株式会社竹中工務店名古屋支店 事業費 約505億円 平成28年4月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備検討について」(4月7日) 天守閣整備に係る今後のスケジュールを説明 平成28年4月 平成28年(2016年)熊本地震発生(4月14日・16日) 平成28年4月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備検討について」(4月22日) 技術提案・交渉方式の提案内容、工程計画のほか、財源フレーム案を提示 平成28年4月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備検討について」(4月28日) 優秀提案における提案額と参考額の考え方、入場者数及び入場料収入の算出根拠(名古屋城本丸御殿整備や他城郭の整備の実績による入場者数の増減率を元に積算)等を説明 平成28年5月 2万人アンケートの実施(5月6日から20日) 木造復元を選択した回答(「2020年(令和2年)7月までに優秀提案による木造復元を行う」及び「2020年(令和2年)にとらわれず木造復元を行う」)が6割以上との結果【結果(有効回答数7,224)】 結果 有効回答数7,224 2020年7月までに優秀提案による木造復元を行う 21.5% 2020年7月にとらわれず木造復元を行う 40.6% 現天守閣の耐震改修工事を行う 26.3% その他 6.2% 無回答 5.4% 平成28年5月 「名古屋城天守閣の整備市民向け報告会」の開催(5月10から15日) 名古屋城天守閣の整備の概要等を説明(5会場876人参加) 平成28年5月 広報なごや特集号「名古屋城天守閣の整備」(5月下旬から6月上旬) 平成28年6月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備・2万人アンケートの結果等について」(6月1日) アンケートの結果、木造復元を行うと答えた市民は「2020年7月までに優秀提案による木造復元を行う」と「2020年7月にとらわれず木造復元を行う」を合わせると6割以上となったことを議会へ報告 アンケート結果を受けた今後の進め方について答弁 【経済水道委員会における質問】 質問 2020年7月にやりたいという人は2割ちょっと。木造はいいが、こだわらずに2020年7月より後ろにすべきだというのが一番多い。市長はこのアンケート結果について、最終的に何と言っておるのか。 答弁 木造化について6割の方が支持をしたという認識ではおります。一方、耐震性能が低いというようなこともありますので、早急に対策を施さなければいけないという判断もあり、今回の6月補正に御提案をさせていただくということになっております。(局長) 21ページ 平成28年6月 6月定例会 基本設計等に係る補正予算等の議案を提出 議会からは、竣工期限を見直すことや、入場者見込み・収支計画について、第三者による調査を実施すべきことについて指摘  竣工期限の見直しに係る当局の判断や、入場者数、収支見込みについて第三者機関の調査結果を待つ必要があるとして継続審査 【本会議質問(6月21日)】 質問 2万人アンケートの結果を見ても、2020年7月にとらわれず木造復元を行うことが一番多い。2020年7月にこだわらず、2026年アジア大会までにするということで石垣を補修することもでき、その間に木材調達を図ることで高騰は避けられる。本物の名古屋城天守閣を木造復元するのであれば、2020年7月にこだわらず、一旦立ちどまって石垣から積み上げるという考え方でやるべきではないか。 答弁 2020年7月にこだわらずというお話でございますが、いろいろ耳を傾けて考えるということは考えております。(前市長) 【経済水道委員会付議議案審査における質問(6月23日)】 質問 入場者数あるいは収支の見込みが希望的観測あるいは主観によるところが多いと思う。第三者機関において、きちんとした入場者数、収支見込みを出すべきだと思う。 答弁 確かに御指摘のとおりでございますので、日数及び予算のこともございますけれども、精緻な第三者による、そういった検証をしていきたいと思います。(局長) 【経済水道委員会付議議案審査における質問(6月27日)】 質問 謙虚に耳を傾けるのであれば、木造復元については、余り拙速にならずに、一旦リスタートを切る、そういう準備をしてはどうかと思う。 答弁 現時点では、優先交渉権者の法的な位置づけの整理などについて、若干の時間を要しますことから、決断するのにもう少し時間をいただきたいと存じます。(前市長) 継続審査理由 名古屋城天守閣の木造復元に関し、市長から、2026年のアジア競技大会や2027年のリニア開業をゴールとして定めることについては、優先交渉権者の法的な位置づけの整理などに時間を要するため、決断するのにもう少し時間をいただきたいとの発言があり、これを待つ必要があり、また、入場者数、収支の見込みについては、当局において、今後第三者機関に調査を依頼するとのことであり、その調査結果を待つ必要があるとともに、耐震対策や総事業費の問題のほか、名古屋城跡全体整備計画における整備のあり方など課題もあり、慎重に審査を進める必要がある。 22ページから23ページ 平成28年9月から10月 9月定例会 6月定例会において継続審査となった議案について審議 前市長の考えとして、市は優先交渉権者と互いに事業を推進する法的責務を有しており、完成時期を遅らせることは、別の事業と解される余地があるため、法的観点から困難であることなどを説明 議会からは、収支見込みの第三者機関による調査、石垣の安全性の確保、上限505億円の事業費の妥当性などの考え方について指摘 10月6日に前市長から、これらの課題事項について、ある程度時間をかけて対応するため、竣工期限について2022年(令和2年)7月を目途として見直すことを説明  2022年(令和4年)の完成期限について、優先交渉権者と協議できていない状況や、訴訟リスクが否定できない状況であるとして継続審査 【経済水道委員会付議議案審査における質問(9月20日)】 質問 弁護士による、本市から中止できないとの見解の内容を明確に教えてほしい。 答弁 名古屋市から中止できる時については、実施説明書によりますと、工期の遅れが確実になった場合と、予算の承認が得られなかった場合ですが、そこの考え方について、それぞれの弁護士の方から御見解をいただいたところです。 質問 2万人アンケートをやろうがやるまいが、市民の意見がどうであろうが、このプロポーザルをやったことは、そもそもがもう覆せなかったのか。 答弁 今回の弁護士の見解につきましては、今の状態、法的な状態として、自ら先ほどの2条件に合わない場合は取り下げるとすると、訴訟のリスクがあるというような見解でございまして、市長の思いといたしましては、取り下げる意思がないということに至っているところでございます。(局長) 【経済水道委員会付議議案審査における質問(10月6日)】 説明 先般、委員会のほうから、収支見込みの第三者機関による調査や、石垣の安全性の確保、上限505億円の事業費の妥当性の調査など、数点にわたり課題を指摘されました。こうした課題に対応するには、例えば、収支見込みの第三者機関による調査につきましては、来場意向調査やリニア中央新幹線の開業の影響などの要因を多角的に捉え、分析することが必要であり、加えて、石垣の安全性の確保については、熊本地震を受けて、更なる調査を実施することが必要であり、本市といたしましては、ある程度時間をかけて実施してまいりたいと判断し、2020年7月の完成期限を見直したいと存じます。(前市長) 質問 前局長は、2020年7月に間に合わないということが設計の段階で明らかになったということであれば、それは振り出しに戻すが、アンフェアな形にならないような形で再出発というのが当然必要だろうという答弁をされている。 答弁 その後の事象によって、いろいろ行政も判断が変わるものというふうには思います。委員会の審議と社会的な要請等でもって、アンフェアにならない範囲内において、公平性・透明性の担保される範囲内において、行政が現在判断しているものと認識しておるところでございます。(局長) 継続審査理由 第105号議案関係分はじめ4件につきましては、会期末を迎えようとする10月6日の委員会において、名古屋城天守閣の木造復元に関し、市長から、2020年7月の完成期限を見直したい。具体的には、おおむね2年延長することで、完成期限を2022年7月をめどとし、今後竹中工務店と協議をし、実施してまいりたいとの発言がありましたが、今回の完成期限の見直しについて、現段階において竹中工務店と十分な協議をしておらず、工程の確認もとれていないこと、また、訴訟リスクが否定できない中、そのような不安要素を取り払って進めるべきであるため、さらに詳細に検討し判断すべきであることなど、さまざまな議論で、議決するに至る状況にないと考える次第であります。(略)今後もさらに慎重に審査を行う必要があることから、賛成多数によりいずれも継続審査とし、市会閉会中も委員会を開会できるようにすべきものと決定いたした次第であります。 24ページ 平成28年11月 11月定例会 6月定例会から継続審査となっている議案について審査 議会からは、事業費や入場者数見込みなどの議論のほか、優先交渉権者と契約しない場合の責任について指摘  竣工時期や総事業費について前市長、当局、優先交渉権者との協議が整っておらず、入場者数・収支見込みに関する第三者機関への調査も完了していないことから継続審査 【経済水道委員会付議議案審査における質問(12月6日)】 質問 市長が言う優先交渉権者の設定という契約を交わしていると理解をしたとしても、竹中工務店が仮に木材の手配をしていたとしても、それを現時点で賠償する責務が名古屋市にあるわけではないと、これは明確に言い切ってもらえるか。 答弁 設計契約等をしたわけでございませんので、本市といたしましてそういった責を負う立場にないと認識しております。 継続審査理由 第105号議案関係分はじめ4件につきましては、11月定例会においても、引き続き当委員会において熱心かつ慎重に審査を進めてきたところでありますが、会期末を迎えようとする12月5日の市長定例記者会見における市長の発言から、技術提案・交渉方式に対する市長と当局の認識の違いが明らかになりました。可決を含めた議決のためには、完成期限や総事業費などについて、市長、当局、優先交渉権者、3者の協議が整った状態で審議を進める必要があります。このような状態に鑑みると、契約に対する考え方について、市長と当局で改めて認識を一致させる必要があります。また、完成期限の見直しに当たっては、プロポーザル事業の公平性の観点から、評価委員の意見を再聴取するとともに、6月定例会における指摘以降も未実施である入場者数、収支見込みについての第三者機関への調査依頼の早急な実施を受けて検討する必要があります。 25ページから26ページ 平成29年2月から3月 入場者数見込みに係る評価を第三者機関へ委託 「名古屋城天守閣木造復元事業に伴う名古屋市入場者数予測結果の評価業務」を実施  本市の試算手法、考え方について、おおむね妥当であるが、その際、長期予測については、ほぼ不可能との評価 平成29年2月から3月 2月定例会 木造復元に係る関連議案(基本設計等の繰越明許費や職員の人件費など)を新たに提出し、6月定例会から継続審査となっている議案と合わせて審査 事業着手時期の遅れに伴い、竣工時期を2022年(令和4年)12月へ変更することを説明 当局から、国や県に対して補助金を要望していくこと、市民や企業から幅広く寄附を集めること、第三者機関の詳細調査を早急に進めたいことなどを答弁  附帯決議を付して可決 【経済水道委員会付議議案審査における質問(3月17日)】 質問 赤字にしないように努力するのは言うまでもないが、予想よりも入場者数が少ないことだって当然あり得ると思う。それでも、予想に左右される問題ではなく、それでもやるのかどうかということを一遍よく考えないと。専門家の日本総合研究所もわからない。赤字にならないように努力するが、仮に入場者数が予想よりも少ないとしても、木造復元はやるべきという観点が必要ではないか。 答弁 文化的な価値、歴史的な価値、そういったものを後世に残すという意味で、使命を負ったものであるという認識でございますので、たとえ採算ベースに乗らないという話があったとしても、やっていくべきものではないかと思います。(局長) 【経済水道委員会提出資料(3月21日)】 天守閣整備に関する市長の考え 現在、本市においてご審議をお願いしています名古屋城天守閣整備事業については、6 月定例会において上程させていただいた以降、長期間にわたりご審議いただいております。 本事業は、日本の歴史文化への貢献、名古屋経済の活性化という観点から、大変有意義なものであり、私どもとしては、収支が取れると思っておりますが、委員会で指摘があったように、仮に収支がよくなくとも、必ず推進すべきものであると考えています。 附帯決議 1、名古屋城天守閣木造復元事業を進めるにあたっては、入場者数と収支見込みに対して、民間調査会社から長期の予測は不可能であるとの指摘があることから、独立採算による収支相償の財源フレームを堅持するために、入場者数目標の達成に向けてあらゆる努力をすること。 1、財源フレームの基本的な考え方については、市民の機運醸成を図り、寄附金などの募集をするほか、事業の意義について国や県の理解を得て補助金を確保するとともに、市民税5%減税の検証による見直しも含め、財源を確保すること。 1、総事業費505億円については、工期設定の適切な見直しを行うなど大幅な圧縮に努めるとともに、文化庁や優先交渉権者との協議調整状況並びに仕様や工程及び契約内容等について、適宜議会への報告を行い、議会に諮りながら進め、あわせて市民の理解を得ながら、市民とともに事業を進めること。 27ページ イ 事象が生じた原因分析 (ア)原因分析の対象 ・技術提案・交渉方式で設定した竣工時期の考え方や見直しに伴う法的整理等について、十分な検討ができていなかった。 ・財源フレームについて、関連議案を提出した当初においては、市内部の検討に留まっていた。 (イ)過去の担当者への聞き取りにより把握した内容 ・技術提案・交渉方式の採用について、平成27年6月の経済水道委員会所管事務調査における、財源や工事費、経済波及効果などの指摘に対応せずに、補正予算を9月定例会で提出することはとてもできないこと、今まで建築物で事例が少なく、本当にできるのかよく分からない中で、懸念を持っていることを前市長に説明した。その後、前市長側から、9月定例会に技術提案・交渉方式の実施に係る調査費の補正予算を提出することについて指示書が出された。 ・竣工期限を決める際に、リニア中央新幹線開業年やアジア競技大会開催年を説明したが前市長は納得しなかった。2020年(令和2年)7月の東京オリンピックに間に合わせるため、8月に指示書が出て、12月には技術提案・交渉方式によるプロポーザルを実施することとなった。技術提案・交渉方式については、最終的に、局としてきちんと積み上げて説明ができる形として、プロポーザルに進んだと認識している。局長以下みんなが一丸となり一枚岩でやっていたと思う。 ・プロポーザルを始めて優先交渉権者が決まるまでの期間が短いが、そのスピード感でやらなければ2020年(令和2年)には間に合わない。平成28年の4月からすぐ動き出さないと間に合わないぐらいの、ぎりぎりのスケジュールでやっており、残業も夜遅くまで毎日のように続いていた。 ・2万人アンケートの結果が、天守閣整備事業の方向性にどう影響するか、アンケートの結果こうだったらこうしよう、などと決まっていたという認識はなかった。 ・収支計画は予算計上されておらず、平成28年度に内部で作成することとなっていた。入場者数を含めた収支計画は、他都市の状況、今までの名古屋城の入場者数の推移などを踏まえ、根拠に基づき作成をしたものであった。 ・収支計画を収支相償で考えていたが、議会から年間360万人の入場者数を集められることの確実性や客観性について指摘をいただいた。そこで客観性を担保するため、コンサルタントに確認をしたところ、当局の入場者数の算出方法について一定の理解ができる旨の評価をもらい、議会に報告した。 28ページ (ウ)評価・検討 ・前市長からの市長指示書については、2020年(令和2年)7月を竣工期限とする技術提案・交渉方式の採用にあたり、当局は前市長に対し、スケジュールや採用への懸念を説明していたとする職員がいる中で発出されたものと推認するが、技術提案・交渉方式は当局としてきちんと積み上げて説明ができる形であったと認識する職員がいるように、2020年(令和2年)7月の竣工を目指し、技術提案・交渉方式による公募型プロポーザルを進めることとしたのは、適正な手続きによるものであったと考えられる。 ・プロポーザルに掲げた竣工期限の設定においては、前市長と折り合いがつかなかったとする職員がいた一方で、市長指示書を受けて平成27年9月定例会に補正予算の提出を余儀なくされたことにより、議案提出までおよそ1か月しかなく、竣工期限の考え方の議論が不足している中で進められていた。こうしたスケジュールを優先する進め方は、最終報告でも同様の指摘(スケジュール設定の無理)がされている。 ・また、選考の過程において、「名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)による公募型プロポーザル実施に伴う意見聴取会」で平成29年度に設置した天守閣部会の有識者と同じ有識者に意見を伺いながら進めていたが、特別史跡名古屋城跡の本質的価値を構成する石垣については石垣部会の有識者には事前に意見を伺うことはできておらず、竣工期限の考え方に反映されることはなかった。 ・2万人アンケートにおいては「2020年7月にとらわれず木造復元を行う」とする選択肢がある中で、アンケート結果がどう影響するか事前検討がされていなかったとする職員がいるように、アンケート結果を竣工期限の設定に反映するかの議論が内部で不足しており、技術提案・交渉方式の手続きを進める中で、竣工期限の見直しの可能性等を含めた法的整理など、必要な想定や検討ができていなかった。 ・収支計画については、当局としては、他都市の状況等を踏まえるなど根拠に基づき作成したという認識を持っていたが、2020年(令和2年)7月の竣工に向けたスケジュールの中で、平成28年3月の優先交渉権者の決定後、市内部で作成し、同年4月には議会へ提示することとしたため、議会へ十分な説明ができる内容には至らなかった。 29ページ (エ)推定した原因 ・2020年(令和2年)7月の竣工に向けた厳しいスケジュールの中で、史跡整備の進め方等に係る認識が不足しているにもかかわらず、竣工期限の考え方の検討や、収支計画の作成において、竣工期限を優先した進め方をしていた。 30ページ (3)石垣保存方針とりまとめに向けた石垣調査・体制不足(平成29から30年度) 事象B ア事象の概要及び経緯 (ア)概要 ・平成29年5月に優先交渉権者との基本協定を締結し、2022年(令和4年)12月の竣工期限に向けて事業を開始した際には、平成30年10月の文化審議会で木造復元に係る現状変更許可申請の内容が審議されることを念頭に、同年7月までに石垣の保存方針を含めて基本計画書にとりまとめ、文化庁に提出するスケジュールとしていた。 ・石垣部会との合意形成を図るべく調査・検討を進めたが、文化財保護を前提とした考え方に立っておらず、石垣調査の内容や主体的な発掘調査の体制が不十分であるなどの厳しい指摘をいただいた。 ・同年7月に、基本計画書を文化庁に持参したところ、石垣の保存方針について有識者との認識が一致していないとの指摘をいただき、文化庁への提出を見送った。 ・その後、再検討を行うも、石垣部会との認識の一致には至らず、同年10月の市長定例記者会見において、文化審議会の諮問に至らなかったことを公表した。 (イ)経緯 平成29年3月 第20回石垣部会(3月28日) 名古屋城天守閣木造復元のこれまでの経緯や、天守台石垣の整備方針決定に向けた今後の進め方や調査案、2022年(令和4年)12月天守竣工の工程案を説明 石垣部会からは、天守を木造にすることが保存活用計画に定められておらず、特別史跡の整備・活用の手順から反していること、歴史的な価値のある遺構をき損しないことを確認するための十分な調査が予定されていないことなどについて、厳しい指摘 石垣部会からの主な指摘 ・保存活用の会議が、天守を木造にしなければいけないということを、保存活用計画に求めていないのに、具体的なこういう計画だけ動いているというのは、明らかに国の特別史跡の整備・活用の手順から全く反している。 ・堀の発掘調査もなしに、堀底を埋めて素屋根をかけて、工事ができるかどうかもわからない。地下に埋もれている歴史的な価値を有する遺構をき損してしまう恐れがある。 31ページ 平成29年5月 優先交渉権者の株式会社竹中工務店名古屋支店と基本協定書や基本設計等の契約を締結 本事業の基本計画書をとりまとめるための各種調査・検討を開始 平成29年5月 第21回石垣部会(5月12日) 戦災による劣化などの課題を抱える天守台石垣の保存・修復のあり方について、石垣部会に相談しながら、必要な調査を実施し、方針をまとめていく必要があるため、天守台石垣の調査案と2022年(令和4年)12月天守竣工の工程案について説明 工程案については、2022年(令和4年)12月の竣工に向けて、平成30年7月までに石垣の保存方針を含めて基本計画書にとりまとめて文化庁に提出(同年7月の復元検討委員会、同年10月の文化審議会)するスケジュールを設定 石垣部会からは、本事業が、天守台をき損する可能性がある前提であること、木造天守の復元後に石垣の修理を行う計画であること、石垣調査の成果がまとまらない段階で仮設計画が進む工程案であることなどについて、文化財保護を前提とした考え方が十分でないと厳しい指摘 石垣部会からの主な指摘 ・木造の天守を建ててから、石垣のき損についての修理を行うという計画案を出されている。文化財の修理、特別史跡の修理としてあり得ない計画である。しかもそれは、本質的な価値のある天守台をき損するということがあるということを前提とした工事計画を天下に公表しているということから、極めて重大な問題である。 ・我が国の文化財修理で造る素屋根では、恐らく最大のものになる。空堀の中には、とんでもない荷重がかかり、両脇の石垣にも荷重が載る。石垣調査の成果がまとまっていないのに素屋根の計画を進めることになってしまっている。これは全く特別史跡の文化財の保護の立場に立っていない。 ・ケーソンを入れるために大天守台、あるいは小天守台の石垣、特に内面に、大幅に改変を受けていた。天守の内面石垣をどう直していくかという議論、事前調査なしには、天守の木造というのが全くできないということが、極めて明確になった。 平成29年6月 6月定例会 議員から、有識者からの指摘を踏まえた事業の進捗について質問 【本会議質問(6月21日)】 質問 優先交渉権者であった竹中工務店と基本協定や基本設計契約の締結に至り、事業に着手しましたが、市長の思いが先行しており、関係者との調整が十分にできているのか大変懸念を抱いております。(略)現在の国や地元有識者との調整状況及びその中で指摘された意見を踏まえて、現在の計画に影響はないのでしょうか。 答弁 現在は、天守閣部会や石垣部会といった有識者からなる検討会を開催し、来年度の秋に木造復元に係る現状変更許可を受けるべく、学術的な見地からも検討を進めているところ。そうした中で、石垣部会から石垣の保全の必要性について指摘を受けたことは認識しており、石垣の保全についてはしっかりと検討しながら進めてまいります。(所管副市長) 32ページ 平成29年6月 第22回石垣部会(6月23日) 石垣としての文化財の価値を高め、十分に調査をして保全を行っていくことなどの考え方を示す天守台石垣の調査方針案のほか、天守台石垣の調査内容、工程案を説明 石垣部会からは、天守の竣工後に石垣の保全等を予定している点について、まずは、特別史跡としての石垣をしっかり調査し、必要な保全工事を行うべきであり、木造復元を先行する計画は文化財保護として成り立たないことを改めて指摘 石垣部会からの主な指摘 ・史跡としては、本質的な価値を持っているのは石垣である。まずは、その石垣をしっかり調査して、必要な保全の措置をとって、指定文化財として、将来にわたって安定して、それを次の世代に伝えていく。そういう措置をとるのが、特別史跡としての整備、活用の基本の原則である。 ・今回の石垣調査というのは、木造復元を目的とするのではなく、天守台石垣の健全性の確認のために行うという調査であるということの説明があった。調査はするけども、保全工事は一切行わずに、現天守閣解体にそのまま突入にしていくというこの工程表は、調査の目的と著しく齟齬している。 ・変形が起きてしまった後に石垣を直すという考え方は、文化財保護として成り立っていない。改めて調査をしっかりしたうえで、必要な保全工事をとって、まずは天守台石垣として健全化を果たしたうえで、その先どういう整備、活用するかについては別途、別の問題として考える以外、道はない。 平成29年8月 第23回石垣部会(8月9日) 天守台石垣の調査内容、工程案を説明 石垣部会から、調査について、本市が主体となり、責任を持って調査の範囲や方向性を決定していく体制とすべきことなどについて指摘 石垣部会からの主な指摘 ・特別史跡の学術調査をしているわけだから、こういった調査をすること自身に管理団体として名古屋市が主体になって、責任を持って調査をするということが、通常のやり方である。あくまでも調査の主体は名古屋市であるというところを、十分理解していただきたい。 ・これだけの調査内容の提案ということになると、当然ながらこれがしっかりできるだけの調査の体制、組織作りが伴っていなければいけない。現状の体制を鑑みると、こういう事例の調査をこれだけ展開するというのは、非常に無理があると言わざるをえない。 33ページ 平成29年9月 第24回石垣部会(9月12日) 名古屋城の学芸員の体制の考え方や、天守台石垣の調査内容について説明 石垣部会からは、本市に総合的な調査体制をつくり、今後の保存・活用を、学術を基本に考えていく体制を構築すべきことのほか、石垣調査について、現実的なスケジュールでないこと、調査項目の目的や内容が整理されていないことなどについて指摘 石垣部会からの主な指摘 ・名古屋市の学芸員の体制を充実させて、現地に残されている文化財としての名古屋城をしっかり研究する。史料の調査・研究もどこかへ委託する形ではなく、市のしっかりした調査・研究の体制といったものを合わせて構築していただきたいと思う。 ・この調査はまさに特別史跡としての価値を、古文書や絵図に基づいて証明する、まさに特別史跡名古屋城の根幹に関わる調査である。この程度の短い期間で本当に完了するのか、というのがまず疑問である。 ・何を目的にして調査をするのか明快に考えられているのか。それぞれの項目で重複もあれば、書いてある内容もこれをすることによって何の目的が達成できるかという部分の整理がついていない。 平成29年10月 第24回全体整備検討会議(石垣部会及び天守閣部会合同)(10月13日) 全体整備検討会議の座長(天守閣部会座長兼任)から、木造天守及び天守台石垣の安全性に対して、天守閣部会と石垣部会には考え方に違いがあることについて発言 34ページ 平成30年1月 石垣部会の活動方針 石垣部会から「特別史跡『名古屋城跡』全体整備検討会議石垣部会の今後の活動方針について」提出 平成30年1月 第25回石垣部会(1月30日) 天守台石垣周辺調査の状況について説明 石垣部会からは、調査結果の捉え方が不十分であることなどについて指摘 平成30年2月 文化庁復元検討委員会(平成29年12月)での意見を受領(2月5日) 平成29年12月の文化庁の復元検討委員会に、本事業に係る基本計画書案のうち、復元整備基本構想が報告され、当該構想に対する復元検討委員会の主な意見を文化庁から受領 石垣の調査を行い、その成果にもとづいて具体的にどのように石垣を保全していくのかを検討しなければならない。方針のみでは議論とならない。 平成30年3月 第26回石垣部会(3月6日) 天守台石垣周辺の状況について説明(外部石垣発掘調査) 石垣部会からは、近現代の補修により石垣の根石部分の安定性を欠いている可能性があり、追加の発掘調査や地盤面の安定性の更なる検討の必要性について指摘 平成30年5月 文化庁復元検討委員会(平成30年3月)での意見を受領(5月16日) 平成30年3月の文化庁の復元検討委員会に、本事業に係る基本計画書案のうち、復元整備基本構想が報告され、当該構想に対する復元検討委員会の主な意見を文化庁から受領 天守台石垣に係る課題への対応について 天守解体及び木造天守建築時における、天守台石垣に対する影響を考える必要がある。石垣の調査が継続中であるため、報告がなされていない。石垣の構造解析は難しいし、時間が掛かると思う。 平成30年6月 第27回石垣部会(6月1日) 天守台石垣周辺の状況について説明(外部石垣発掘調査のまとめと追加調査等) 石垣部会からは、発掘調査の結果の捉え方について疑義を呈され、根石周りの安定性を確認するための追加調査が必要なことについて指摘 35ページ 平成30年6月 6月定例会 議員から、現状変更許可に対する認識について質問 【本会議質問(6月22日)】 質問 今後、文化庁からの宿題をこなしきれず、石垣部会も開催できなかった場合、木造化の完成は2022年には完全に間に合わなくなる。その場合、2022年という完成時期を見直すということになるのか。 答弁 現在、文化庁からは、過去2回の復元検討委員会では議題としては審議されておらず、話題事項として報告されたと伺っております。(局長) 答弁 現状といたしましては、石垣の調査結果をとりまとめること、その結果に基づき、特別史跡の本質的価値を構成する石垣の保存の考え方を検討することなどを短期間に行う必要があり、スケジュール的に厳しい状況であると認識をしておりますが、工期が間に合うように全力を傾注してまいります。(所管副市長) 平成30年7月 第28回石垣部会(7月13日) 「天守台石垣の保存と安全対策」として、調査の成果を踏まえて「天守台石垣の現況と保全」や「木造復元に伴う天守台石垣の保全と安全対策」の考え方をとりまとめて提示 石垣部会からは、報告書の結論で示した「石垣が安定している」との評価は承服できないとして、石垣の安定性を確保していくために、不足している調査を早急に行い、具体的な保全措置をとることが最優先であることについて指摘 また、調査の成果は、木造復元に向けた報告書と推察でき、適切な評価がなされていないのではないかとの指摘 石垣部会からの主な指摘 ・大天守台の北面の石垣については非常に大きな変形が認められて、石垣内部に大規模な空洞が生じているようである。発掘調査では、かなりの部分の根石の抑えが壊されている状態で、非常に安定性を危惧する状況にあることが見えてきた。いずれも、この報告書の結論として示されているような、石垣が安定していると評価できるということとは正反対の評価というのが、石垣部会の構成員としての意見であり、この評価は承服しがたい。 ・名古屋城大天守台の石垣というのは、非常に危険な状態にあるということが、考えるべき結論ではないかと思う。そうすると、石垣の安定性を確保して保全していくための不足している調査を早急に行って、調査成果に基づいて具体的な保全措置をとっていくということが最優先ではないかと思う。 ・天守の復元ありきの、それに向けた報告書になってはいないかという気がする。史跡の整備に求められる原則は、学術の成果に基づいて整備していくということが、一番守るべき原則である。 36ページ 平成30年7月 基本計画書(案)を文化庁に持参(7月20日) 石垣部会からの指摘をできる限り反映し、基本計画書をとりまとめて文化庁に持参  文化庁から、石垣の保存方針について地元有識者と認識が一致していないとの指摘をいただき、提出を見送り 平成30年10月 市長定例記者会見(10月15日) 前市長が、平成30年10月の文化審議会の諮問に至らなかったことを報告 ・これまで全力で取り組んできたが、10月の文化審議会の諮問には至りませんでした。 ・2022年12月の期限は死守しなければならないので、全力を挙げて引き続き取り組んでいく。 平成30年10月 経済水道委員会所管事務調査「特別史跡名古屋城跡天守閣整備事業の進捗状況について」(10月30日) 今後の進め方として、「文化財石垣保存技術協議会に相談し、適切な助言を受けながら調査研究方法等を再検討して石垣保存方針や具体的な保存のための計画を検討する」、「具体的な保存のための計画の検討状況を石垣部会に諮り、石垣保存に対する認識を一致させ、文化庁に基本計画書を提出する」、「文化庁の技術的な助言をさらに受けながら、現状変更許可の見通しを立てるとともに、優先交渉権者と協議し、2022年12月木造天守閣竣工を守れるよう努力する」ことについて説明 【経済水道委員会における質問】 答弁 文化財石垣保存技術協議会との相談を行い、その後、石垣部会との認識を一致させようというような段取りでおります。現時点では具体的なお示しはできませんが、このプロジェクトは2022年12月の工期を予定しておりますので、そこに向かって石垣部会及び文化庁とも相談しながらやっていきたいと思っております。(局長) 37ページ イ 事象が生じた原因分析 (ア)原因分析の対象 ・石垣部会から、調査の内容や方法、体制、結果の捉え方など、文化財保護を前提とした考え方に立っていないとの指摘をいただいた。 ・石垣部会と認識が一致しないまま、文化庁に基本計画書を持参した。 (イ)当時の担当者への聞き取りにより把握した内容 ・石垣部会から、調査が不十分であること、学術体制が不足していることの指摘がされることは想像がつかなかった。詳細調査は、熊本地震を受けた追加調査という位置付けで、文化庁へは、そのうちの基本調査のところまでをまとめて出していく認識だった。今から思うと、必要な石垣調査の量に関して、文化庁や石垣部会の先生が考えていたレベル感と違っていた。 ・城の調査にほとんど関わったことがなく、どこまでやらなければいけないか客観的に分かっていたわけではなかった。石垣部会との認識の相違について、当時は意見調整も含めて相談できる相手がいなかった。石垣部会の意見を的確に捉えて対応策を検討するための相談先がいなかったため、石垣部会の指摘にうろたえるしかなかった。 ・調査の計画を立てた時は、考古の学芸員が1人いただけの状況で、役職者もいない状況であった。最初の頃に、もう少し文化財の視点を入れて計画を詰められたらよかった。技術提案・交渉方式によるプロポーザルの実施の際に、有識者に選考の過程に入っていただいていたが、事前に石垣に特化して意見を聞くことはできていなかった。 ・文化庁からは、有識者と合意した計画を持ってくるように助言を受けていた。調査は様々行っていたが、当時目指していた復元検討委員会に間に合うようなペースではなく、調査が終わってから十分な整理ができるスケジュール感でもなかった。 ・2022年(令和4年)の竣工がマストであり、平成30年7月の復元検討委員会には絶対に諮らなくてはいけないという認識はあった。前市長が諦めない限り、同年7月に何が何でも基本計画書を出すという前提でやっていた。そこに、前市長からの指示があったとの記憶はなく、局としてのスケジュール管理の中で頑張っていた。 ・当時の2022年(令和4年)12月の竣工期限というものは、世間からの注目もあり、ものすごく重かった。 38ページ (ウ)評価・検討 ・石垣調査の内容等に対し、石垣部会から指摘をいただくことは想像できておらず、また、どこまでやらなければいけないか客観的に分かっていなかったとする職員がいる中においても、石垣部会への説明を可能な限り行っていたが、石垣調査を開始した平成29年度の時点で、調査・研究を行う学芸員が不足しているなど特別史跡における調査の体制やノウハウの蓄積が組織として不十分であったことから、必要な調査研究の成果を示すことができず、認識の一致には至らなかった。 ・平成30年7月までに文化庁へ基本計画書を提出することは、スケジュール的に厳しいと認識していた職員もいたが、2022年(令和4年)12月の竣工期限に全力で取り組むとしたことが、石垣部会と認識が一致しないまま、文化庁へ持参したことにつながったと考えられる。こうしたスケジュールを優先する進め方は、最終報告でも同様の指摘(スケジュール設定の無理)がされている。 (エ)推定した原因 ・史跡整備の進め方に対する理解及び経験が不足していた。 ・基本計画書をとりまとめるにあたり、竣工期限を優先した進め方をしていた。 39ページ (4)現天守閣解体申請の継続審議につながる調査検討不足(平成30から令和4年度) 事象C ア 事象の概要及び経緯 (ア)概要 ・耐震性が低い現天守閣を放置できないことから、平成31年1月に、現天守閣の解体を先行する方針を決定し、前市長が文化庁に申入れを行うとともに、市長定例記者会見で公表した。 ・同年2月定例会において、議会から急ぎ過ぎではないか等の厳しい指摘がされたが、4月に、石垣部会と認識が一致しないまま、文化庁へ現状変更許可申請を提出した。5月には、文化庁から確認事項が示され、木造復元の方針があることも現天守閣解体の理由であることを含めて回答した。 ・令和元年6月定例会に補正予算を提出したが、現状変更許可申請が継続審議となり、解体着工の目途が立たないことを受けた議会での議論を踏まえ、議案を取り下げるとともに、同年8月に、2022年(令和4年)12月の竣工期限を延長することを公表した。 ・また、同年9月に、文化庁から、現状変更許可申請に対する指摘事項として、現天守閣の解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための調査・検討が不足していること、現天守閣解体という現状変更を必要とする理由が耐震対策のみであるのか、木造復元のためであるのか整理がなされていないことなどが示された。 ・その後、実現可能な手順と工程を積み上げ、2028年(令和10年)10月を竣工時期の目安とする「新たな工程案」の素案を、令和2年3月の全体整備検討会議で示し、文化庁から示された指摘事項への対応を最優先に進めたが、令和3年5月に木造天守の復元が現天守閣解体の理由であることを文化庁に回答したことから、文化庁から「解体と復元を一体の計画として審議していく必要がある」とする文化審議会文化財分科会の所見が本市に伝えられ、7月に現状変更許可申請書を返却していただいた。 (イ)経緯 平成31年1月 市内部で現天守閣の解体を先行する方針を決定(1月31日) 平成30年10月の文化審議会の諮問に至らなかった時点以降、本事業の今後の検討を進める中で、耐震性が低い現天守閣を放置できないことから、現天守閣の先行解体について検討を進めた結果、現天守閣の解体を先行する方針を決定 40ページ 平成31年2月 文化庁へ説明(2月1日) 現天守閣の解体を先行する方針を文化庁へ説明 平成31年2月 市長定例記者会見(2月4日) 前市長が、現天守閣の解体を先行し、5月の文化審議会を目指す旨を報告 ・現天守は震度6強の地震で倒壊する危険性が高いため、5月の文化審議会に現天守解体の申請を行いたい。 ・現天守閣の先行解体は、私が言っているわけではなく、石垣部会から推薦を受けたコンサルタントが言っているものである。 平成31年2月 文化庁から現状変更許可申請提出にあたっての留意事項が示される(2月22日) @現天守を解体する理由(現天守解体の必要性・妥当性)  耐震診断結果の詳細な説明、耐震補強では十分でない理由、現天守に係る沿革と内容に関する情報の整理、現天守の記憶保存等に関する措置 A現天守解体の具体的な工事内容(工事用仮設の具体的な内容を含む。)具体的な工法・工程等 BAに関連して、現天守の解体・除去工事が文化財である石垣等に影響を与えない工法であり、その保存が確実に図られること  石垣部会の意見を付すこと C石垣等保全の具体的方針  石垣部会の意見を付すこと D石垣等詳細調査の具体的な手順・方法等(石垣調査計画)  石垣部会の意見を付すこと 平成31年2月から3月 2月定例会 平成31年度当初予算として、天守閣解体のための仮設構台等仮設工事等費用を提出 議会からは、現天守閣の先行解体は急ぎ過ぎではないか、石垣部会の了解と文化審議会で許可がもらえるのかなどについて指摘 【本会議質問(3月1日)】 質問 2022年末の復元完成に間に合わせたいがために、文化財的な価値が高い現天守閣を先行解体するのは、誰が見ても急ぎ過ぎではないか。 答弁 本当に地震で危ないので、Is値0.14というやつは。こんな危ない建物を放置しておいていいという論理はありません。(前市長) 【本会議質問(3月6日)】 質問 どれぐらいの工期短縮が必要になるのか、また、どれぐらいの人員体制の増強が必要になるのかお尋ねします。 答弁 もともとは昨年10月の文化審議会で復元の許可を得る予定でございましたが、今年5月の文化審議会で解体の許可を得た場合でも7カ月遅れますので、工期に間に合わすためには、復元工事の中では、人員の増強や労働時間の調整などの工夫が必要になると考えております。(所管副市長) 質問 5月に解体の許可が出なければ、2022年12月の完成は断念するということでよろしいでしょうか。 答弁 それはお約束したとおり、スケジュールどおりやり抜くということでいきたいと思います。(前市長) 【経済水道委員会付議議案審査における質問(3月11日)】 質問 本当に石垣部会の了解が得られて、そして、5月の文化審議会で許可がもらえるのか。 答弁 留意事項をしっかりと対応するようにまとめて、石垣部会にお示しし、その上で文化庁に丁寧に説明をし、5月の文化審議会でお認めいただけるよう、そして、その上で速やかに解体工事に着手してまいりたいと考えております。 【経済水道委員会付議議案審査における質問(3月13日)】 質問 留意事項の中にある「石垣部会の意見を付すこと」ということの解釈は、石垣部会に認めてもらうことと理解しますが、局としての考えを教えてください。 答弁 これから石垣部会とも相談しながら方針を作っていくという姿勢でおりますので、石垣部会の理解とイコールではなくて、私どもが現時点で考えていることに、石垣部会の意見を加えた形で出していくと考えております。 41ページ 平成31年3月 第30回石垣部会(3月25日) 現天守閣の解体工事計画と、解体に伴う石垣への影響と対策を説明 石垣部会からは、工学的な検討だけでなく、計画に関わる遺構の調査を行い、保全策をとりまとめることが必要として、史跡の整備計画として成り立っていないなど厳しい指摘 石垣部会からの主な指摘 ・特別史跡内で重量構造物が通る仮設の道路を通す時には、現状変更届が必要である。内部の遺構の保全が担保されているかどうかトレンチ調査が必要だが、この計画には事前の特別史跡の保存のための手続き上の調査期間が書いてないが、いつやるのか。 ・堀底に深さ2mぐらいゴミ殻が残ったままという調査の結果が見えてきた。それを改善したうえで施工しないと危ないと散々言ってきた。その範囲も規模も、分かっていない中で市の計画が出てきた。施工中に沈下が起きないために手立てを講じるとあるが、沈下した場合どういう対応策を考えているのか。 ・橋脚台を造ったり、埋めたりということに関わる遺構の状況を把握し、どうしたらそれをき損せずに保全できるかという前提に整える必要がある。工事に関わるところについて石垣の立面図を作成し、石垣が現状どうなっているかという石垣カルテを作成して、その全てにわたって保全策を取る。 ・工学的な検討と重ね合わせて、文化財石垣あるいは文化財としてのお城のかたちを、埋蔵遺構を含めて保全できるかということを的確に示したうえであれば、こういう工法であるという提案を文化庁に現状変更として申請の中で進めていくという手順が必要であると、石垣部会としては求めたところだと思う。現状の計画は全く史跡の整備計画としては成り立っていない、完全にアウトだという指摘を受けたのだというふうに認識していただきたい。 42ページ 平成31年4月 市長定例記者会見(4月1日) 記者から、石垣部会からの厳しい指摘に対する受け止めと今後の対応について質疑応答 ・法律に従って、文化庁にも丁寧に説明していることを頭からひっくり返すようなことは出来ない。 ・そういうことなら、みんな切腹。そのかわり私一人では切腹しません。関係者全員切腹です。これが認められなかったら市民の皆さんに対して責任をとらないといけない。 平成31年4月 文化庁へ現天守閣解体に係る現状変更許可申請書を提出(4月19日) 留意事項に対する石垣部会の意見を付して提出 石垣部会のまとめ ・石垣や地下遺構の調査がまだ行われておらず、現況把握ができていない中での工事計画において、石垣への影響が軽微であるとの結論が導き出されているのは承服しがたい。 ・特別史跡名古屋城跡のもつ本質的価値である石垣の将来にわたる保全に不可欠な調査を実施してきていない現状は、文化財行政の観点から看過できない。 ・名古屋城現天守解体に予定されている場所での発掘調査、石垣調査が加われば、それらに欠くことができない埋蔵文化財専門職員の人数は、新設が予定されている調査研究センターの陣容でも絶対的に不足し、埋蔵文化財専門職員の負担を更に強いることは明らかである。 ・特別史跡名古屋城跡の文化財としてのかけがいのない価値をまもり、かつ後世に伝えていくべき管理団体である名古屋市が、名古屋城現天守解体に関する工事計画を作成し推し進めることは容認できない。 43ページ 令和元年5月 文化庁からの確認事項(5月29日) 文化庁から現天守閣解体に係る現状変更許可申請に対する確認事項が示される 1.全般的事項 ・現状変更申請の経緯について ・天守解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響の有無を判断する方法について 2.個別事項 ・現天守を解体する理由、沿革について ・現天守閣の具体的な工事内容、具体的な工法・工程等について、及び、現天守の解体・除却工事が文化財に影響を与えない工法であり、その保存が確実に図られることについて ・石垣等保全の具体の方針について、及び石垣等詳細調査の具体的な手順・方法等(石垣調査計画)について ・特別史跡名古屋城跡に関する事業実施体制について 令和元年6月 文化庁の確認事項への回答(6月19日) 現天守閣解体に係る現状変更許可申請に対する確認事項に対して、木造復元の方針があることも現天守閣解体の理由であることを文化庁に回答 現天守を解体する理由、沿革について ・現天守閣は市民の機運の高まりによって再建された、戦後復興の象徴と言えるものであるが、SRC造であり、近世城郭の天守を体感することができない。耐震補強をすることで、現天守閣の価値を維持することができる。しかし、同時に、近世城郭の天守閣を体感することができない状態が継続する。一方、名古屋城においては、昭和実測図などの記録に基づき、史実に忠実に天守閣の木造復元ができ、それにより、近世城郭の姿を実感することができる。 ・耐震改修と木造復元を比較したとき、近世城郭の本質的価値の理解の促進という点で木造復元に優位性があるため、本市は、天守閣を木造復元する方針としている。 ・市民の機運の高まりにより再建が実現した、近世城郭としての姿と近代建築としての機能性を兼ね備えた貴重な建造物であるが、耐震性が極めて低く、また上述のように耐震補強では十分でないと判断しており、解体が必要であると判断している。 44ページから45ページ 令和元年6月 6月定例会 木造保管庫設置工事に係る補正予算を提出 議会から、解体・着工の目途が立たない中で、名城公園に保管庫を設置し続けることや、解体と復元の許可を同時に審議すべきでないかなどの厳しい指摘  議案を取り下げ 【本会議質問(6月19日)】 質問 今回の現状変更許可が認められなかった場合、解体の工事期間を圧縮、あるいは2022 年を2026 年に変えるなんていう安直なことは、言いませんよね。一度立ち止まるべき時期が来たと思います。 答弁 市民の皆さんの圧倒的な御期待と、文化庁の丁寧な説明を聞きながら、丁寧な上にも丁寧に対応してまいりまして、オール名古屋で、市役所を挙げて、ベストを尽くしまして、今やグッドニュースを待っている。(前市長) 【記者クラブ説明資料(6 月21 日)】 市長コメント ・先ほど、文化財保護室の担当者から「引き続き第三専門調査会において審議する必要があるため、本日の文化審議会において議題とならなかった。」ことを電話で確認した旨の報告がありましたのでお知らせいたします。 ・現時点において許可、不許可の結論が出ているわけではありませんが、第三専門調査会で継続審議となり、文化庁からは 今後の見通しはお示しできないが、丁寧かつ速やかに結論を得たい旨の発言をいただいております。 ・本日の文化審議会で答申がいただけなかった以上、解体工事の着手に、さらなる遅れが生じますので、今後は工期の見直しを含め、天守閣木造復元の実現に向け、竹中工務店、文化庁、地元の有識者と協議を進めてまいりたいと思います。 ・あくまでも、本事業は史実に忠実に天守を木造で復元することに大きな意義があり市民との約束でもあるため、その目的を達成するために最善の道を選択していきたいと考えております。 【経済水道委員会付議議案審査における質問(6月24日)】 質問 名古屋のシンボル、二度と燃えない天守閣を作ってください、その願いを持った現天守閣を解体しますと。こんな大きな出来事をお知らせもしないで、もしかしたら、もう二度と現れないかもしれない。附帯決議も議会に諮り、あわせて市民の理解を得ながら市民とともに事業を進めることにも反しているのではないか。 答弁 方針が決まった場合は速やかに何らかの形で説明するということを、心がけていかなければいけないと考えているところでございます。 【経済水道委員会付議議案審査における質問(6月26日)】 質問 事務方の立場として、2022 年12 月は非常に厳しい、困難と考えているのか。 答弁 スケジュールを守ることが、非常に厳しい、苦しいと思っています。(局長) 質問 もう一度原点に返って、スタンダードな形で解体の許可と復元の許可申請、これを同時に審議していくべきだと思いますが、その点のお考えは。 答弁 文化庁に解体の申請の許可の審議をいただいておりますので、そのとおりにするというふうには答弁はできませんけれども、見通しを立てて、解体と木造天守の復元というものが同時並行的に進めるような形で調整する必要があると思っております。(局長) 質問 今回の議案であるこの保管庫、目途も立たない中、多くの市民の憩いの場である名城公園内に据え置くことは、市民の理解が得られるとお考えでありますか。 答弁 見通しを持ったうえで、作っていくということが大切かなと思っております。(局長) 【経済水道委員会提出資料(6月26日)】 市長コメント ・名古屋城の現天守閣の解体に係る現状変更許可につきまして、去る6 月21 日の文化審議会の答申は得られておりませんが、第三専門調査会での継続審議となっております。 ・文化庁からは、できるだけ速やかに結論を得たい旨の発言をいただき、臨時の第三専門調査会の開催についても日程調整を行っていただいていると伺っております。また、今定例会における委員会での議論を重く受け止め、今後、竹中工務店、文化庁、地元の有識者と協議を進め、改めて再度、ご提案してまいりたいと考えておりますので、一旦、延期させていただく趣旨で、議案を取り下げさせていただきたいと存じます。 46ページから47ページ 令和元年8月 臨時記者会見(8月29日) 前市長から2022年(令和4年)12月の竣工期限を延長するコメントを公表 市長コメント ・名古屋城現天守閣の解体にかかる現状変更申請については、現在、継続審議となっており、解体工事に着手できておりません。 ・解体工事に着手できていない現状において、2022年12月の竣工を目指すことは、竹中工務店からも現実的に厳しいとの見解も伺いました。 ・こうした状況を鑑み、事業を進めていくためには、クリアすべき調査・検討に全力をあげて取り組む必要があると考え、竣工期限を延ばすことといたしました。 ・クリアすべき調査・検討としては、文化庁から示された確認事項の内容を踏まえ、内堀や御深井丸の地下遺構に関する発掘調査、大天守台石垣の孕み出しや石垣背面の空隙の有無に関する検討が必要であると考えており、こうした調査・検討を迅速に進めるためにも、石垣部会との関係を構築し、石垣部会の方針をまとめ、文化庁とも調整を図るよう担当局長に指示しました。また、私自身も必要に応じ、直接、関係者との協議に臨んでいきたいと考えております。 ・今後、調査・検討を早期に完了することで、必ず解体の現状変更許可がいただけるものと思っており、竹中工務店からは、今後も、史実に忠実な復元を完遂すべく、事業達成に向けた強い決意をいただいておりますので、木造復元に向けて、改めて全身全霊を傾けてまいります。市民の皆さまには、一層の応援をお願いいたします。 ・新たな竣工時期につきましては、竹中工務店、文化庁、地元の有識者との協議をさらに進め、皆さまにお知らせできる段階になりましたら、必ず、私自身からお知らせいたします。 令和元年9月 9月定例会 議員から、「観光文化交流局長が、6月には石垣部会の委員にやめていただくと発言したこと、さらに、この9月には、大物国会議員に頼んであるからうまくいくと発言したこと」、「解体と復元の申請を一体で行うこと」について質問 【本会議質問(9月18日)】 質問 観光文化交流局長が、6月議会の時に、局と石垣部会の意見に相違があれば、石垣部会の委員にはやめていただくと発言された。そして、今回の議会中に、私たちがこのままでは現状を簡単に打開できないのではないかとの指摘に、ある大物国会議員に頼んであるからうまくいくと言われた。いつ、石垣部会の皆さんをやめさせる予定なのか、またなぜ大物国会議員に頼んだから大丈夫なのか理由を教えてください。 答弁 木造復元事業を一歩でも進めるために、石垣部会の構成員の方々との議論が対立構造のような状況を打開する必要があり、そのための相互理解がもはや不可能な状況が続く場合には、委員をやめてもらう趣旨の発言をしたことは事実でございます。しかしながら、今、事業を進めていくために、現天守閣の解体に係る必要なクリアすべき調査・検討を迅速に進めることが不可欠であり、市長からも石垣部会との関係を構築し、石垣部会の方針をまとめ、文化庁とも調整を図るよう指示を受けており、私自身、先頭に立って決意を新たに邁進してまいりたいと考えております。本年7月末時点において文化庁を訪れた際に、現天守閣の解体に係る現状変更申請の審議状況が、これまでよりも厳しい状況にあると受けとめをいたしました。それ以降、そうした中である国会議員の方から市長に対して、丁寧に御指導、御助言をいただいたと市長から承り、市長自身もクリアすべき調査・検討等を熟慮された上で、2022年(令和 4年)12月の竣工の期限を延ばす決断に至ったことは事実です。(局長) 質問 今回提出している解体の申請について、断念した今、解体申請を一旦取り下げて復元の申請とともに提出すべきだと考えますが、取り下げる考えはありますか。 答弁 文化庁も将来的な木造復元の方針があるならば、本来解体と復元は一体として申請されることが望ましいと考えているので、本市としても天守閣復元の見通しがないまま天守閣がない期間が長く続くことは望ましくないと考えております。解体の現状変更申請を取り下げるのではなく、引き続いて速やかに木造復元の許可が得られるよう、手続や方法、時期につきまして文化庁と調整を図ってまいりたいと考えております。(局長) 48ページ 令和元年9月 文化庁からの指摘(9月24日) 文化庁から本市に対して指摘事項を受理 1 文化審議会の判断 ・文化審議会において、更に確認を要する点があり、名古屋市に追加情報の提供を要請し、その内容を踏まえて引き続き調査を行うことが適当であると判断された。 2 追加情報の提供を求められた事項 (1)現天守の解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための調査・検討について ・仮設物の設置等が、地盤や石垣全体へ与える影響を分析する等の工学的視点から検討されており、文化財である石垣や地下遺構の詳細な現状把握に基づく考古学的視点からの調査・検討が不足している。 ・名古屋市においては、以下に示す点を始めとして、どのような調査が必要かについて、各分野の有識者による十分な議論と合意形成を行った上で、必要な調査を実施し、石垣等遺構に影響の無い工法を選択し、その保存を確実に図る計画となるよう必要な見直しを行うべきである。  ア 内堀の地下遺構の把握、御深井丸側内堀石垣の現況及び安定性を確認するための追加発掘調査  イ 御深井丸の地下遺構把握のための発掘調査  ウ 大天守台北面石垣の孕み出しについての調査・検討  エ 天守台石垣背面等の空隙についての調査 (2)現状変更を必要とする理由について ・天守解体という現状変更を必要とする理由が耐震対策のみであるのか、木造天守復元のためであるのかについて、整理がなされていない状況にあり、申請者において改めて検討・整理することが必要である。 ・天守解体を選択する理由として木造天守復元を挙げるのであれば、天守解体と木造天守復元を一体の計画として審議する必要があるため、木造天守復元に係る計画の具体的内容を追加提出されたい。 令和元年9月 9月定例会(資料6) 委員から、文化庁の指摘事項に係る当局の認識等について質問 【経済水道委員会付議議案審査における質問(9月25日)】 質問 全て調査をするにあたって、大体どれくらいの日数がかかろうかと予想されるのか。 答弁 石垣部会の方に向き合ってどの程度の期間、調査が必要なのかということをできるだけ早めに把握したい。役所の中では2年程度はいろんな調査とかが必要ではないかと議論をしている。(局長) 質問 常に当局からは、文化庁とすり合わせをしながら事を進めているやに聞いていたが、なぜ今まで文化庁の方から教えていただけなかったのか。 答弁 これまで、考古学的な調査をしたうえで、現状変更申請をしたが、十分だと思ってやってきたというところにまだ不足があるという御指摘をいただいた。私どもの認識の甘さがあったのかなというふうに反省しておるところでございます。 質問 石垣部会と、どういうふうな形で修復されるつもりか。 答弁 今までの私共の不手際も含めて、しっかり謝罪をさせていただいて、関係を一から構築する以外にないというふうに思っております。それができないと、次のステップには入れないということは市長も含めて重々分かっております。市長をトップに関係を修復したいと考えております。(局長) 49ページ 令和2年3月 第30回全体整備検討会議(3月31日) 「名古屋城天守閣整備事業にかかる『新たな工程』の素案」について説明 令和2年5月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城における遺構のき損事故再発防止対策及び天守閣整備事業に係る「新たな工程」の素案について」(5月14日) 2022年(令和4年)の竣工時期ありきで、無理を重ねてきた反省を踏まえ、実現可能な手順と工程を積み上げたものとして「新たな工程」の素案を説明 令和3年2月 第37回全体整備検討会議(2月9日) 全体整備検討会議において、本丸整備の理念、木造復元の意義等をとりまとめた「本丸整備基本構想及び天守整備基本構想」の内容について合意形成 令和3年5月 文化庁からの指摘事項に対する回答(5月6日) 文化庁からの指摘事項に対する回答を提出 1 現天守の解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための調査・検討について ・特別史跡として保護すべき石垣等遺構の詳細な現状把握に基づく考古学的視点からの調査・検討を行うため、有識者との相談の上、内堀においては、現天守解体の申請前に実施した発掘調査13箇所に加え、新たに9箇所の発掘調査を行った。御深井丸においては、仮設物設置区域を網羅する25箇所の発掘調査を行った。 ・現天守の解体・仮設物の設置計画については、指摘事項を踏まえ、考古学的視点及び工学的視点を合わせた総合的な視点からの検討ができる体制を整えた石垣・埋蔵文化財部会をはじめ、天守閣部会、全体整備検討会議に各種調査・検討結果を諮り、各分野の有識者による十分な議論のうえ、計画が適切であるとの合意を得た。引き続き調査・検討を行い必要な対策を実施する。 ・調査により把握した天守台石垣の築石の割れ、被熱劣化による剥離、並びに御深井丸側内堀石垣の築石の表面劣化、間詰石の抜け落ちについては、仮設物設置前に必要な対策を実施する。御深井丸側内堀石垣については、令和3年度に石垣背面の空隙、築石の控え長などの詳細調査を実施し、その結果を踏まえて石垣の保存を確実に図る仮設計画とする。小天守西側の濃尾地震の際に修復した石垣の部分については、令和3年度に地下遺構面の標高を確認する調査を実施し、その結果を踏まえて石垣の保存を確実に図る仮設計画とする。 2 現状変更を必要とする理由について ・天守の整備については、「特別史跡名古屋城跡保存活用計画(平成30年5月)」において、本質的価値の理解を促進するという点で優位性が高いことから、整備方針を木造復元として整理し、検討を進めてきた。今回、現天守の耐震性能が極めて低く危険な状態であり、放置できないことから現天守閣解体を先行して申請したものであるが、現天守解体の本来の理由である木造天守復元について、名古屋城本丸の整備基本構想として定めた。今後、木造天守復元に係る計画の具体的内容について、提出していきたい。 50ページ 令和3年6月 文化審議会文化財分科会からの所見と文化庁からの指導(6月18日・23日) 文化庁から、指摘事項に対する本市の回答について、文化審議会文化財分科会からの所見が本市に伝えられ、進め方の指導を受ける ・現天守の解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための調査・検討が一定程度進捗したものと評価できる ・天守解体と木造天守復元を一体の計画として審議していく必要があると認められる ・申請については、天守解体のみならず、木造天守復元についても一体としてその内容に加えるよう、見直しを図るのが適当である ・復元検討委員会には、石垣保存方針、基礎構造、バリアフリーの方針などの諸課題を含む、解体と復元を一体とした全体計画(基本計画書)をある程度まとめることが必要 51ページ 令和3年7月 文化庁から解体の現状変更許可申請の返却(7月27日) 現天守閣解体と木造復元を一体とした現状変更許可申請を出し直すことについて文化庁に説明し、現状変更許可申請書を返却していただいた 令和4年5月 文化庁からの指摘事項に対する追加回答(5月17日) 文化庁からの指摘事項に対する追加回答を提出 ・引き続き令和3年度に調査・検討するとした事項である、天守台石垣の確実な保存のための考え方について、天守台石垣の保存方針(案)として概要をとりまとめるとともに、御深井丸側内堀石垣及び小天守西側の濃尾地震の際に修復した石垣における仮設計画について、考古学的な調査と工学的な検討を実施し、石垣等遺構の保存が確実に図れることを確認した。 ・なお、今回の調査では現天守閣の稼働中の外部設備・配管が支障となり、濃尾地震の際に修復された石垣の背面状況までの確認はできなかったため、当該設備等が撤去できる時期に石垣の背面状況について改めて調査を行い、その結果に応じて、石垣の保存を確実に図る仮設計画に修正することとした。 令和4年6月 文化審議会文化財分科会からの所見(6月17日) 文化庁から、指摘事項に対する本市の追加回答について、調査・検討が進捗したとする文化審議会文化財分科会からの所見が本市に伝えられ、指摘事項への対応に区切り 52ページ イ 事象が生じた原因分析 (ア)原因分析の対象 ・耐震性の低い現天守閣を放置できないとして、現天守閣解体を先行する方針に変更し、石垣部会との認識が一致しないまま、文化庁へ現状変更許可申請をしたが、令和元年6月には、木造復元の方針があることも現天守閣解体の理由であることを文化庁に回答し、文化庁から、現状変更を必要とする理由が耐震対策のみであるのか、木造復元のためであるのか整理がされていないと指摘された。 ・石垣部会の有識者の指導・助言のもと、石垣の保存方針のとりまとめを進めたが、文化庁から、解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための考古学的視点からの調査・検討が不足していると指摘された。 (イ)過去の担当者への聞き取りにより把握した内容 ・石垣調査というのは、発掘調査と同様に調査を進めてはじめて分かる状況があり、それを受けて更に必要な調査が状況に応じて変わってくるため、どこまでやれば十分な調査になるのか分からず、難しさがあった。 ・現状変更許可申請後、文化庁による中身の点検と並行しながら、石垣部会の了解を得ていく見込みの上で進めていたが、徐々にとても難しいということがわかった。 ・解体だけ先行して現状変更許可を取れば、解体をしている間に復元の現状変更許可をとる時間的猶予が得られるという意見が出た。2022年(令和4年)12月の竣工期限を実現する最後の可能性だと認識していた。 ・解体先行の現状変更許可の可能性については、解体の手順まで細かく作り込んだ資料があったので石垣部会の理解も得られると認識していた者や、現状変更許可申請は解体と復元を一体で取得するものと認識しており、解体だけ先行することは無理だと考えていた者もいた。 ・また、解体先行することで、基礎構造など木造天守の課題の検討に役立つと考えていた者や、現状変更許可申請に対する文化庁から見解が示されれば、これをやらなければ事業は進みませんと、前市長を説得する理由になると考えている者もいた。そのほか、木造復元の検討には、現天守閣を解体し、穴蔵石垣の調査を進めて基礎構造を検討する手順とし、あわせて機運醸成を図っていく必要があり、木造復元を進めるのは解体先行が必須だと考えている者もいた。 ・解体先行の現状変更許可取得に対しては、前市長からの指示は一切なく、ただ、2022年(令和4年)12月の完成を実現するよう言っていた。前市長からは、木造天守ができなければ切腹というぐらいの強い思いのご指導をいただいていた。2022年(令和4年)12月の竣工期限は、本市の方針として進めてきており、可能性がある限り何とか努力しようとしていた。解体の現状変更許可が取れなかった時は、責任が問われるような雰囲気を感じていた者もいた。 ・天守閣事業の進め方について、低いと思っている可能性にかけるのでなく、早い段階で王道に戻っていられれば、事業が軌道に乗っていたのかもしれない。正しい道に戻れるように、前市長に進言できていれば良かったと回顧する職員がいた。 53ページ (ウ)評価・検討 ・職員の中でも、現状変更許可は解体と復元を一体で取得するものと認識して、解体先行は難しいのではないかと懐疑的であったり、木造復元を進めるには解体先行が必要だと考えているなど、市内部において現状変更許可申請に対して様々な捉え方があった。 ・現天守閣の解体先行は竣工期限を守れる可能性がある最後の策として認識している職員や、現状変更許可申請後に文化庁の審査と並行して石垣部会の了解を得ていくと捉えていた職員もいるなど、2022年(令和4年)12月竣工を目指して取り組みを進めていたことが推認される。こうしたスケジュールを優先する進め方は、最終報告でも同様の指摘(スケジュール設定の無理)がされている。 ・考古学的視点からの調査・検討については、どこまでの調査を行えばよいか分からず、当時の職員が苦悩していたことから、史跡整備の進め方の理解や経験が不足していたといえる。 (エ)推定した原因 ・解体を先行する現状変更許可申請にあたり、天守閣整備の竣工期限を優先した進め方をしていた。 ・史跡整備の進め方に対する理解及び経験が不足していた。 54ページ (5)エレベーター不設置方針に係る障害者等当事者への説明不足(平成29から30年度) 事象D ア 事象の概要及び経緯 (ア)概要 ・平成27年度に実施した技術提案・交渉方式による公募型プロポーザルでは、優先交渉権者から、小型仮設エレベーター(4人乗り用)の設置を検討する提案を受けていたが、平成29年11月の天守閣部会において、優先交渉権者の提案を含めてエレベーターを設置せず、代替案(チェアリフトの設置等)で車いす使用者等の合理的配慮を目指す方針を示した。 ・障害者等当事者からは、事前相談も無くエレベーターを設置しない方針を公表したことに対して抗議や公開質問を受けることとなり、同年11月定例会で前市長から、障害者の方の意見を伺いながら進めていく旨を答弁した。 ・同年12月には、障害者等当事者の意見聴取を行いながらバリアフリーを検討するため副市長をトップとする「名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討会議」を立ち上げた。 ・平成30年5月に「付加設備の方針」を公表し、史実に忠実に復元するためエレベーターを設置せず、新技術の開発などを通してバリアフリーに最善の努力をすることとしたが、エレベーターの不設置に対し、障害者等当事者から抗議活動が展開された。 (イ)経緯 平成28年3月 「名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)」による公募型プロポーザルにおいて竹中工務店名古屋支店を優先交渉権者に決定(3月29日) 優先交渉権者から、小型仮設エレベーター(4人乗り用)の設置を検討する提案を受ける 優先交渉権者技術提案書 調査・協議により付加の可能性のある検討項目「大天守内には地層から4層まで車いす用仮設エレベーターの設置を検討します(初層で乗換)。」 平成29年5月 優先交渉権者の株式会社竹中工務店名古屋支店と基本協定書や基本設計等の契約を締結(5月9日) 本事業の基本計画書等をまとめるための各種調査・検討を開始 55ページ 平成29年11月 第6回天守閣部会(11月16日) 当局案として、エレベーターを設置せず、チェアリフトの設置や階段昇降機の導入などの代替案で車いす使用者等の合理的配慮を目指す方針を説明(資料7) 当局説明 エレベーターを設置せずに新しく地層から5階までの表階段にチェアリフトを設置していきたいと考えています。ただし、今の木造復元天守は平成34年12月に完成を予定しています。あと5年ありますので、今後の技術の進展を十分に注視しながら、チェアリフトに代わる新しい代替案が出てこれば、また改めて検討していきたいと考えています。あくまでも今の名古屋市が現時点で考えています、エレベーターの設置に代わる代替案を提示させていただきます。 平成29年11月 愛知障害フォーラム()から公開質問を収受(11月21日) バリアフリーに関してエレベーター不設置の理由や、障害者等当事者の意見を反映せず、方針を決定した理由などについて公開質問を収受 平成29年11月 市長定例記者会見(11月20日) 前市長が、エレベーターではなく新しい技術に期待したい旨を発言 ・エレベーターにつきましては、前からつけんほうがいいのではないかと。竹中工務店が提案しているのは車椅子ですと1人しか乗れないですよ。 ・新しい技術はないかと。障害者の皆さんには、このほうがよかったと思えるように、技術を開発して、あと4、5年でやりますという気持ちでございます。研究者に集まってもらって、つくるのもええと思います。 平成29年11月 11月定例会 議員から、木造天守におけるエレベーターの不設置案について、障害者や高齢者などの弱者の方を切り捨てることになるのではないか、外付けエレベーターを検討の一つとすべきでないかなどの質問 前市長からは、不自由な思いをされている方としっかり相談する必要があること、階段昇降機などは考えておらず、新たな技術の検討を進めていくことを答弁 【本会議質問(11月28日)】 質問 市長の天守閣をできる限り史実に忠実なものに基づいた復元をしたいという強い思いは理解しているが、その思いを優先する余り障害者や高齢者などの弱者の方を市長は切り捨てるのではないか。 答弁 エレベーターについて、弱者の方を切り捨てるという思考があるのではないかという御質問でございましたけど、全くありません。このような話があったときに、不自由な思いをされている皆さんとか、ちゃんと相談してやらないといけないと言って、ちゃんと指示していたということでございます。(前市長) 質問 市長もいろいろ考えている。その中には、階段昇降機、それからチェアリフトということだと思います。高齢者、障害者妊婦さん、そういった方々が安心で安全に上がれるよう、そして史実に忠実であるような形であるようにするためには、やはりエレベーター、それもできれば外付けなんかということも、一つの方法として考えることは、できませんか。 答弁 (階段)昇降機を考えているなんていうことを断定されますが、そんなことは考えておりません。新聞に出ましたが、何でこんなものが出るかと思いました。もっといろんな技術を、現に頼んでおりますから。チームをつくるということになっておりますので、その中から一つ良い方法が出てきますので喜んでいただけるようになると思います。(前市長) 56ページ 平成29年11月 愛知障害フォーラム(エーディーエフ)へ回答(11月30日) 愛知障害フォーラム(エーディーエフ)からの公開質問に対して、バリアフリー対策を検討するチームを発足させ、史実に忠実に復元することを基本方針として、エレベーター設置も含めて、障害者等当事者、市民などの意見を伺いながら検討を進めていくことなどを回答 平成29年12月 名古屋市障害者団体連絡会へ報告(12月11日) バリアフリーの検討状況について報告 平成29年12月 経済水道委員会所管事務調査「特別史跡名古屋城跡天守閣整備事業に係る基本計画(案)の進捗状況について」(12月25日) バリアフリーに関する考え方、障害者等当事者への意見聴取状況のほか、今後の検討として、庁内プロジェクトチームを発足させることを説明 委員から、障害者等当事者への意見聴取状況などについて質問 【経済水道委員会における質問】 質問 事前に、障害者の団体の方だとか高齢者の団体の方だとか、いろんなところからご意見というのをいただいたのか。 答弁 史跡の中での復元という観点で1つの案を決めてから障害者団体、高齢者団体の方とはお話をしたいと思っていましたので、その時点でご意見をお聞きすることはしていなかったという状況です。 質問 その後、話し合いはしているのか。 答弁 私どもの方から団体の方に出向いて、ご意見をお聞きしているところです。具体的に申しますと、障害者団体で4団体、高齢者団体で2団体、それから、福祉関係の学識者2名の方といったところからヒアリングを行っている状況です。障害者団体の皆さま方からはエレベーター設置をすべきだという意見がほとんどです。高齢者団体につきましては、設置しろという案と、将来世代にも誇れるものにしたいということで、設置すべきではないと意見が分かれたところです。福祉の学識者におかれましては、障害者団体とか高齢者団体、いろんな意見を聞いたうえで最終的な結論を出すべきだと意見を伺ったところです。 57ページ 平成29年12月 第1回名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討会議(12月28日) バリアフリー対策の庁内プロジェクトチームとして、副市長を座長とし、局長級で構成する庁内会議を立ち上げ、木造天守のバリアフリーに関する検討を開始 庁内プロジェクトチーム検討体制(案)や、バリアフリーに関する考え方について検討 史実に忠実に復元するという趣旨の事業の中で、バリアフリーに関してはどのように取り組んでいくのか、各局において意見を聞きながら検討していくことを確認 平成30年2月 第2回名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討会議(2月28日) 各局のバリアフリーに関する現状の課題認識、木造復元天守の昇降に関する意見を報告するとともに、バリアフリーに関する今後の進め方などについて検討 木造天守の昇降については、いろいろな方面の人からの意見を集約し、それを議論して方針をまとめていくことを確認 平成30年3月 名古屋市障害者団体連絡会へ報告(3月22日) 前市長出席のもと、各団体から意見を求めた 平成30年3月 第3回名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討会議(3月29日) 障害者等当事者から聴取した要望・意見について報告するとともに、これまでのバリアフリーの検討内容と課題を整理 木造天守の昇降に関する検討案として、A案・B案・C案の3案を整理 <検討案> A案 史実に忠実に復元するためエレベーターを設置せず、新技術の開発などバリアフリーに最善の努力をする。 B案 一部に史実との乖離が生じるが、天守内部に到達階を3階とする4人乗り小型エレベーターを設置する。 C案 史実との乖離が生じるが、天守外部に到達階を1階とする11人乗りバリアフリー対応のエレベーターを設置する。 58ページ 平成30年4月 名古屋市障害者団体連絡会の加盟団体に説明(4月19日) バリアフリーの検討状況を説明 平成30年4月 第1回特別史跡名古屋城跡バリアフリー検討会議(有識者会議)(4月24日) 天守閣木造復元の方針、バリアフリーの検討状況のほか、障害者、高齢者、技術開発関係者、市民からの意見等を報告 有識者からは、史実に忠実な復元とバリアフリーとを一体で議論を進めること、災害時、緊急時のことを検討すべきであること、障害当事者の方の議論の参加が必要なことなどについて意見 平成30年5月 第4回名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討会議(5月7日) 平成30年4月24日に開催された特別史跡名古屋城跡バリアフリー検討会議の内容について、説明内容及び主なご意見並びに「付加設備の方針(案)」について報告 平成30年5月 名古屋市障害者団体連絡会へ説明(5月8日) 「付加設備の方針(案)」を提示し、意見を求めた 平成30年5月 経済水道委員会所管事務調査「特別史跡名古屋城跡バリアフリー基本方針(案)について」(5月15日) 木造天守の昇降に関する付加設備の主な検討状況と今後の予定、障害者等当事者からの主な要望・意見を報告 「付加設備の方針(案)」として、史実に忠実に復元するためエレベーターを設置せず、新技術の開発などを通じてバリアフリーに最善の努力をすることを説明 委員からは、新技術が実現しなかった場合にどう考えるのか、エレベーターの代わりの具体的な措置を示すべきではないかなどの指摘 【経済水道委員会における質問】 質問 技術が進化しても、50年後かもしれない。もしできなかったときにどういうことを考えるのか。 答弁 市役所としても、研究開発についてはより一層努力していくという決意表明というふうにご理解賜りたい。(局長) 質問 エレベーターをつけないのであれば、それに代わりうる具体的な措置を講じますと示してはじめて誰もが安心する計画案になるのではないか。 答弁 新技術の開発を真摯に進めることによって、現状よりも天守閣のすばらしさや眺望を楽しんでいただけることを保証する強い決意で臨んでいくといった方向で進めてまいりたい。 59ページ 平成30年5月 経済水道委員会所管事務調査「特別史跡名古屋城跡バリアフリー基本方針(案)について」(5月17日) 「特別史跡名古屋城跡バリアフリー基本方針(案)」における弁護士の見解について説明 委員からは、基本方針について、訴訟リスクはないか、昇降技術の公募に際して、検討の段階から障害者などを含めた協議会を設置して進めていくことが必要ではないかとの質問 【経済水道委員会における質問】 質問 訴訟というのは誰にでも与えられた権利ではあると思うけれども、本当に大丈夫か。 答弁 今後、障害者団体の皆さまとしっかりお話をしながら、新技術の開発により、バリアフリーを実現していく決意です。合理的配慮がされれば法令違反ではないという見解もございますので、訴訟ということが問題にならないよう最善を尽くしてまいりたい。 質問 バリアフリー対応協議会というものを設置して、プロセスの段階から入っていただき、そして、その実現に向けて努力をしていただくことが必要ではないかと思います。 答弁 真実性の高い復元を目指すことと、バリアフリーについて、相反するものの結論を出していくには、研究開発される方、施工業者の方、障害者の方のご意見が一つにまとまらないと対応できないと思っております。そういった中で、障害者の方への説明不足という部分もあり、そういった協議会が叶うのであれば、ご参画いただき、今後の研究開発にもご協力、ご理解をお願いしていきたいと考えております。(局長) 平成30年5月 名古屋市障害者団体連絡会の加盟団体と意見交換(5月28日) 前市長出席のもと、名古屋市障害者団体連絡会の加盟団体と意見交換 60ページ 平成30年5月 「付加設備の方針」公表(5月30日) 史実に忠実に復元するためエレベーターを設置せず、新技術の開発などを通してバリアフリーに最善の努力をするとした方針を公表  エレベーターを設置しないとしたことで、障害者等当事者からの抗議活動が展開 5.基本方針 ・史実に忠実に復元するためエレベーターを設置せず、新技術の開発などを通してバリアフリーに最善の努力をする。 ・今回、木造復元に伴い、本来の天守閣の内部空間を観覧できるようにする。また、電動か否かによらず、車いすの方が見ることのできる眺望としては、現状1階フロアまでだが、さまざまな工夫により、可能な限り上層階まで昇ることができるよう目指し、現状よりも天守閣のすばらしさや眺望を楽しめることを保証する。 ・例えば、昇降装置を有する特殊車両を応用し、外部から直接出入りすることや、ロボット技術を活用し、内部階段を昇降することなどが挙げられる。併せてVR技術を活用した体感施設の設置を行う。 ・新技術の開発には、国内外から幅広く提案を募る。 ・また、協議会を新たに設置し、障害者等当事者の意見を丁寧に聞くことにより、誰もが利用できる付加設備の開発を行う。 ・姫路城や松本城など現存する木造天守にも転用可能な新技術の開発に努力する。 ・再建後は元来の姿を見ることができるようになり、介助要員、補助具を配置することなどにより、今より、快適に観覧できるようにする。 平成30年6月 6月定例会 議員から、障害者の方が求めるような新技術の見込みがあるのかについて質問 【本会議委答弁(6月22日)】 質問 障害者の皆さんが求める、誰もがみんなと一緒に楽しく昇れる新しい技術は現時点であるのでしょうか。 答弁 新技術の開発に関し、木造天守の階段の実物大模型を建設し、障害者団体を交えたバリアフリーに関する協議会の設置や、新技術を国内外から募集するための検討調査を行い、新技術の実現に向けて検討を進め、2022年12月までに実現してまいりたいと考えております。(局長) 61ページ 平成30年6月以降 昇降技術を持つ企業、障害者等当事者が参加する特別史跡名古屋城跡バリアフリー説明会を開催するとともに、障害者団体連絡会などでの意見交換を重ねながら、昇降技術の公募スキームを検討 62ページ イ 事象が生じた原因分析 (ア)原因分析の対象 ・優先交渉権者から小型仮設エレベーター(4人乗り用)の設置検討の提案があったが、障害者等当事者へ検討経過の説明や事前に相談することなく、優先交渉権者の提案を含めてエレベーターを設置しない方針案を公表した。 ・庁内プロジェクトチームを立ち上げ、検討を進めながら、障害者等当事者から意見を伺ってきたが、障害者等当事者の十分な理解を得ないまま、エレベーターを設置せず、新技術の導入を目指すとした「付加設備の方針」を公表した。 (イ)過去の担当者への聞き取りにより把握した内容 ・平成29年11月のエレベーターの不設置は前市長の強い意向を受けたものと聞いていた。前市長は、本物を復元したいと、本物(燃えた天守)にエレベーターが付いていなかったから、エレベーターがあるのはおかしい、との考えを示されていた。 ・エレベーターを設置しない代わりの合理的配慮は求められるため、チェアリフトや階段昇降機を利用するという資料を作成し、前市長に説明した。市としては、エレベーターを設置しないという方針を出して以降、障害者の方々に意見を聞く流れを想定していた。 ・平成29年11月に、エレベーター不設置の方針を示したことに対しての障害者団体からの異論を受けて、前市長が副市長をトップとする庁内プロジェクトチームで検討することを表明し、その際に「エレベーターを排除しない」との方針を示されたため、「名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討会議」では、エレベーターを含めバリアフリーを検討していた。小型エレベーターを3階まで設置とする方針でいこうと思っていたが、土壇場で前市長がやはりエレベーターを付けないと再び表明され、方針を変更することになった。再び障害者団体に謝ることとなった。 ・平成29年11月に、エレベーター不設置の方針を示したのち、前市長はエレベーターに代わる昇降技術をいろいろなところから見つけ、様々なジャンルの企業から話を聞いていた中で、「付加設備の方針」にある新技術による昇降との発想を得たものと思う。 ・新技術の実現性については懐疑的だった。昇降技術はまだ発展途上であるし、未来が見えなかった。何が正解なのか分からなかった。 ・障害者団体の方は、エレベーターがない建物は考えられないというご意見だった。新技術というのは姿形が見えないので、障害者団体に本当に理解いただけるのかなど、いろいろ議論はした。市の対応としては、あくまでも新技術でやれることを考えていくということだった。 ・文化庁の文化審議会に諮ることを目途に進めるというのが一番大きく、全体スケジュールの方が重くのしかかっていた。 63ページ (ウ)評価・検討 ・当局は障害者等当事者へ事前に相談することなく、エレベーターを設置せず、階段昇降機等の代替案で車いす利用者等の合理的配慮を目指す案を平成29年11月の第6回天守閣部会で示した。当局としては市としての案をまとめた上で障害者等当事者の意見を伺うことを想定していたが、本来、案を検討する段階から適宜相談するなど意見を伺い、進めていく必要があった。こうした、市民理解のもと事業を進めていくための情報提供の不足や、障害者等当事者への丁寧さを欠いた対応については、最終報告でも同様の指摘(市としての方針を正確に理解してもらうための情報提供の不十分性、公募選定後に無作為抽出によって市民討論会を開催する際の進め方)がされている。 ・平成29年11月以降、前市長は独自に新技術を模索し続けていたと認識していた職員もおり、「名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討会議」においてエレベーターを含めた検討を進めている当局と前市長の間で、「付加設備の方針」の考え方が相違していたと考えられるが、平成30年10月の文化審議会に諮るスケジュールが大きく影響していたと認識していた職員がいるように、2022年(令和4年)12月の竣工期限に向けて、障害者等当事者との理解を得られないまま、エレベーターを設置せず新技術の導入を目指す「付加設備の方針」を公表した。こうしたスケジュールを優先する進め方は、最終報告でも同様の指摘(スケジュール設定の無理)がされている。 (エ)推定した原因 ・障害者等当事者との丁寧な対話や意見を尊重しながら方針を決定していくという観点で、適切な対応ができていなかった。 ・「付加設備の方針」の検討にあたり、障害者等当事者の十分な理解を得ることよりも、竣工期限を優先した進め方をしていた。 64ページ (6)公募で選定した昇降設備の設置方針に係る市内部の調整不足(令和3から4年度) 事象E ア 事象の概要及び経緯 (ア)概要 ・令和3年6月に、文化庁から、「現天守閣解体と木造復元を一体とした全体計画を取りまとめることが必要」との指導をいただき、同年12月の全体整備検討会議において、観光文化交流局長から、令和4年度末を目途に、バリアフリー等の課題を含めて整備基本計画をとりまとめる旨を表明した。 ・令和4年4月に「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」を開始し、障害者・高齢者が参加するワークショップなどを経て、垂直昇降設備を提案した株式会社エムエイチアイ・エアロスペースプロダクションを最優秀者として選定した。 ・同年12月5日の経済水道委員会所管事務調査において、公募結果を説明した際、当局からは、「できる限り上層階まで目指していきたい」と説明する一方で、同時刻に実施された市長定例記者会見において、前市長が「1、2階までなら合理的配慮と十分言えるのではないか」と発言した。 ・同月6日の11月定例会の経済水道委員会付議議案審査において、委員から、前市長と当局が十分に調整できていないことについて厳しい指摘をいただき、観光文化交流局長から、混乱を招いたことを謝罪した。 (イ)経緯 令和3年6月 文化庁からの所見、指導 現天守閣解体に係る現状変更許可申請に対する指摘事項に対して、木造天守の復元が現天守閣解体の理由であることを含めて回答(令和3年5月)した後、文化庁から、現天守閣解体と木造復元を一体の計画として審議していく必要があるとする文化審議会文化財分科会からの所見が伝えられるとともに、復元検討委員会に向けて、石垣保存方針、基礎構造、バリアフリー方針などの課題を含めて基本計画書をとりまとめる必要があることの指導をいただく 令和3年12月 第46回全体整備検討会議(12月10日) 観光文化交流局長が、令和4年度末を目途に整備基本計画をとりまとめる旨を発言 局長 目下の重要事項として木造復元に関する石垣の保存方針と基礎構造、バリアフリー対応を整理のうえ、来年度末を目途に復元原案としてとりまとめられるよう、引き続き一つひとつ丁寧に対応していきたいと考えています。 65ページ 令和4年3月 2月定例会 議員から、整備基本計画とりまとめに向けた詳細なスケジュールについて質問  観光文化交流局長から、令和4年度に公募を実施し、木造天守に導入する昇降技術を選定したうえで、年度中には、整備基本計画をとりまとめることを答弁 【本会議質問(3月9日)】 質問 基本計画が令和4年に策定できるというのであれば、その根拠を明確にしていただきたい。基本計画策定までの詳細なスケジュールを持っているならば、何月までに何をするのか明確にお答えください。 答弁 解体と復元を一体とした全体計画につきましては、平成30年度に、案ではございますが、基本計画書として一旦作成したものがございますので、これを基に課題となっている事項などを整理し、とりまとめてまいります。バリアフリーにおきましても、令和4年度に必要となる予算の成立後、速やかに昇降技術の公募を開始し、令和4年12月には、導入する昇降技術を選定する計画でおります。公募で選定した昇降技術は、基礎構造とも関連が想定されますので、基礎構造の方針や、天守全体のバリアフリーの方針のほか、文化庁の基準に示された配慮事項である防災上及び構造上の安全措置など、順次、秋頃から整理を進め、復元計画として、年明けをめどにまとめてまいりたいと存じます。(局長) 令和4年4月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募について」(4月12日) 木造天守の昇降技術に関する公募について、審査基準や公募スケジュールについて説明 委員から、「少なくとも大天守1階に昇降ができること」とした最低要求水準について、最上階までバリアフリーをやらない場合でも市の方針とするのかとの質問 【経済水道委員会における質問】 質問 先日の会議にて、バリアフリーの審査項目についてはそれぞれの配点を変えた方がいいのではないかという意見等が、出たと聞いておりますが、今後どのようにしていくのか。 答弁 バリアフリー検討会議の中で有識者の先生方から、配点基準が、8項目全て同じ点数で考えておりましたけれども、重要視するところは、もう少し考えた方がいいとご意見をいただきましたので、大天守のより上層階まで上がっていただきたいというところが、我々としても一番最重要視するべきと思っておりますので、ここの辺りですとか、利用対象者の範囲が広い、反復した利用が可能、輸送能力に関係するところも含めまして、点数を少し厚くした変更をしております。 質問 名古屋市が来年全体計画を出す段階においても、公募した結果、やはり地下1階の穴蔵から最上階までバリアフリーでやれないと、そういう場合でも文化庁と話をすると、それが名古屋市の方針ですか。 答弁 まずは可能な限り上層階までたどり着くことを求めつつ、それが今日の技術の限界であれば、それはそれとして、どうしたらいいのかということは、文化庁とも協議をし、障害者団体の皆様等ご利用の方々を代表される方々にもきちんと御意見を頂戴しながら考えてまいりたい。 66ページ 令和4年4月から11月 「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」(4月18日) 有識者との意見交換、障害者・高齢者を招いてのワークショップを経て、11月24日の審査の結果、垂直昇降設備を提案した株式会社エムエイチアイ・エアロスペースプロダクションを最優秀者として決定 4月18日 公募開始 6月10日、7月11日 質問回答 8月12日 提案書提出期限 9月2、3、9、10日 高齢者、障害者等の意見聴取 10月24日、25日 技術対話 11月24日 審査 令和4年12月 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣整備事業における解体と復元を一体とした全体計画(中間報告)について」(資料8)(12月5日) 「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」の結果等について説明  当局から、メーカーから上層階まで目指したい提案であり、「できる限り上層階まで目指していきたい」こと、技術開発に際し、いろいろな方々の意見を聞いて検討することなどを答弁 【経済水道委員会における質問】 質問 エムエイチアイの提案の中に最上階まで行ける提案はありましたか。 答弁 メーカーからは、より上層階まで行きたいというような御提案をいただいているところです。できる限り上層階まで目指していきたいというところでございます。 質問 何階まで上れるかは大変重要な点でありますし、これから技術開発をして実用化していくところで決まってくるということでありますが、その点についても、障害者団体などの声をしっかり聞きながら進めていく必要があると思いますが、その点どのように認識をしていますか。 答弁 今後の技術開発の中におきましても、当事者の方々、利用される方々の意見聴取を継続して実施してまいり、いろいろな方々の意見をよく聞いて検討していきたいというふうに考えております。 67ページから68ページ 令和4年12月 市長定例記者会見(12月5日) 前市長が、昇降設備の設置階について、どんなふうに受け止めているのかについて質疑応答 ・1階、2階のところので、まあ、とりあえずはお願いしたいということです、僕の気持ちは。 ・歴史的事実を再現するという本質的な部分については、変更はしません。 ・法律的に言うと、合理的配慮というんですけど、合理的配慮をせないかんので、1、2階までだったら、まあ、合理的配慮と十分言えるのではないかと。 ・やっぱり本物を守る義務があるのであって、そこは理解して、それを合理的配慮というのではないですか、合理的配慮をしろと言っているのであって、本物性を全部破棄してでも良いという議論じゃないですよ。 令和4年12月 11月定例会 委員から、委員会と同じタイミングで、昇降設備の設置階に係る前市長と当局の発言が相違したことについて、十分に調整できていないこと、本当の市の方針はどちらなのかについて指摘  観光文化交流局長から、何階まで設置するということは決定しておらず、提案は、より上層階を目指すものであることを説明し、混乱を招いたことについて謝罪 【経済水道委員会付議議案審査における質問(12月6日)】 質問 昨日の所管事務調査の開会中に、市長定例記者会見が同時刻に行われていた。その際、市長から、昇降技術は1階、2階までという趣旨の発言があり、それ以上は歴史的事実を損ねるとまで言われた。そんな中、経済水道委員会では、当局から、昇降技術は、より上層階を目指したい。そして、提案会社からもそういう案が出ている。そこまで言っておきながら市長は1、2階で十分だと言っている。これは、委員会に臨むにあたって、市長と当局が、十分に調整ができていなかったのかなと思う。一体どっちが本当の市の方針なのか。 局長 現時点では、何階まで設置するということが決定しているわけではなく、最優秀提案者を決定したという、そういった段階でございまして、その提案は、より上層階を目指すものとなっております。今後、様々な課題を考慮しながら、実用化に向けた技術開発を進めていくとともに、史実に忠実な復元とバリアフリーの両立の観点でも、有識者や関係団体などから御意見を頂戴してまいりたいと存じます。議会の皆様に御心配をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。 69ページ イ 事象が生じた原因分析 (ア)原因分析の対象 ・昇降設備の設置階について、当局からは「できる限り上層階まで目指していきたい」、前市長からは「1、2階までなら合理的配慮と十分言えるのではないか」と異なる発言を行った。 (イ)過去の担当者への聞き取りにより把握した内容 ・公募開始前の段階で、公募条件の中の「エレベーター技術を含んで特定の技術を排除しない」ことや、既存の船舶に導入している昇降技術があり、1階ごとに設置場所を変えながら、より上層階に行くことができる可能性があることは、前市長に事前に説明していた。 ・公募の途中段階で前市長にはエムエイチアイの技術などを絵にして示していたと思う。エレベーター的なものであっても、柱や梁を切らずに昇降設備を設置することに対して、前市長は理解を示していたと思っていた者や、前市長がどれだけ理解しているかは分からなかったと感じている者、城(天守内部)に設置したような絵は示せていないため、前市長の中では城に設置する具体的なイメージがなかったのかもしれないと感じている者がいた。 ・令和4年11月29日に前市長に昇降技術の公募結果を伝え、そこではじめて垂直昇降設備に否定的な見解を言われた。前市長は、垂直昇降設備が選ばれると思っておらず、リニアやロボットが公募で出てくるつもりだったと言っていた。前市長は、階段を直接上るような技術をイメージしていたと思う。 ・柱・梁を損なわずに設置できる昇降設備を設置し、昇降設備を取り外せばまた元の姿に戻せると、前市長に説明していたので、公募の結果に対し、あのような拒否反応を示されると思っていなかった。 ・障害者差別解消法では努力義務かもしれないが、環境の整備をきちんとやり、それでもできない部分は、合理的配慮として話し合って見つけていくことが法律の趣旨であると前市長には説明した。前市長は「1、2階まで昇降機をつけるのでそれが合理的配慮だろう」っていう言い方をずっとしていた。最後まで、環境の整備と合理的配慮の範囲について、前市長と認識が一致しなかった。 ・前市長が史実に忠実という言い方をしていたが、前市長の言う史実に忠実とは果たしてどういうものなのかという定義を、市内部で十分に共有しないまま木造復元事業をスタートしている。当局の解釈が前市長の史実に忠実な復元と同義だったか曖昧だったと思う。 ・バリアフリー対応については、前市長とも本来しっかり議論すべき部分であったが、前市長と当局の認識が一致せず、必要最小限の説明になった。公募を実施するにあたっては、障害者団体とどういうやりとりをしているかの情報共有など、前市長とはお互い対話が不足してしまっていた。石垣の調査のことや事業費の報告が多くて、バリアフリーのことが不足していた。 ・当初、公募期間中に試作機の製作を求める予定だったが、応募に係る負担を減らし、広く募集するという意図でスキームを変更した。令和3年度末頃から公募を始める予定だったが、準備が整わず、令和4年4月にずれ込んだが、期限は変えずに12月末まで、約1年を9か月に短縮してやることになった。そうすれば令和4年度中に、整備基本計画がとりまとめられるため、その後令和5年に文化庁に持っていくというストーリーだった。 ・所管副市長からは、とりあえず1階まで昇降設備を設置して木造復元し、完成後に後から付けることはできないのかといった案も出されたりしたが、整備基本計画で復元原案と復元計画を示し、改変部分を明らかにして、どのような影響があるか示す必要があることからすると、文化庁からは認められないだろうと説明していた。 70ページ (ウ)評価・検討 ・当局としては、昇降設備について、上層階を目指して、障害者差別解消法の環境整備を可能な限り行う必要があると認識していたが、前市長は、階段を直接昇降できるような技術を期待しており、昇降設備はエレベーターだとして否定的な見解を示されるとともに、「1、2階までであれば合理的配慮と十分言えるのではないか」との発言が出てしまうなど、前市長と当局で昇降設備の設置に対する考え方にずれが生じていた。 ・障害者差別解消法の合理的配慮について、当局は上層階を目指して環境整備を可能な限り行い、どうしてもできない部分については、当事者と話し合って対応策を見つけていくものと考えていたが、前市長と認識が擦り合わなかった。また、そもそも史実に忠実な復元がどういうものであるか市内部で十分共有しないまま本事業をスタートしたことの曖昧さを職員への聞き取りで確認でき、復元と合理的配慮の考え方について、前市長と当局で認識が一致していなかった。こうした復元の考え方に係る市内部での認識の不一致については、最終報告でも同様の指摘(史実に忠実な復元の解釈の不一致、職員の苦悩や葛藤)を受けている。 ・前市長への説明において、他の課題事項の報告が多く、障害者等当事者とのやりとりの情報共有の不足や、バリアフリーに関する調整が不足していたことなどが職員への聞き取りで確認でき、復元や合理的配慮の考え方について、議論が不足していた。 ・公募で選定された昇降設備を説明する具体案がないことや、公募スキームの検討経過の中で試作機の製作を取りやめたことなどから、天守内部に設置した姿を明確にイメージできなかったことが、市内部の認識の相違を生んだ要因であると考えられ、また、令和4年度までの整備基本計画のとりまとめに向けてスケジュールを優先して公募期間を短縮したことで、十分な議論が不足したことも一因となった。こうしたスケジュールを優先する進め方は、最終報告でも同様の指摘(スケジュール設定の無理)がされている。 ・所管副市長は、前市長の「昇降設備を設置しない、または1階まで」との固い意思を感じており、「昇降設備を設置しない」という結論だけにはならないよう、令和5年当初には、当局に対し、公募で選定した昇降設備を当初は設置せず、復元を進めて後から設置する、もしくは、公募の最低要求水準である1階まで設置するとの指示をするなど、前市長、所管副市長、当局間の認識の相違が明らかとなった。 71ページ (エ)推定した原因 ・事業当初から史実に忠実な復元や合理的配慮、昇降設備に係る考え方を市内部で十分に共有しないまま事業を進めてきており、市内部での議論が不足していた。 ・昇降技術の公募において、整備基本計画のとりまとめに向けたスケジュールを優先した進め方をしていた。 72ページ 3 所管副市長が障害者の方とやり取りした文書について (1)概要 ・市民討論会での差別事案を受けて、令和5年6月6日の経済水道委員会所管事務調査において、観光文化交流局長より謝罪を行った。その後、同年6月15日、30日の経済水道委員会所管事務調査において、観光文化交流局長より、本事業全体について振り返り、検証や総括が終わらない限り事業を前に進めないことを答弁した。 ・令和6年2月定例会において、観光文化交流局長より、局としての総括や再発防止策を示した上で、まず謝罪し、受け入れていただくなど、信頼の回復に取り組むことを最優先とする旨の考えであることを答弁し、所管副市長からも、検証委員会の結果を踏まえた上でないと前には進めないことを答弁した。 ・令和6年3月5日に、障害者団体から、「『名古屋城バリアフリーに関する市民討論会』における差別事案に係る検証について(中間報告)に関する質問および要望」として、話し合いの場の設定等の依頼があり、同年3月28日に、当局からは、検証委員会による最終報告を受けて総括を行っていくため、回答を差し控えたい旨を返答した。 ・一方、所管副市長としては、検証委員会の最終報告が公表される前であっても、可能であれば障害者団体等へ謝罪し、意見を伺いたいと考えており、当局が承知しない中、独自に一部の障害者の方々とメールでやり取りを行い、名古屋城のバリアフリーについての相談や、考え方をまとめた文書の作成を進めた。 ・令和6年9月定例会本会議において、議員より、当該文書の存在が示され、人権問題が解決していない段階で障害者団体と合意しているような記述がされていること、再発防止策を含めて総括を行った後に事業を再開する方針に矛盾すること、水面下で合意が進められ、市民等の信用失墜につながるとして徹底的に調査すべきこと等について質問され、所管副市長からは、経緯を説明するとともに、自身や関係者の人権の観点から、質問に異議を唱えたと受け取られかねない答弁を行った。その後、本会議後の記者とのやりとりで、議員が当該文書の存在を示したことにより、名古屋城に関して計り知れない影響が出る、修復できるかどうかわからない、更には、情報公開条例違反の恐れがある旨を発言した。 ・当該事案について、令和6年10月11日に経済水道委員会所管事務調査及び総務環境委員会所管事務調査、経済水道委員会・総務環境委員会連合審査会が行われ、総括が終わらない限り事業を前に進めず、総括や再発防止策を示した上で、まず謝罪し、受け入れていただくとしていた市の方針に反したことや、同年9月定例会本会議において議員が当該文書の存在を示したことは、情報公開条例等に違反するものではなかったことについて、所管副市長の独断による行動や発言に厳しい指摘がなされ、所管副市長が謝罪した。 ・その後、所管副市長は、令和6年11月8日に臨時記者会見を開き、議員の質問に対し、異議を唱えたと受け取られても仕方のない不適切で正確性を欠く答弁を行ったこと、行き過ぎた行動があったこと、条例の解釈、発言に誤りや不適切な内容があったことを謝罪するとともに、名古屋城天守閣木造復元の進め方についても、今一度立ち止まってよく考え、所管副市長として局の事業推進をしっかりと管理監督するとともに、他の副市長とも連携を図りながら、時間をかけて丁寧に進めていかなければならないと発言した。 73ページ (2)評価 ・本会議における議員の質問に対し、異議を唱えたと受け取られても仕方のない不適切で正確性を欠く答弁を行ったことにより、議会運営に多大な迷惑を掛けた。 ・令和6年10月11日の経済水道委員会・総務環境委員会連合審査会で指摘されたように、障害者の方々に対する背信行為であり、天守閣整備事業を進める本市の人権に対する信頼を損ねた。 74ページから75ページ 4 過去の担当者への聞き取りで判明した職員の苦悩や葛藤 最終報告で指摘のあった職員の苦悩や葛藤について、前項に掲げた「過去の担当者への聞き取り」の記載内容のうち、各事象で整理した原因に関連する、主なものを以下に再掲する。 事象@ 文化庁との調整や審議、設計などで6年や8年とか掛かる工程を考え、2020年(令和2年)までの完成は無理であると言っていたが、前市長は最後まで、東京オリンピックまでに竣工しないとやる意味がない、昔(慶長期)は2年で建てたからできるはずだというようなことを言われていた。そういう中で、鉄骨鉄筋コンクリート造で再建する選択肢もまだあるという話はとてもできなかった。 事象A 竣工期限を決める際に、リニア中央新幹線開業年やアジア競技大会開催年を説明したが前市長は納得しなかった。プロポーザルを始めて優先交渉権者が決まるまでの期間が短いが、そのスピード感でやらなければ2020年(令和2年)には間に合わない。平成28年の4月からすぐ動き出さないと間に合わないぐらいの、ぎりぎりのスケジュールでやっており、残業も夜遅くまで毎日のように続いていた。 事象B 2022年(令和4年)の竣工がマストであり、平成30年7月の復元検討委員会には絶対に諮らなくてはいけないという認識はあった。前市長が諦めない限り、7月に何が何でも基本計画書を出すという前提でやっていた。当時の2022年(令和4年)12月の竣工期限というものは、世間からの注目もあり、ものすごく重かった。 城の調査にほとんど関わったことがなく、どこまでやらなければいけないか客観的に分かっていたわけではなかった。石垣部会との認識の相違について、当時は意見調整も含めて相談できる相手がいなかった。石垣部会の意見を的確にとらえて対応策を検討するための相談先がいなかったため、石垣部会の指摘にうろたえるしかなかった。 事象C 前市長からは、木造天守ができなければ切腹というぐらいの強い思いのご指導をいただいていた。2022年(令和4年)12月の竣工期限は、本市の方針として進めてきており、可能性がある限り何とか努力しようとしていた。解体の現状変更許可が取れなかった時は、責任が問われるような雰囲気を感じていた者もいた。 石垣調査というのは、発掘調査と同様に調査を進めてはじめて分かる状況があり、それを受けて更に必要な調査が状況に応じて変わってくるため、どこまでやれば十分な調査になるのか分からず、難しさがあった。 事象D 小型エレベーターを3階まで設置とする方針でいこうと思っていたが、土壇場で前市長がやはりエレベーターを付けないと再び表明され、方針を変更することになり、再び障害者団体に謝ることとなった。何が正解なのか分からなかった。新技術というのは姿形が見えないので、障害者団体に本当に理解いただけるのかなど、いろいろ議論はした。 文化庁の文化審議会に諮ることを目途に進めるというのが一番大きく、全体スケジュールの方が重くのしかかっていた。 事象E 障害者差別解消法では努力義務かもしれないが、環境の整備をきちんとやり、それでもできない部分は、合理的配慮として話し合って見つけていくことが法律の趣旨であると前市長には説明した。最後まで、環境の整備と合理的配慮の範囲について、前市長と認識が一致しなかった。 令和4年11月29日に前市長に昇降技術の公募結果を伝え、そこではじめて垂直昇降設備に否定的な見解を言われた。柱・梁を損なわずに設置できる昇降設備を設置し、昇降設備を取り外せばまた元の姿に戻せると、前市長に説明していたので、公募の結果に対し、あのような拒否反応を示されると思っていなかった。 76ページ (空白) 77ページ 第4章 原因の整理とまとめ 本章では、第2章において本事業全体にわたり振り返る必要があると捉えた「市が差別事案に対して適切な対応ができなかった背景・遠因等」、第3章の事象における原因分析及び過去の担当者への聞き取りで浮かび上がった職員の苦悩や葛藤を踏まえ、原因を整理する中で、原因の根幹を導き出す。 原因の整理にあたっては、「市が差別事案に対して適切な対応ができなかった背景・遠因等」、第3章の事象に対する原因の分析及び職員の苦悩や葛藤から、6つの共通の原因を導いたうえで、それらを「事業の進め方に直接関わるもの」、「事業全体に影響を与えたもの」に区分した。 78ページ 1 原因の整理 最終報告「市が差別事案に対して適切な対応ができなかった背景・遠因等」 史実に忠実な復元の解釈等の不一致 区分1・区分5 市としての方針を正確に理解してもらうための情報提供の不十分性 区分4 職員の苦悩や葛藤 区分6 公募選定後に無作為抽出によって市民討論会を開催する際の進め方(人権感覚の希薄さ) 区分2 第3章の事象に対する原因の整理 事象@ 文化庁の見解に関する丁寧な確認を怠った 区分3 市内部の方針を可能な限り早期の木造復元とした 区分5 事象A 2020年(令和2年)7月の竣工に向けた厳しいスケジュールの中で、史跡整備の進め方等に係る認識が不足しているにもかかわらず、竣工期限の考え方の検討や、収支計画の作成において、竣工期限を優先した進め方をしていた 区分5 事象B 史跡整備の進め方に対する理解及び経験が不足していた 区分3 基本計画書を取りまとめるにあたり、竣工期限を優先した進め方をしていた 区分5 事象C 解体を先行する現状変更許可申請にあたり、天守閣整備の竣工期限を優先した進め方をしていた 区分5 史跡整備の進め方に対する理解及び経験が不足していた 区分3 事象D 障害者等当事者との丁寧な対話や意見を尊重しながら方針を決定していくという観点で、適切な対応ができていなかった 区分2・区分4 「付加設備の方針」の検討にあたり、障害者等当事者の十分な理解を得ることよりも、竣工期限を優先した進め方をしていた 区分5 事象E 事業当初から史実に忠実な復元や合理的配慮、昇降設備に係る考え方を市内部で十分に共有しないまま事業を進めてきており、市内部での議論が不足していた 区分1 昇降技術の公募において、整備基本計画のとりまとめに向けたスケジュールを優先した進め方をしていた 区分5 事象@から事象E以外のもの 職員の苦悩や葛藤 区分6 79ページ 原因の区分 ア 事業の進め方に直接関わるもの 区分1 市内部の調整不足(認識の不一致)(コミュニケーション不足) 木造復元の解釈のほかに、様々な認識の不一致が、市内部で生じていた 区分2 人権感覚の希薄 本事業のバリアフリー方針を検討するにあたり、バリアフリーの実現が障害者にとって人権問題であるという認識が十分ではなく、障害者団体と対話する姿勢が欠けていた 区分3 史跡整備の経験不足 特別史跡名古屋城跡の本質的価値は石垣等の遺構であることは理解しているものの、史跡整備を進めるにあたり、考慮すべきことへの対応が不足していた こうした史跡整備の経験不足や業務体制の不備により、令和2年3月に「名古屋城重要文化財等展示収蔵施設の外構工事に伴う遺構のき損事故」を生じさせてしまい、本事業の進捗にも影響した 区分4 情報提供不足 事業の基礎情報として公式ウェブサイトにおいて、相当量の情報提供があるものの、分かりやすい情報提供については欠ける点があった イ 事業全体に影響を与えたもの 区分5 スケジュール優先 スケジュールを優先した事業の進め方であったことから、竣工期限を度々変更するなど混乱をきたすとともに、必要な調査検討が不足することとなった 区分6 職員の苦悩や葛藤 過去の担当者への聞き取りにおいて、前市長の意向、職責による苦悩、葛藤が見受けられた 80ページ 2 まとめ (1)事業の進め方に直接関わるもの ・本事業は、市民、議会、文化庁、有識者など、様々な関係者の十分な理解を得るとともに合意形成を図りながら、丁寧に事業を進めていく必要がある。 ・また、令和7年2月定例会において、特別史跡内における整備にあっては、「木造天守の復元を進めるうえで、石垣の保存対策を含めた史跡の保護、現天守閣の価値の評価、機運醸成に加え、バリアフリーとの両立が欠くべからざる要素である」との旨を市長が答弁している。 ・そのような事業において、数々の事象を引き起こしたことはあってはならないことであり、事業の進め方に直接関わるものを、本章で整理した原因の根幹と捉えている。 ・次章において、「事業を進める上での基本的方針」をはじめ、「具体的な再発防止策を含む今後の進め方」を定め、二度と同様の問題や更なる問題を生じさせないよう、確実に実施していく。 (2)事業全体に影響を与えたもの ・本事業においては、特別史跡内での整備という特殊性があるにもかかわらず、関係者との十分な議論や合意形成を図った上で適切なスケジュールを設定し、状況の変化に応じて適宜見直しを図ること、職員の苦悩や葛藤を極力軽減していくことが、疎かにされていた。 ・このことについては、市内部の調整不足や史跡整備の経験不足等、事業の進め方に直接関わるものとして掲げた原因に対し、適切な対応ができていれば防げたものであると捉えている。 ・今後、本事業を進めるにあたっては、このような事業全体に影響を与えるものが生じないよう、次章に掲げる再発防止策を確実に実施することにより、誰も経験していない大規模なプロジェクトを着実に遂行してまいりたい。 81ページ 第5章 今後の事業推進に向けて 本章では、本事業の進め方について、第4章のまとめを踏まえ、今後、二度と同様の問題や更なる問題を起こさないよう、また本事業を着実に進めていけるよう、事業を進めるうえでの基本的な方針を整理したうえで、具体的に講ずべき再発防止策を含む今後の事業の進め方を示す。 事業の再開にあたっては、障害者団体等へ再発防止策を含む今後の事業の進め方について説明する等、丁寧に進めていく。 第4章では、事業の進め方に直接関わるものである原因の根幹として、市内部の調整不足、人権感覚の希薄、史跡整備の経験不足、情報提供不足を示した。 第4章で示した原因の根幹を踏まえて、第5章では、事業を進める上での基本的な方針として、市内部の共通認識と円滑なコミュニケーション、人権意識の向上と障害者等当事者との建設的対話、特別史跡内における整備の丁寧な進め方、市民等への丁寧な説明と理解促進・機運醸成を示し、再発防止策を含む今後の事業の進め方を掲げる。 82ページ 1 事業を進める上での基本的な方針 (1)市内部の共通認識と円滑なコミュニケーション ・事業における考え方などの方針をはじめ、市内部で広く共有するために、本事業に係る行動指針を持ち、共通認識及び円滑なコミュニケーションを図る。 (2)人権意識の向上と障害者等当事者との建設的対話 ・人権意識を高くして事業にあたることは極めて重要であり、人権感覚を磨き、人権意識を高めていく。 ・今後とりまとめるバリアフリーの方針をはじめ、本事業全体において、共生社会の実現、バリアフリー法、障害者差別解消法等の法律の趣旨を踏まえ、障害者等当事者の参画の場における建設的対話を行う。 (3)特別史跡内における整備の丁寧な進め方 ・本事業は、特別史跡内での整備であり、特別史跡名古屋城跡の本質的価値を構成する石垣等遺構の厳格な保存管理が大前提であるため、これまでの事業において都度、進め方を改めてきた経緯を踏まえ、引き続き、史跡整備の基本的な手順を遵守し、丁寧に調査・検討を行い、有識者等関係者の理解を得ながら進めていく。 (4)市民等への丁寧な説明と理解促進・機運醸成 ・市民等への丁寧かつ十分な情報提供に努め、分かりやすく伝えていくための情報発信の方法を検討し、実施することで、本事業に対する理解を促進し、機運が高められるように取り組む。 ・また、戦災によって失われた後に外観復元した現天守閣は、その姿を正確に示している点で近世城郭の理解に寄与してきた。市民等の愛着や誇りを醸成するとともに、名古屋の都市イメージを対外的に発信し続けてきた現天守閣の記録を適切に保存し、広く発信することで、現天守閣を市民等の記憶にとどめ、現天守閣の記録・記憶を後世につなげていく。 83ページ 2 再発防止策を含む今後の事業の進め方 (1)市内部の共通認識と円滑なコミュニケーション 推進ポリシー ・市内部の認識を一致させたうえで、円滑なコミュニケーションを図るため、「天守閣整備事業の推進ポリシー」(以下「推進ポリシー」という。)を定め、市長、副市長、当局は共有し、ともに事業を推進する。 ・推進ポリシーは、職員だけでなく市民等に対して提示し共有する。 【天守閣整備事業の推進ポリシー】 @天守閣整備事業における考え方や進め方について、個々の思いや考えで行動せず、様々な機会を捉え、議論を尽くし、市内部の認識を一致させた上で、事業を推進する A天守台石垣をはじめ石垣等遺構を確実に保全する B文化庁の「史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準」に基づく木造復元とする C障害の有無等に関係なく、誰もが外観のみならず巨大な柱や梁が構成する内部空間によって往時の天守内部を体感できるよう、可能な限り史実に忠実な復元とバリアフリーの両立を目指していく D事業期間は、関係者との十分な議論や合意形成を図るなど、必要な手順を積み上げたものとし、状況の変化に応じて適切に見直すものとする E観覧者等の防災上の安全を確保した整備基本計画とする F天守閣整備事業に係る市民等の理解促進と機運醸成、現天守閣の価値の継承に取り組む (2)人権意識の向上と障害者等当事者との建設的対話 ア 人権意識の向上 人権意識の向上 ・当局では、人権に関する責任者である人権監理者を、名古屋城総合事務所含め2名配置し、その人権監理者を中心として、職員一人ひとりが主体的に適切な判断を行うことができるよう取り組むとともに、本事業に関する市民向け説明会等を実施する際には、事前の準備段階から人権監理者によるチェック、助言・指導を行う。 ・研修等の充実を通じて、職員一人ひとりの障害者理解をはじめとする人権意識の向上を図っていく。 【具体的な取組例】 ・市共通の研修の実施 ・「名古屋市職員差別事象対応ガイドブック」の周知 ・「あいサポーター養成研修」等を活用した障害者理解のための研修の実施 ・「障害を理由とする差別の解消の推進に関する名古屋市職員対応要領」の周知 ・疑似体験や障害のある方の講師派遣による研修等の実施 ・不適切用語や注意が必要な言葉については、日頃からその意味合いや歴史的背景等を含め認識 84ページ イ 障害者等当事者との建設的対話によるバリアフリーの対応方針の検討 当事者との建設的対話 (ア)可能な限り上層階までの設置を目指し、昇降技術開発や技術検討を推進 ・昇降設備の設置については、文化庁の「史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準」に沿った木造復元としつつ、配置や形態・意匠等への十分な配慮・工夫を行うことで、史実性とバリアフリーの両立を図っていく案とする。 ・本事業の目的は特別史跡名古屋城跡の本質的価値の向上や理解促進であり、往時の姿に復元した木造天守の歴史的空間を体感し、歴史的・文化的価値や建築的特徴について広く理解していただくことにあり、できるだけ多くの方に観覧していただけるよう、可能な限り上層階までの設置を目指し昇降技術開発を進めていく。 ・昇降技術開発に並行して、その設置に伴う建物側の技術的観点や防災面等について総合的に検討を進め、設置可能な階数の具体案を整理する。 (イ)検討体制 ・建設的対話の場として、市の施設整備における当事者参画の仕組みとして健康福祉局にて予定している「バリアフリー整備相談支援事業」の活用を念頭に、当局と当事者との相互理解の上で進められるよう、障害者等当事者の意見を聞きながらバリアフリーを検討していく。 ・当事者参画の仕組みは、健康福祉局と連携しながら取り組む。 ・特別史跡名古屋城跡の本質的価値の向上や理解促進に有効であるか、史跡等の整備等に係る有識者の専門的・技術的な観点からのご意見をいただき、史跡等の整備のあり方についての理解を深めながら進める。 【検討体制のイメージ】 市の素案を全体整備検討会議等の有識者会議に提示し、そこでの意見・修正を経て了承を得る。 次に、市の素案を障害者等当時者に提示し、そこでの意見・修正を経て相互理解をして方針の決定をする。 なお、障害者等当事者との建設的対話は、バリアフリー整備相談支援事業の活用を念頭に検討する。 85ページから86ページ (ウ)昇降設備の具体案の提示 ・今後とりまとめるバリアフリーの方針をしっかりと市民等に情報提供し、市民等の理解を得られるよう取り組む。情報提供を行う際には、対立意見による人権侵害が生じることがないように細心の注意を払う。 ・昇降設備の具体案については、天守内部に設置した姿をイメージできるよう、図や映像を用いるなど、分かりやすい資料を作成し、示していく。 ウ 多様な人権への配慮 多様な人権への配慮 ・誰もが木造天守の優れた伝統技術や歴史的空間を体験することができるよう、より一層高い人権意識をもち、障害者等当事者などの意見を聞きながら観覧環境や、運営方法のあり方について検討を進めていく。 ・高齢者や障害者、子どもを連れた人、外国人など、多様な来場者に対応するため、バリアフリーの観点を踏まえた付加設備の設置や、ユニバーサルデザインを踏まえたサイン看板の設置など、観覧環境の更なる充実に努めていく。 エ 市民向け説明会等の開催における人権侵害の防止などの適切な運営 人権侵害等の防止 ・差別発言等による人権侵害を二度と起こすことのないよう、適切な準備期間を設け、名古屋城総合事務所内での応援・協力体制を構築しながら、十分に対策を講じた上で市民向け説明会等を運営していく。 ・市民向け説明会等の開催にあたっては、企画段階から実施決定後の準備段階、更には当日の実施に至るまで、市民等の不信や疑惑を招くことがないよう、公平・公正な運営を行う。 【具体的な取組例】 〇研修の実施 ・市民向け説明会等の実施の都度、第5章2(2)アの人権意識の向上に関する研修を実施する。 ・「名古屋市職員差別事象対応ガイドブック」「障害を理由とする差別の解消の推進に関する名古屋市職員対応要領」の内容を確認する。 〇名称や準備期間の設定 ・名称の設定にあたっては、会の開催目的や内容を的確に表す名称とする。 ・準備期間については、過去の市民向け説明会等を参考とするが、実績のない形態で実施する場合は、より余裕のある準備期間を見込む。 〇運営の実施・責任体制 ・過去の市民向け説明会等の実績を基本とし、過去に実績のない形態で会を実施する場合は、トラブル対応なども含めてこれまで以上に事前準備などに注意する必要があり、委託業者等とともにあらゆる可能性を想定した確認・準備を行う。 ・差別発言等の想定外の事案発生に対する役割について市と委託業者の間で事前に明らかにしておく。なお、差別発言等への最終責任は市側が負うものとする。 〇人権や障害者福祉を所管する部署との連携 ・市民向け説明会等を開催する際は、人権や障害者福祉を所管する部署や人権監理者へ、必要に応じて開催方法や運営方法等を相談し、アドバイスを求める。 〇運営方法の検討 ・人権意識や合理的配慮について、開会前に場内アナウンスによる周知を図る等、差別的発言がおこらないよう対応を行う。 ・万が一、「差別発言(差別用語を含む)」や、「他の方を不快にする発言・誹謗中傷する発言」があった場合には、市の職員が当該発言を制止するなど、会の進行を止める。 ・SNS等で配信する場合には、不測の事態が発生することを考え、配信の停止判断ができる責任者を配置するなど、人権侵害の拡大を防ぐ対応ができる体制を整える。 ・名古屋城総合事務所の人権監理者が出席し、不測の事態の対応を含め、名古屋市人権監理者設置要綱第4条に定める事項について、適切に対応する。 〇差別発言等のリスク評価と人権監理者による運営のチェック ・特に一般市民の発言等の機会を設ける市民参加の会合等の開催は、リスク評価や想定対応をとりまとめたマニュアルを職員や委託業者に周知する。 ・リスク想定及び対策を図るため、スポーツ市民局人権施策推進課の作成した「イベント等における差別発言を防止するためのチェックリスト」を基に、名古屋城独自に段階ごと(準備・開催中・事後)の差別事象対応チェックシートを作成し、名古屋城総合事務所の人権監理者の評価・分析を受けた上で、今後の運営に反映する。 〇リスク管理実例事例集の作成 ・名古屋城木造天守事業において、AIなどのツールを活用しながらリスク管理実例事例集を作成し、市民向け説明会等の実施の都度、事例集を記録・蓄積し、事業完了まで継続する。 87ページ (3)特別史跡内における整備の丁寧な進め方 特別史跡内における整備の丁寧な進め方 ・各種の研修等を通じて、名古屋城に携わる者の史跡保護に対する意識の徹底、さらに、名古屋城調査研究センター学芸員の調査研究に関する能力向上を図っていく。 ・全体整備検討会議などの場を活用し、有識者の指導・助言をいただくとともに有識者等関係者の理解を得ながら進めていく。 ・特別史跡内での整備を進めるにあたっては、名古屋城総合事務所における役割分担を明確にし、整備部門(保存整備課)・管理部門(管理活用課)・調査部門(名古屋城調査研究センター)が一体となって取り組むとともに、教育委員会文化財保護課とも情報共有を行う。 (4)市民等への丁寧な説明と理解促進・機運醸成 ア 分かりやすい情報発信 分かりやすい情報発信 ・本事業の意義や整備基本計画、バリアフリーの方針など、市民等へ丁寧かつ分かりやすい情報発信を行う。 ・市民等へ分かりやすく伝えるための表現や、情報発信の方法を検討し、実施する。 【具体的な方策の例】 〇分かりやすく伝えるための表現の例 ・市民等への説明や意見聴取にあたっては、専門用語を控える等、分かりやすい表現を用いるとともに、天守内部の観覧動線、昇降設備の見え方等について、直感的に理解できるよう図や映像などを用いる。 〇情報発信の方法の例 ・本事業の目的、経緯、復元の考え方、進捗状況等について丁寧に説明し、市民等の理解や共通認識を浸透させるため、様々な機会を捉えて、市民向け説明会等を開催する。 ・本事業の進捗状況等を名古屋城公式ウェブサイトや、各種SNS等で広く公開・発信する。 88ページ イ 機運の醸成と現天守閣の価値の継承 (ア)市民理解の促進と機運の醸成 市民理解の促進と機運の醸成 ・事業の再開にあたっては、まずは市民等へ広く総括の内容をお示しし、信頼回復に全力を尽くす。 ・名古屋城内をはじめとする市内外の催事において、本事業のPRや、市民向け説明会等を開催する。 ・名古屋城天守閣寄附金(金シャチ募金)の募集における新たな返礼品の開発等、更なる機運醸成の取り組みについて検討し、各種の取り組みを段階的に実施する。 (イ)現天守閣の記録の保存と記憶の継承 現天守閣の記録の保存と記憶の継承 ・戦後復興の象徴であった現天守閣の価値について、再建当時の図面や、工事写真、映像などをはじめとする、様々な記録を適切に保存するとともに、公開・活用し、市民等に広く発信していくことで、現天守閣を記憶に留め、現天守閣の記録・記憶を継承する。 ・木造復元に伴い解体される現天守閣の部材などを活用し、思い出を形に残すことを通じて、現天守閣に込められた人々の想いや記憶を継承する。 89ページ 3 今後の事業の流れ (1)整備基本計画とりまとめまでの流れ 総括を行った後に、整備基本計画をとりまとめるまでの流れを以下に示す。 総括について、議会への報告、障害者団体等への説明を行う。 その後、事業の進め方の議会や市民への説明を行う。 これらを経てから事業の再スタートに入り、障害者等当事者との建設的対話、市民への丁寧な説明を行ったうえでバリアフリーの方針を定めて、整備基本計画をとりまとめる。 90ページ (2)天守閣整備事業の今後想定する流れ 本事業の今後想定する流れを以下に示す。 木造天守復元として、解体と復元を一体とした全体計画の検討を行い、石垣保存方針、復元原案、構造計画・防災・避難・設備計画・バリアフリーについての復元計画などをまとめて、整備基本計画をとりまとめる。 バリアフリーとして、検証委員会の検証を経た最終報告を受けた総括を踏まえ、方針検討・市民理解によりバリアフリーの方針を定めて整備基本計画に反映させる。 整備基本計画を文化庁の復元検討委員会に提出し、文化庁での現状変更許可手続きを行う。 現天守閣解体をする際には穴蔵石垣の詳細調査をし、それにより基礎構造の決定をして整備基本計画を修正し、文化庁での現状変更許可手続きを行う。 それまでにバリアフリーは技術開発契約を結び、製作・導入を進める。 これらの手順を経て木造天守復元を進める。 91ページ 【参考資料】 資料1 「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会最終報告書(概要) 資料2 木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針 資料3 天守閣整備事業の経緯 資料4 平成27年6月17日経済水道委員会所管事務調査説明資料「名古屋城天守閣の整備に関する調査について」 資料5 市長指示書(平成27年8月24日) 資料6 令和元年9月25日経済水道委員会説明資料(1)、(2) 資料7 第6回天守閣部会議事資料「バリアフリーの検討(案)について」 資料8 令和4年12月5日経済水道委員会所管事務調査説明資料「名古屋城天守閣整備事業における解体と復元を一体とした全体計画(中間報告)について」 92ページ (空白) 93ページ 資料1 「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会最終報告書 (概要) 1 検証委員会の目的と設置の経緯について (1)差別事案の概要 令和5年6月3日に名古屋市が開催した名古屋城バリアフリーに関する市民討論会(以下「討論会」という。)において、一部の参加者から他の参加者に対する差別発言がなされ、言い合いが生じる場面があった。 その場にいた職員は、言い合いを制止するため駆けつけたが、その後、別の参加者から差別用語を含む差別発言がされたことも含め、発言の制止や注意喚起などの適切な対応を行わなかった。さらに、討論会終了後においても、差別発言に対する市としての説明や謝罪などの対応も行わなかった。 (2)当日の状況 【討論会の進行概要】 1開会 2市長あいさつ 3講演 4市からの説明:テーマ「名古屋城木造天守復元とバリアフリー」 5討論会 (1)整備に関する有識者からのコメント (2)参加者から提出された質問についての有識者や職員による回答 (3)参加者(市民AからE)から提出された意見を紹介し、提出した本人による補足説明 (4)参加者の挙手による自由発言(市民FからH) この自由発言の中で差別発言が発生 6市民アンケート結果の発表 7市長あいさつ 8閉会 (3)検証委員会の設置趣旨 名古屋市主催の「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案について、人権擁護の観点から、問題点や課題等を整理・分析したうえで原因を究明して再発防止を図り、もって市民の信頼回復につなげるための検証を行うもの (4)検証委員会による検証期間 令和5年8月30日から令和6年9月18日 計11回開催 94ページ 2 名古屋城天守木造復元事業の主な経緯 〇平成27年12月:プロポーザルによって整備事業者募集 〇平成28年3月:プロポーザル優秀提案(竹中工務店案)公表 〇平成29年11月:特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議天守閣部会にエレベーターを設置しないとする市の考えを報道 〇平成30年5月:「木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針」公表 〇令和4年4月:「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」開始 〇令和4年12月:上記公募の最優秀提案の公表 〇令和5年4月:名古屋城バリアフリーに関する市民アンケート実施 〇令和5年6月:名古屋城バリアフリーに関する市民討論会開催 3 討論会での差別事案に直接的に関わる事項に関する検証 (1)「討論会」とされた経緯 @「討論会」の目的の不明確さ 『昇降技術』については、史実に忠実な復元とバリアフリーの両立を市が求めてきた結果であったが、こうした経緯等が市民に広く周知・認識されておらず、『昇降技術』が一般的なエレベーターと同一視されているような状況下で、アンケートに「設置しない」との選択肢があったことで、エレベーター設置に関する意見の対立が、本来、『昇降技術』をどこまで設置するのか意見聴取するための討論会にも持ち込まれ差別発言を生じる背景になったものと考えられる。 A 「討論会」の名称の不適切さ ・討論会という名称で開催した以上、議論を“戦わせる”という意識に影響を与え、対立する意見の相手に強い主張を行う展開を招いたことが、差別発言が発せられる契機となったとの可能性は否定できない。 ・アンケートや討論会資料でも『昇降技術』に関する内容が中心で、他のバリアフリーに関する内容がほとんどなかったため、“バリアフリーに関する”市民討論会との名称は、内容と不一致であったと言える。 ・市が「討論会」の名称で実施したことで、市民を誤認させたと言われてもやむを得ないものであり、本来、タイトルと内容が不一致であることは不適切と言える。 95ページ (2)事前の準備 1 毎年実施してきた市民向け説明会とは異なる特殊性 ・名古屋城総合事務所にとっては、市民から意見聴取をする方式の運営は未経験であった。 ・これまで以上に事前準備等で注意する必要があり、市民が自由に発言する場としてあらゆる可能性を想定した確認・準備を委託業者とともにすべきであったと考えるが、不十分であった。 ・職員は、討論会事業に対するスケジュールの厳しさや業務への負担感を非常に強く感じており、事前準備において、さまざまな想定ができない状態に陥っていたものと考える。 ・委託業者を頼る中で、責任の所在が不明確となり、場のコントロール・進行チェックに甘さや油断が生じていた面は否定できないものと思われる。 2 問題発生の想定の甘さ ・討論会という名称である以上、市民が議論を戦わせる可能性は十分予見できたと考えられる。 ・市長が参加することにより、市長の意向に賛成の人も反対の人も市長に自己の主張を積極的にアピールしようといった意識が働き、議論が先鋭化する結果、感情的な発言等が出てくる可能性は十分に想定できたと思われる。 ・参加動機の記載内容を精査し関係者間で共有できていたならば、討論会の実施にあたっての人権上のリスク対策の検討や準備ができた可能性があったと考えられる。 ・しかし、そこに至らなかったのは、討論会に関する主体的なリスク管理の中で、人権の面での意識が低かったのではないかとの疑念を抱かざるを得ない。 ・その結果として、討論会の進行上の対策を検討することもなく、差別発言が発生した際や差別発言後に適切な対応ができないことにつながったことは否定できないと考える。 96ページ 3 スケジュール設定の無理 ・所管副市長や局長は、市民向け説明会での経験から、討論会開催までの準備期間はスケジュール的に十分であると判断しているが、無作為抽出のアンケートで選ばれた市民から参加者を募る本件討論会の特殊性への考慮がされていたとは言い難い。 ・文化庁への申請に合わせたスケジュールが優先された結果、討論会の実施そのものが目的化し作業的に準備を進めることになり、前述の特殊性を踏まえた検討作業や『昇降技術』に対する正確な情報が市民に提供されていない状況で討論会が開催されることになったものと判断する。 ・名古屋城のバリアフリーに関しては、意見の対立が存在する事項であり、その背景事情や『昇降技術』の設置に向けて進めてきた経緯を関係者が十分に理解したうえで、様々な意見が出されることを想定することが求められるにも関わらず、入念に準備する余裕がなかったことが、参加市民への配慮やさまざまな想定に至れなかった要因の1つであると判断する。 4 委託業者との連携体制の不十分さ ・本事案のような過去からの意見対立があり人権上の配慮が必要な事案では、特に、主催者である市が責任を持って必要なリスク管理や対応の指示をすべきであった。 ・委託業者の企画当初のイメージとは異なる形式となったため、より綿密な打ち合わせや意識のすり合わせが必要であったが、それが十分にできていなかった。 ・委託業者が長年にわたり木造復元事業に携わってきたことへの信頼から、市側が討論会の目的を明示的に委託業者との間で確認していなかったことが、各検討での詰めや運営の方向性、各種判断に影響を与えたと考えられる。 ・意見の対立が背景にあるテーマであったにもかかわらず、委託業者においては、差別発言は別として、討論会の中で市民同士が意見を言い合うことについて大きな違和感はなく、市としても直接自由な意見を発言してもらうことに気がまわっており、これらのことは、さまざまな想定ができなかった背景にもなっていたと考えざるを得ない。 97ページ 5 人権侵害のリスクの想定不足 ・差別事象マニュアルの存在は認知されていても、その内容についての周知が不徹底であったことは、関係職員の人権意識の点で非常に大きな問題と考えられる。 ・問題意識があったとしても、その内容が関係職員に現実的に役に立つものとして受け止められていないという一面もあったと思われる。 ・さまざまな現場で応用できるマニュアルが作成・周知徹底され、十分に認識されていれば、差別発言が誘発されないような討論会の進行や、差別発言が起こった事後に何らかの対応ができたものと考えられる。 ・ユーチューブのライブ配信は、情報が世界発信されることによる影響について、市側が意識していなかったことは、討論会全体にわたって人権問題に対する意識が低かったことの一つの表れと考えざるを得ない。 (3)当日の運営の実施・責任体制 1 運営・進行に関する認識と意識の共有不足 ・多くの参加者は『昇降技術』が公募によって選定され設置が決定しているものであることを認識していなかったと考えられる。 ・討論会の目的について的確に説明できる場面はたびたびあったと考えられるが、それをしなかったことも、差別発言につながる一因となったと考えられる。 ・『昇降技術』については、史実に忠実な復元とバリアフリーの両立を市が求め障害者団体への意見聴取など時間をかけて検討し進めてきた結果であるが、その経緯等が市民に理解されていないまま議論が進められていたものと思われる。 ・討論会において、事実上、『昇降技術』を設置しない意見を聞く運営がされていたが、市長レクで市民あてのアンケート等に「設置しない」可能性もあるような表現に修正されていた事実からすると、検証委員会としては、市長の『昇降技術』を「設置しない」という当時の意向が職員の意識に何らか影響し、少なからず、こうした運営にも反映されたと判断する。 98ページ 2 差別発言への対応 ・主催者としては、参加するすべての市民が相互に尊重し合い、安心して議論することができるように参加者の協力を求めるアナウンスを行い、主催者の意思を明確に届ける必要があったと考える。 ・職員が適切に動けなかった理由として、ヒアリング結果からは、差別発言などがあった場合の事前の想定、シミュレーションができておらず、身体が動かなかったということがあげられているが、多くの意識が討論会を無難に終えることに向いていたものと判断する。 ・差別発言を受けた方へ討論会終了後にも駆け寄ることができておらず、職員として差別発言に対する問題意識が欠如していたと言わざるを得ない。 ・本来、主催者である市が差別を容認していないことを、速やかに市の姿勢として毅然と示すことが必要であったはずである。 ・無作為抽出で選ばれた市民に自由に発言いただくことについて市長が非常に重き価値を置いた発言を検討段階からしており、職員も委託業者も同様の認識でいた。そうした市長や職員が非常に重視する市民の自由な発言であったことから、制止や注意することに対して躊躇した面もあったものと判断する。 ・市民への障害者理解を進めるためにも、健康福祉局がより積極的にかかわることが今後の差別事案防止・障害者理解の点でも有用であると考える。 3 差別発言に対する市長のコメント ・差別は人権侵害であって、いかなる場合でも許されるものではなく、差別を表現する自由というものは認められない。 ・市長が仮に当日の発言全体が正確に聞き取れていなかったとしても、記者会見等で、差別は許されないという市としての立場を明確に強く表明すべきであったと考えられる。 ・職員においても、差別発言が聞こえていたのであれば、仮にその場で動けなかったとしても、会の終了までに何らかの手段で市長に進言すべきであったが、その意識がなかったものと思われる。 ・市長の閉会あいさつを聞いている市民としては、市長が、差別発言を不適切と指摘していないことから、すべての発言を「よかった」と指していると認識した可能性もあるだけでなく、むしろ「熱い」という表現からは、過激で強い口調だった差別を含んだ発言を評価したとさえ捉えられかねないため、後日であっても、差別発言に対して積極的に問題提起すべきであった。 ・市長の立場として、市民の自由な発言を尊重することそのものは理解できるが、公職者として、差別には、より厳しい姿勢で対応に取り組んでいただきたい。 99ページ 4 市が差別事案に対して適切な対応ができなかった背景・遠因等 (1) 史実に忠実な復元の解釈等の不一致 ・「史実に忠実な復元」の解釈について、どのようなものが、どの程度まで設置できるのか等、個別具体的な考え方は、市長と、所管副市長をはじめとする職員の中で十分に共有できていたとは言えない状況にあった。 ・木造天守閣の復元という大規模プロジェクトを進めているにも関わらず、市としての理解や意識等を十分に共通のものとしないまま、市がスケジュールの見直しを行うことなく当初の予定を優先して作業を進めたことが、市民の混乱を招くとともに、市民の間での意見対立を招いた背景にあると判断し、問題点として指摘するものである ・加えて、こうした状況が、市としての方針を正確に理解してもらうための市民への情報提供の不十分性や、職員の苦悩や葛藤にも影響していると考えられることを指摘しておく。 (2)市としての方針を正確に理解してもらうための情報提供の不十分性 木造天守復元事業におけるバリアフリー整備に関して、市として十分な共通認識がないままに市民に対して情報発信を行った結果、市長個人や個々の職員の見解ではなく、「市としての方針」を正確に理解してもらうための情報提供が不十分なものとなり、それが、バリアフリー整備に関する市民の理解や考え方を分け隔てることにつながり、市民間での意見対立を広げた遠因となったものと判断する。 (3)職員の苦悩や葛藤 ・通常、プロジェクトを進めるにあたっては、担当する職員には苦悩や葛藤が生じることは自然な事であり、大規模なプロジェクトの場合には、尚更のことである。ただし、名古屋城天守木造復元事業では、担当する職員が特に苦悩や葛藤を感じる特殊事情があったことが認められる。 ・市長は、定例記者会見などの公的な場において「垂直昇降設備の設置は1、2階まで」と発言していたことから、所管副市長は市長が『昇降技術』を設置しないとの判断に傾きかねないことに強い不安を感じ、職員も市長の『昇降技術』の設置は望ましくないという思いをレク等で繰り返し耳にすることで、相当なプレッシャーを感じていた者もいた。 ・市長や所管副市長の言動をパワーハラスメントと感じる職員が生じるほどに関係者間の円滑なコミュニケーションが取れていなかった時期も生まれていた。それらのことに鑑みれば、市長は、行政の長として、公募結果の遂行にあたって、苦悩や葛藤を抱える職員に対する配慮に欠けていた面もあったといえよう。 ・職員は、市長の意向を気にしながら事業を進めることになり、対外的な市民説明に対する職員の苦悩をより強くさせてしまうことになったと考えられる。 ・職員の苦悩や葛藤が、市民間の意見対立へのリスク想定不足や配慮不足など、アンケートや討論会の準備にも少なからず影響を与え、討論会当日における差別発言に対して適切な対応を行うことができなかった遠因になっていたと判断する。 100ページ (4)公募選定後に無作為抽出によって市民討論会を開催する際の進め方 ・障害者団体は、討論会がバリアフリーをどのように実現するかを人権・尊厳の観点から考える重要な場であると認識していたのに対して、市には、討論会が人権にかかわる訴えを聴く貴重で重要な場であるという認識は、ほとんどなかった。 ・すでに新技術を公募し最優秀者の選定を行ったにもかかわらず、その新技術を「設置しない」との選択肢を含む無作為抽出のアンケートとそのことを前提とした討論会を実施することで、討論会は公募の選定結果を否定し得る場であるとの印象を参加者の一部に与え、また、討論会の実施について障害者団体へ十分な説明等を行わず、障害者団体から事前に伝えられていた懸念や要望等に対しても十分に対応しなかったことが、討論会における意見対立の素地を作り、差別発言が生じる遠因となったものと判断するものである。 ・市は、木造復元事業のバリアフリーの対応方針に関連して、障害者団体に対して人権侵害に当たる誹謗中傷が数多く届いていたことを認識していたにも関わらず、事業の実施主体である市として、会議等を非公開とするほかは特段の対応をしてこなかった。 ・市民説明会総点検資料では、市は市民説明会に関する障害者団体の懸念に対してトラブルが起こってから対応するとしているが、トラブル予防に関する言及はなく、障害のある方に安心して参加し発言していただくためにどうすべきかという人権意識が働いていなかったことがうかがわれる。 ・これまで事業の実施にかかわった、市長・副市長をはじめとした関係者の人権感覚の希薄さが差別事案の根源的な背景・遠因となっていたものと判断するものである。 5 再発防止に向けて取り組むべき事項 (1)再発防止に向けた提言 1職員研修の充実 ・職員の人権意識・感覚の育成、障害及び障害者理解の一層の促進の実施に向けた実効性のある研修の実施 2障害者差別解消法の推進に関する法律、条例の周知徹底 ・会議や研修等でさらなる周知徹底 3人権施策推進会議・幹事会の企画運営の見直し ・職員一人ひとりが、自分事として理解を深められる実践的な会議運営の検討 4差別事案発生防止のための体制づくり ・市民参加事業について、人権の視点からの相談や内容のチェックなどを行う責任者の各局への設置と実践的かつ専門的な人材育成 101ページ 5差別事象マニュアルの抜本的見直し ・実際の場面で具体的に活用できる内容に改訂 6市民・事業者の障害及び障害者理解の一層の促進 ・市民・事業者のより一層の理解を促進するため、新たな啓発事業の実施など施策の充実強化の検討 7対話によるバリアフリーを推進するための仕組みの整備 ・市が公共建築物を整備するにあたり、障害者や高齢者をはじめ配慮が必要な当事者からの意見聴取や対話の仕組みを整備 (2)市民からより一層信頼を得るための提言 1障害者差別解消の推進に関する条例の改正 ・本条例では、差別相談の相手方としては事業者のみを想定しており、相手方が市となる場合に対応することができない。 ・差別相談の相手方として市を加えるとともに、市を相手方とする助言やあっせん、措置の求め及び勧告の手続きを行うことができるよう改正することが必要である。 2実効性のある人権条例の制定 ・人権尊重の根幹となる包括的で実効性のある人権条例の制定を求める。 ・さらに、市が日本の人権尊重のまちづくりの先頭に立ち、他都市をリードし、全国水準を高めていく「人権施策先導都市」となることを目指し、踏み込んだものとすべき。 6 おわりに ・指摘した点を十分に理解したうえで、市長以下関係者が適切なコミュニケーションを通じて事業に関わる考え方等を共有すること。 ・市長や職員は、個人の見解ではなく、「市としての方針」を正確に市民に伝えること。 ・市長は、行政機関の長として、職員が誤解しないような表現を使用し、市民の誤解や分断を生じさせることがないよう意識した事業運営に努めること。 ・市は、人権が市民にとって最も大切なものであることを改めて認識し直すこと。 ・市は、障害者をはじめ市民の人権に関わる事業を推進する際は、当事者の意見を真摯に聴き、建設的な対話を通じて当事者の真意をしっかりと捉えながら行うこと。 ・市は、日本を先導する実効性のある人権条例を新たに制定し、市の姿勢を市民に明示すること。 ・市には、人権条例を拠り所とした施策を着実に展開し、市民が互いの人権を尊重し合う、安心・安全に暮らせる社会の構築を期待する。 102ページ (空白) 103ページ 資料2 木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針 1 基本的な考え方 ・本事業は、歴史時代の建築物等の遺跡に基づき、当時の規模・構造等により再現する「歴史的建造物の復元」を行うものである。 ・名古屋城天守閣は、法隆寺のころから始まった日本の木造建築のひとつの到達点、究極の木造建築とも言われ、豊富な歴史資料をもとに外観の再現に留まらない史実に忠実な完全な復元を行うことの選択を議会、行政における検討や市長選挙での市民の信託を得て推し進めることとしたものである。 ・市民の皆さまの中には、「一旦は焼失しているので復元しても本物の天守閣ではない」との意見もあるが、名古屋城天守閣は城郭として国宝第一号であったものが、大戦中多くの市民の命とともに昭和20年5月14日に空襲で焼失してしまったものの、残された石垣には空襲による傷跡も残っており、焼失中の写真も残されている。その上で、市民の精神的基柱であり、誇りである名古屋城の天守閣を、悲しい歴史的史実を経て、昭和実測図や金城温古録等、豊富な歴史資料に基づき、戦災で焼失する前の本物の姿に復元すると世界に主張するものである。したがって、過去の天守閣と今回の木造復元の同一性について、歴史的な分断を感じさせない復元を成し遂げる事が、事業の価値を決定づける大きな要素となる。 ・50から100年で再度「国宝」になることを目指す。 ・ゆえに、史実に忠実な復元を確保した上で、まず、2022年の完成時期に、その先においても世界の模範とされるべき改善を重ね、観覧、体験、バリアフリー環境を整備するための付加設備とする。 2 現天守閣の現状 ・現天守閣は5階までエレベーターで上がれるが、内部は博物館施設であり、本来の木造天守閣の内観を観覧することはできない。また、展望については、1階の東側及び北側の一部と7階の展望室からに限られているが、7階へは階段でなければ行くことができないため、車いすの方は展望ができない状況である。 104ページ 3 内部エレベーター ・内部エレベーターについては、柱、梁を傷めないものとして、史実に忠実に復元する天守閣とするためには、乗員が4人程度、かご(乗用部分)の大きさが幅80センチメートル、奥行き100センチメートル程度となり、乗ることができる車いすも小型なものに限定され、よく使用されている幅65センチメートル、長さ100センチメートル程度(電動車いすは幅65センチメートル、長さ105センチメートル程度)のものは利用できない。したがって、バリアフリー法の建築物移動円滑化基準に対応するエレベーターは設置できない。 4 外部エレベーター ・都市景観条例を定めて、すぐれた都市景観の形成を進めている中で、景観計画により名古屋城の眺望景観の保全を図ることとしている。 ・その眺望の対象である天守閣の歴史的な外観を損なうことから、外部エレベーターは設置しない。 5 基本方針 ・史実に忠実に復元するためエレベーターを設置せず、新技術の開発などを通してバリアフリーに最善の努力をする。 ・今回、木造復元に伴い、本来の天守閣の内部空間を観覧できるようにする。また、電動か否かによらず、車いすの方が見ることのできる眺望としては、現状1階フロアまでだが、様々な工夫により、可能な限り上層階まで昇ることができるよう目指し、現状よりも天守閣のすばらしさや眺望を楽しめることを保証する。 ・例えば、昇降装置を有する特殊車両を応用し、外部から直接出入りすることや、ロボット技術を活用し、内部階段を昇降することなどが挙げられる。併せてVR技術を活用した体感施設の設置を行う。 ・新技術の開発には、国内外から幅広く提案を募る。 ・また、協議会を新たに設置し、障害者団体等当事者の意見を丁寧に聞くことにより、誰もが利用できる付加設備の開発を行う。 ・姫路城や松本城など現存する木造天守にも転用可能な新技術の開発に努力する。 ・再建後は元来の姿を見ることができるようになり、介助要員、補助具を配置することなどにより、今より、快適に観覧できるようにする。 105ページ 資料3 天守閣整備事業の経緯 平成18年9月 「特別史跡名古屋城跡全体整備計画」策定 天守閣の耐震改修整備などを行う方針を記載 平成21年4月26日 名古屋市長選挙 河村たかし氏が名古屋市長に当選 平成21年6月19日から7月7日 6月定例会 前市長が、天守の木造復元について言及(6月24日) 平成21年8月10日 市長定例記者会見 天守閣をはじめ名古屋城全体の調査をするための調査費を次年度予算に盛り込むよう指示した旨を発言 平成22年度 名古屋城整備課題調査 耐震性、避難安全性、バリアフリー、木材調達等の課題調査等 平成22年度 名古屋城天守閣耐震対策調査 耐震補強及び改修方法の検討等 耐震と改修事業費 約29億円 平成23年2月6日 名古屋市長選挙 前市長がマニフェストに「名古屋城天守閣の本物復元検討着手、本丸御殿復元過程の公開」を掲げる 平成24年2月19日 名古屋城の将来を語る市民大討論会の開催 約160人参加 名古屋城の目指すべき将来像、名古屋城天守閣の木造復元について、市民、有識者 4名、前市長による議論を実施 平成24年度 天守閣木造復元概算経費・工期算出調査 木造復元方法の検討、概算経費及び工期の算出調査等 事業費 約270億円から400億円 工期 約18年 平成25年度 名古屋城整備課題調査 現天守閣の解体と木造復元工事に伴う現天守閣の博物館機能や、工事期間中の入場者数への影響調査等 平成26年2月から3月 「ネットモニターアンケート」実施 天守閣整備に係る市民意見の聴取を目的としたアンケートを実施 ・現在の天守閣を存続させて、耐震補強や改修などを行う 71.0% ・現在の天守閣を解体して、現状と同じく鉄骨鉄筋コンクリートで再建する 2.7% ・現在の天守閣を解体して、木造で復元する 15.3% ・わからない 8.8% ・その他 2.2% 106ページ 平成26年6月14日から7月2日 6月定例会 議員から、「文化庁は、史実と異なる鉄骨鉄筋コンクリートでは建て替えができないとの見解を示しています」とした上で、「名古屋城の整備のネットモニターアンケートにおいて、現在の天守閣を今後どうしていくとよいと思いますかという問いの中で(略)鉄骨鉄筋コンクリートで再建という項目がありますが(略)作為的な世論形成につながりかねない」旨を指摘(6月27日)  市民経済局長から、「文化庁に照会をしなかったということにつきましては、配慮が足りなかった」と謝罪 平成26年9月6日 名古屋城天守閣フォーラムの開催 約120人参加  前市長から、2020年(令和2年)の東京オリンピックに完成が間に合うように復元したい旨を発言 平成26年度 名古屋城整備検討調査 文化庁の見解が「再建する場合は木造復元に限られる」との本市の認識のもと木造復元と耐震改修に係る検討、課題の整理、比較を実施  「耐震改修し概ね40年後の木造復元」と、「可能な限り早期の木造復元」について比較検討を行った結果、木材調達、社会情勢及び施設運営の各項目において、「可能な限り早期の木造復元」を行うことに優位性があるとの結論 平成27年6月17日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備に関する調査について」 文化庁の見解が「再建する場合は木造復元に限られる」として、平成26年度に実施した調査結果を踏まえて、可能な限り早期の木造復元を目指すという、今後の整備の進め方を報告 平成27年6月22日 文化庁の見解を確認 ・天守の再建については、整備主体である地元の自治体がどのような整備を行うか考えることが第一 ・その上で、天守を復元する場合は、原則として材料等は同時代のものを踏襲する必要があるが、それ以外の可能性を排除するものではない ・名古屋城天守閣については、往事の資料が十分そろっていることを踏まえると、いわゆる復元検討委員会において木造によるできうる限り史実に忠実な復元をすべきと意見が出される可能性が極めて高いと考えられる 107ページ 平成27年7月1日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備に関する調査について」 市民経済局長から、文化庁の見解について、正確性を欠く説明をしたことについて謝罪 委員から他都市事例を問われ、当局から、松前城(北海道松前町)について、文化庁の復元検討委員会の中で、木造復元しかないという結果になったことを説明したが、委員から当該事例に係る当局の認識の正確性について指摘 平成27年8月24日 市長指示書 前市長から、天守復元の手法について技術提案・交渉方式を採用することについて、市民経済局長あての指示書を受領 平成27年8月29日 名古屋城天守閣フォーラムの開催 約160人参加 名古屋城に造詣が深いディージェーによる名古屋城自慢対決を行った後、前市長を交えて名古屋城対談を実施 平成27年9月10日から10月14日 9月定例会 松前城の件について、事実関係に誤りがあり、前市長が9月10日に謝罪、市民経済局長が9月18日に謝罪 木造復元に係る工期・工程、概算事業費を明らかにするための技術提案・交渉方式の実施や、名古屋城の魅力向上策の検討調査のための補正予算「名古屋城整備検討調査」を提出  附帯決議を付して可決  附帯決議 名古屋城天守閣の木造復元に係る概算経費が約270億円から400億円と莫大であり、厳しい財政状況の中、市民生活に大きな影響を与える懸念があることから、関係局との協議を踏まえ、国・県支出金、寄附金、地方債、市税等の割合を含めた財源フレームを明確にし、優秀提案選定後の工期、工程、概算事業費等が明らかになった段階で速やかに、市民アンケートを実施しあわせて議会へ報告すること 平成27年12月2日 技術提案・交渉方式による公募型プロポーザルの実施 2020年(令和2年)7月竣工を条件とする公募 平成27年12月6日から平成28年1月17日 名古屋城天守閣の整備タウンミーティングの開催 全16区で実施、計2,632人来場 天守閣の現状・課題・過去の調査結果、技術提案・交渉方式の調査内容、経済波及効果などを説明 平成28年1月18日 市長定例記者会見 天守閣の整備費は100%市債を発行し、特別会計で対応する旨を発言 108ページ 平成28年2月19日から3月18日 2月定例会 平成28年度当初予算案に「名古屋城天守閣の整備検討(技術提案・ 交渉方式による公募結果等の報告会、市民アンケート等)」を計上 前市長より、木造復元に関しては建築物そのものについて税金は要らない旨を答弁(3月3日)  附帯決議を付して可決 平成28年3月29日 「名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式による公募型プロポーザル」に係る優先交渉権者決定 優先交渉権者 株式会社竹中工務店名古屋支店 事業費 約505億円 平成28年4月7日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備検討について」 天守閣整備に係る今後のスケジュールを説明 平成28年4月14日・16日 平成28年(2016年)熊本地震発生 熊本城の石垣等に被害 平成28年4月22日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備検討について」 技術提案・交渉方式の提案内容、工程計画のほか、財源フレーム案を提示 平成28年4月28日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣の整備検討について」 優秀提案における提案額と参考額の考え方、入場者数及び入場料収入の算出根拠(名古屋城本丸御殿整備や他城郭の整備の実績による入場者数の増減率を元に積算)等を説明 平成28年5月6日から20日 「名古屋城天守閣の整備2万人アンケート」実施(有効回答数7,224) 木造復元を選択した回答(「2020年(令和2年)7月までに優秀提案による木造復元を行う」及び「2020年(令和2年)にとらわれず木造復元を行う」)が6割以上との結果 ・2020年7月までに優秀提案による木造復元を行う 21.5% ・2020年7月にとらわれず木造復元を行う 40.6% ・現天守閣の耐震改修工事を行う 26.3% ・その他 6.2% ・無回答 5.4% 平成28年5月10日から15日 「名古屋城天守閣の整備市民向け報告会」の開催 5会場 876人参加 名古屋城天守閣の整備の概要等を説明 平成28年5月下旬から6月上旬 広報なごや特集号「名古屋城天守閣の整備」の配布 天守閣整備の課題、民間業者からの技術提案、収支計画等について、市民の皆様に周知するために、広報なごや特集号を作成し、全戸配布 109ページ 平成28年6月14日から29日 6月定例会 名古屋城天守閣特別会計に係る補正予算の議案を上程  竣工期限の見直しに係る当局の判断や、入場者数、収支見込について第三者機関の調査結果を待つ必要があるとして継続審査 平成28年9月9日から10月12日 9月定例会 「熊本地震を受けて、更なる調査を実施することが必要であり、本市といたしましては、ある程度時間をかけて実施してまいりたいと判断し、2020年7月の完成期限を見直したいと存じます。」と答弁(10月6日)  2022年(令和4年)の完成期限について、優先交渉権者と協議できていない状況や、訴訟リスクが否定できない状況であるとして継続審査 平成28年11月18日から12月7日 11月定例会 6月定例会から継続審査となっている議案について審査  竣工時期や総事業費について前市長、当局、優先交渉権者との協議が整っておらず、入場者数・収支見込みに関する第三者機関への調査も完了していないことから継続審査 平成29年2月22日から3月23日 2月定例会 木造復元に係る関連議案を新たに提出し、6月定例会から継続審査となっている議案とあわせて審査 竣工時期を2022年12月に変更する旨を説明  附帯決議を付して可決 附帯決議の内容 ・名古屋城天守閣木造復元事業を進めるにあたっては、入場者数と収支見込みに対して、民間調査会社から長期の予測は不可能であるとの指摘があることから、独立採算による収支相償の財源フレームを堅持するために、入場者数目標の達成に向けてあらゆる努力をすること ・財源フレームの基本的な考え方については、市民の機運醸成を図り寄附金などの募集をするほか、事業の意義について国や県の理解を得て補助金を確保するとともに、市民税5%減税の検証による見直しも含め、財源を確保すること ・総事業費505億円については、工期設定の適切な見直しを行うなど大幅な圧縮に努めるとともに、文化庁や優先交渉権者との協議調整状況並びに仕様や工程及び契約内容等について、適宜議会への報告を行い、議会に諮りながら進め、あわせて市民の理解を得ながら、市民とともに事業を進めること 110ページ 平成29年5月9日 優先交渉権者の株式会社竹中工務店名古屋支店と基本協定書や基本設計等の契約を締結 本事業の基本計画書をとりまとめるための各種調査・検討を開始 平成29年7月21日 天守閣木造復元への寄附(金シャチ募金)の開始 平成29年10月13日 第24回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(石垣部会及び天守閣部会合同) 全体整備検討会議の座長(天守閣部会座長兼任)から、木造天守及び天守台石垣の安全性に対して、天守閣部会と石垣部会には考え方に違いがあることについて発言 平成29年11月16日 第6回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議天守閣部会 エレベーターを設置せず、チェアリフトの設置や階段昇降機の導入などの代替案で車いす使用者等の合理的配慮を目指す方針を説明 平成29年11月21日 愛知障害フォーラム(エーディーエフ)から公開質問状を収受 バリアフリーに関してエレベーター不設置の理由や、障害者等当事者の意見を反映せず、方針を決定した理由などについて質問 平成29年11月30日 愛知障害フォーラム(エーディーエフ)へ回答 バリアフリー対策を検討するチームを発足させ、エレベーター設置も含めて検討を進めていくこなどを回答 平成29年12月11日 障害者団体連絡会 バリアフリーの検討状況について報告 平成29年12月28日 第1回名古屋城木造復元天守バリアフリー検討対策会議 バリアフリー対策の庁内プロジェクトチームとして、副市長を座長とし、局長級で構成する庁内会議を立ち上げ、木造天守のバリアフリーに関する検討を開始 平成30年1月16日から24日 「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会」の開催 5会場 346人参加 開会挨拶、整備概要、進捗状況の説明、質疑 平成30年1月28日 「名古屋城天守閣木造復元シンポジウム」の開催 313人参加 開会挨拶、基調講演、整備概要、進捗状況の説明、質疑 平成30年4月24日 第1回特別史跡名古屋城跡バリアフリー検討会議 天守閣木造復元の方針、バリアフリーの検討状況のほか、障害者、高齢者、技術開発関係者、市民からの意見等を報告 平成30年5月7日 現天守閣入場禁止 耐震性が低いため現天守閣を閉館 平成30年5月8日 名古屋市障害者団体連絡会へ説明 「付加設備の方針(案)」を提示し、意見を求めた 111ページ 平成30年5月9日 「特別史跡名古屋城跡保存活用計画」の策定・発表 特別史跡内の建造物として本質的価値の理解を促進するとの点において優位性が高いことなどから、天守閣整備事業の整備方針を木造復元とし、検討を進めることを掲げた 平成30年5月15日 経済水道委員会所管事務調査「特別史跡名古屋城跡バリアフリー基本方針(案)について」 木造天守の昇降に関する付加設備の主な検討状況と、障害者等当事者からの主な意見、「付加設備の方針(案)」について説明 平成30年5月17日 経済水道委員会所管事務調査「特別史跡名古屋城跡バリアフリー基本方針(案)について」 「特別史跡名古屋城跡バリアフリー基本方針(案)」における弁護士の見解について説明 平成30年5月21日 「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」が名古屋市役所前で抗議 平成30年5月30日 「付加設備の方針」を公表 史実に忠実に復元するためエレベーターを設置せず、新技術の開発などを通してバリアフリーに最善の努力をするとした方針を公表 平成30年6月19日 「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」がデモ行進し名古屋市役所前で抗議 平成30年6月19日から7月4日 6月定例会 木材調達に係る契約議案提出  原案どおり可決 平成30年7月4日 木材(主要な構造部材)の手配・製材の契約締結 平成30年7月13日 第28回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議石垣部会 有識者から、石垣が安定しているとした本市の評価は承服できない旨を指摘 平成30年7月20日 文化庁へ基本計画書案を持参 文化庁から、石垣の保存方針について地元有識者と認識が一致していないとの指摘をいただき、提出を見送り 平成30年7月24日 第1回バリアフリー説明会の開催 階段の昇降技術を持つ企業4社から、障害者団体に対し、その技術・製品の説明を受け、障害者団体から意見聴取 平成30年10月15日 市長定例記者会見 前市長から、平成30年10月の文化審議会の諮問に至らなかったことを報告 平成30年11月15日 第2回バリアフリー説明会の開催 パワーアシストスーツ、段差解消機、はしご車の企業から説明を受け、障害者団体から意見聴取 112ページ 平成30年12月21日 障害者団体連絡会へ出席 木造天守閣昇降に関する公募スキームの検討状況を説明 平成30年12月28日 第2回特別史跡名古屋城跡バリアフリー検討会議 木造天守閣の昇降に関する付加設備の検討状況と「付加設備の方針」、昇降に関する公募スキーム(案)等について説明 平成31年1月7日 「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」から日本弁護士連合会へ人権救済申し立て 平成31年1月17日から25日 「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会」の開催 5会場 298人参加 開会挨拶、整備概要、進捗状況の説明、質疑 平成31年1月27日 「名古屋城天守閣木造復元シンポジウム」の開催 121人参加 開会挨拶、基調講演、整備概要、進捗状況の説明、質疑 平成31年1月31日 市内部で現天守閣の解体を先行する方針を決定 平成30年10月の文化審議会の諮問に至らなかった時点以降、本事業の今後の検討を進める中で、耐震性が低い現天守閣を放置できないことから、先行解体について検討を進めた結果、現天守閣の解体を先行する方針を決定 平成31年2月1日 現天守閣の解体を先行する方針を文化庁へ説明 平成31年2月19日から3月15日 2月定例会 平成31年度当初予算として、現天守閣解体のための仮設構台等仮設工事等費用を提出 平成31年度当初予算及び平成32から33年度債務負担予算として木造天守閣の昇降に関する新技術の公募費用を提出 平成31年2月22日 文化庁から現状変更許可申請提出にあたっての留意事項が示される @現天守を解体する理由(現天守解体の必要性・妥当性) 耐震診断結果の詳細な説明、耐震補強では十分でない理由、現天守に係る沿革と内容に関する情報の整理、現天守の記憶保存等に関する措置 A現天守解体の具体的な工事内容(工事用仮設の具体的な内容を含む。)具体的な工法・工程等 BAに関連して、現天守の解体・除去工事が文化財である石垣等に影響を与えない工法であり、その保存が確実に図られること 石垣部会の意見を付すこと C石垣等保全の具体的方針 石垣部会の意見を付すこと D石垣等詳細調査の具体的な手順・方法等(石垣調査計画) 石垣部会の意見を付すこと 113ページ 平成31年2月25日 「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」が13,674筆の署名を提出 平成31年2月25日 名古屋城天守閣整備事業における基本設計代金の支払いに対する返還請求、同実施設計契約の無効、及び同事業の差止請求訴訟事件 訴状の受領  訴えのうち一部却下、その余の請求棄却  第一審 令和2年11月5日判決  控訴審 令和4年3月25日判決 平成31年3月7日 行政文書非公開決定処分取消請求事件 訴状の受領  訴えのうち一部取消し及び開示につき認容、その余の請求につき却下又は棄却  令和4年3月30日判決 平成31年3月25日 第30回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議石垣部会 現天守閣の解体工事計画と、解体に伴う石垣への影響と対策を説明 石垣部会からは、工学的な検討だけでなく、計画に関わる遺構の調査を行い、保全策をとりまとめることが必要として、史跡の整備計画として成り立っていないなど厳しい指摘 平成31年4月1日 名古屋市障害のある人もない人も共に生きるための障害者差別解消推進条例施行 平成31年4月1日 市長定例記者会見 前市長が、復元が認められなかったら関係者全員切腹との旨を発言 平成31年4月19日 文化庁へ現天守閣の解体に係る現状変更許可申請書を提出 留意事項に対する石垣部会の意見を付して提出 令和元年5月17日 文化審議会 現天守閣解体について諮問される 令和元年5月29日 文化庁から現天守閣解体の現状変更許可申請に関する確認事項が示される 令和元年6月14日から7月1日 6月定例会 木造保管庫設置工事に係る補正予算の議案を上程 経済水道委員会へ現天守閣解体に係る現状変更許可申請の見通しが得られないことから木造保管庫設置工事に係る補正予算の議案を取り下げる旨の前市長のコメントを資料提出(6月26日) 令和元年6月17日 障害者団体連絡会へ出席 公募の方針について説明 令和元年6月19日 確認事項への回答を文化庁へ提出 現天守閣解体を先行する現状変更許可申請に対する確認事項において、木造天守の復元が現天守閣解体の理由であることを含めて回答 114ページ 令和元年6月21日 記者クラブ提供 現天守閣解体について、文化審議会の議題とならず「今後は工期の見直しも含め、竹中工務店、文化庁、地元有識者と協議を進める」との前市長のコメントを公表 令和元年7月2日 「名古屋城天守閣にエレベーター設置を実現する実行委員会」が市民署名追加5,911筆、計19,585筆を提出 令和元年8月5日 障害者団体連絡会へ出席 公募実施概要について説明 史実に忠実な復元とバリアフリーの両立、部門分け、審査基準、ワークショップの実施について説明 令和元年8月20日・21日 「名古屋城木造天守閣の昇降新技術公募に関する審査基準作成のワークショップ」の開催 趣旨説明、名古屋城木造天守閣の昇降に関する新技術公募について、新技術公募の審査基準の検討 審査基準について障害者団体から意見聴取 令和元年8月29日 竣工期限の延期に関する市長臨時記者会見 「事業を進めていくためには、クリアすべき調査・検討に全力をあげて取り組む必要があると考え、竣工期限を延ばすこととした」とのコメントを発表 令和元年9月10日から10月9日 9月定例会 議員から、「観光文化交流局長が、6月には石垣部会の委員にやめていただくと発言したこと、さらに、この9月には、大物国会議員に頼んであるからうまくいくと発言したこと」、「解体と復元の申請を一体で行うこと」について質問(9月18日) 令和元年9月24日 文化庁からの指摘 文化庁から現天守閣解体に係る現状変更許可申請に対する指摘事項として、現天守閣の解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための調査・検討が不足していること、現天守閣解体という現状変更を必要とする理由が耐震対策のみであるのか、木造復元のためであるのかについて整理がなされていないことなどが示される 令和元年11月2日 名古屋城木造天守閣階段体験館「ステップなごや」一般公開 令和元年11月6日・18日 「名古屋城木造天守閣の昇降新技術公募に関する第2回審査基準作成のワークショップ」の開催 実物大階段模型の見学、「名古屋城木造天守閣に関する昇降新技術公募」の説明、新技術公募の審査基準の検討 審査基準について障害者団体から意見聴取 115ページ 令和元年11月28日から12月7日 「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会」の開催 8会場 448人参加 開会挨拶、整備概要、進捗状況の説明、質疑 令和元年12月20日 障害者団体連絡会へ出席 第2回審査基準作成ワークショップ及び第3回バリアフリー検討会議の報告 令和2年1月10日 日本弁護士連合会から「人権救済申立事件について(照会)」収受 平成31年1月7日の名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会から日本弁護士連合会への申立に伴う照会(令和2年3月31日回答) 令和2年2月19日から3月17日 2月定例会 観光文化交流局長から、事務方として、現時点で竣工時期を2028年10月以外とする案は持ち合わせていないことを答弁(3月4日) 令和2年3月2日 「名古屋城重要文化財等展示収蔵施設」の外構工事に伴う遺構のき損事故が発生 令和2年3月31日 第30回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 「名古屋城天守閣整備事業にかかる『新たな工程』の素案」について説明 令和2年4月13日 第5回名古屋城木造復元天守バリアフリー検討対策会議(資料配布のみ) これまでの経緯、公募の概要等 令和2年5月14日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城における遺構のき損事故再発防止対策及び天守閣整備事業に係る「新たな工程」の素案について」 2022年(令和4年)の竣工時期ありきで、無理を重ねてきた反省を踏まえ、実現可能な手順と工程を積み上げたものとして「新たな工程」の素案を説明 令和2年8月27日 障害者団体連絡会へ出席 公募の概要について説明 令和2年9月11日から10月13日 9月定例会 観光文化交流局長から、基礎構造について、石垣・埋蔵文化財部会と天守閣部会の両方に関連する事項であるため、基礎構造の具体的な検討を着実に進める体制となる調整会議を設置することを答弁(9月18日) 令和2年10月22日 第34回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 木造天守基礎構造の検討について、調整会議で議論していくと説明 令和2年12月7日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣整備事業に係る進捗状況について」 文化庁からの指摘事項への対応・スケジュールを示す 116ページ 令和3年1月22日から31日 「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会」の開催 3会場 153人参加 開会挨拶、学芸員による講演、整備概要、進捗状況の説明、質疑 令和3年2月9日 第37回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 全体整備検討会議にて、「本丸整備基本構想及び天守整備基本構想」の内容について説明 令和3年2月18日から3月19日 2月定例会 令和3年度名古屋城天守閣特別会計予算を附帯決議を付して可決 名古屋城天守閣木造復元に係る予算については、文化庁の文化審議会において正式に「木造復元」の許可がされた後に執行すること 令和3年3月30日 第38回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 全体整備検討会議にて「現天守閣解体申請に対する文化庁からの指摘事項への対応」の内容について説明 令和3年5月6日 文化庁からの指摘事項に対する回答 文化庁からの指摘事項に対して、各種調査・検討結果や木造復元が現天守閣解体の理由であることの回答を提出 令和3年6月18日・23日 文化審議会文化財分科会からの所見と文化庁からの指導 文化庁から、指摘事項に対する本市の回答について、調査・検討が一定程度進捗したものと評価できること、現天守閣解体と木造復元を一体の計画として審議していく必要があることとする文化審議会文化財分科会からの所見が本市に伝えられるとともに、復元検討委員会には、石垣保存方針、基礎構造、バリアフリーの方針などの諸課題を含む、解体と復元を一体とした全体計画(基本計画書)をある程度まとめることが必要との指導を受ける 令和3年7月27日 文化庁へ解体の現状変更許可申請の返却依頼 現天守閣解体と木造天守復元を一体とした現状変更許可申請を出し直すことについて文化庁に説明し、現状変更許可申請書を返却していただいた 令和3年8月8日 障害者団体より要望書を受領し、訪問回答 令和3年11月8日 専決処分に係る議会報告の遅れ 木材製材の設計変更(1回目は令和2年3月26日、2回目は令和3年3月31日、いずれも木材保管期間の延長に伴う減額変更)が専決処分にあたるとの認識に至らず、議会報告がされていなかったことが判明  11月8日に経済水道委員会の委員へ説明し、11月定例会にて報告 117ページ 令和3年11月9日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城における天守閣等整備事業について」 木造天守の完成期限について、当面は、復元検討委員会に必要となる解体と復元を一体とした全体計画の作成に向けて有識者との十分な議論と合意形成を図ることとし、復元検討委員会での議論が進み、許可手続き及び完成時期の見通しが立った段階で設定することを説明 令和3年11月18日 名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書に係る覚書の締結 木造天守の完成期限を暫定的に延長する覚書を締結 令和3年12月10日 第46回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 観光文化交流局長が、令和4年度末を目途に整備基本計画をとりまとめる旨を発言 令和3年12月15日 障害者団体連絡会へ出席 公募の内容について説明 令和4年1月19日から22日 市民向け説明会・オンライン市民向け説明会の開催 3会場 208人参加 開会挨拶、学芸員による講演、整備概要、進捗状況の説明、質疑 令和4年2月18日から3月22日 2月定例会 令和4年度名古屋城天守閣特別会計予算を附帯決議を付して可決木造天守閣の昇降に関する技術の国際コンペについては、障害者団体、高齢者団体、福祉関係学識者及び関係機関と十分に検討を行い、理解を得た上で実施すること 令和4年3月24日・31日 文化庁からの指摘事項への追加回答 第48回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議石垣・埋蔵文化財部会で説明(3月24日) 第48回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議で説明(3月31日) 令和4年3月25日 障害者施策推進協議会へ出席 公募の内容について説明 令和4年3月28日 福祉のまちづくり推進会議へ出席 公募の内容について説明 令和4年4月1日 名古屋城天守閣整備事業先行工事(木材の製材)の追加の契約締結 令和4年4月8日 障害者団体連絡会へ出席 名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募について説明 令和4年4月12日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募について」 木造天守の昇降技術に関する公募について、審査基準や公募スケジュールについて説明 令和4年4月18日 「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」開始 令和4年5月17日 文化庁からの指摘事項に対する追加回答を提出 118ページ 令和4年6月17日 文化審議会文化財分科会からの所見 文化庁から、指摘事項に対する本市の追加回答について、調査・検討が進捗したとする文化審議会文化財分科会からの所見が本市に伝えられ、指摘事項への対応に区切り 令和4年7月13日 第24回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議天守閣部会 石垣保存方針、基礎構造、バリアフリーの方針を含めた整備基本計画の議論を本格的に開始 令和4年8月9日 日本弁護士連合会より「人権救済申立事件について(照会)」を受領 平成31年1月の障害者団体から日本弁護士連合会への申立に伴う照会(令和4年9月6日回答) 令和4年9月2日から10日 公募ワークショップの開催 高齢者は9月2日と3日 障害者等は9月9日と10日 令和4年10月24日 日本弁護士連合会から「要望書」を受領 名古屋城天守閣にエレベーターの設置を求める人権救済申立事件(2018年度第45号) 令和4年10月24日・25日 公募技術対話 公募参加者、技術相談員、事務局が参加し、技術上の不明点やワークショップでの意見に対する対応策について相互対話 令和4年11月1日 「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する会」より「公開質問状及び要望」を受領 令和4年11月24日 公募審査 令和4年12月2日 名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募 最優秀者の選定 令和4年12月5日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣整備事業における解体と復元を一体とした全体計画(中間報告)について」 「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」の結果等について説明 当局から「できる限り上層階まで目指していきたい」ことを答弁 令和4年12月5日 市長定例記者会見 前市長が、「垂直昇降設備の設置は1、2階まで。1、2階までなら合理的配慮と十分言えるのではないか」と発言 令和4年11月18日から12月7日 11月定例会 昇降設備の設置階について、前市長と当局の発言が相違したことについて、観光文化交流局長が謝罪(12月6日) 令和4年12月7日 愛知障害フォーラム(エーディーエフ)「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する会」より「名古屋城木造天守昇降技術及び市長発言の撤回要求と抗議」を受領 119ページ 令和4年12月20日 障害者団体連絡会への出席 公募の結果及び地上から大天守地階までのバリアフリーについて説明 令和4年12月28日 名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書に係る覚書(その2)の締結 木造天守の完成期限を暫定的に延長する覚書を締結 令和5年1月21日 市民向け説明会の開催 217人参加 開会挨拶、学芸員による講演、整備概要、進捗状況の説明、質疑 令和5年1月28日 シンポジウムの開催 445人参加 開会挨拶、講談、基調講演、整備概要、進捗状況の説明、パネルディスカッション 令和5年2月17日から3月16日 2月定例会 所管副市長から、「今一度、市民意見を聴取する機会を設けて市民のご意見をお伺いしたい」との答弁(3月6日) 令和5年3月24日 第55回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 整備基本計画案を概ね取りまとめるが、一部事項(石垣の保存方針、バリアフリーの方針)に課題を残す 令和5年4月1日 名古屋城天守閣整備事業先行工事(木材の製材)の追加(その2)の契約締結 令和5年4月19日 市民アンケートの実施 無作為抽出により市民 5,000人に対してアンケート発送 令和5年6月3日 名古屋城バリアフリーに関する市民討論会の開催 障害者差別事案が発生 令和5年6月5日 第5回特別史跡名古屋城跡バリアフリー検討会議 復元する木造天守のバリアフリーについて説明 令和5年6月6日・15日・30日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会での市民の発言に対する当局の対応について」 観光文化交流局長から、検証が終わり、局としての総括をするまでは、事業を前に進めることはできない旨を答弁 関連して、6月14日と30日の総務環境委員会、6月15日の財政福祉委員会でも本事案を審議 令和5年6月12日 第56回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 整備基本計画第2章の石垣等遺構の保存等の内容について説明 令和5年8月18日 「『名古屋城バリアフリーに関する市民討論会』における差別事案に係る検証委員会」設置 令和5年10月31日 昇降技術開発契約締結 120ページ 令和5年11月17日から12月7日 11月定例会 「増設する階段により復元的整備になる」との文化庁の見解について議員より発言(11月27日) 令和5年12月28日 名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書に係る覚書(その3)の締結 木造天守の完成期限を暫定的に延長する覚書を締結 令和6年2月14日 「『名古屋城バリアフリーに関する市民討論会』における差別事案に係る検証について(中間報告)」の公表 中間報告では、差別事案に係る直接的に関わる事項に限定して検証され、最終報告に向けては、過去の経緯も含めて検証することとされた。 令和6年2月16日 総務環境委員会所管事務調査「『名古屋城バリアフリーに関する市民討論会』における差別事案に係る検証委員会からの中間報告について」 検証委員会の中間報告について説明 令和6年2月20日から3月21日 2月定例会 所管副市長から、検証委員会の結果を踏まえた上でないと前には進めないことを答弁(3月8日) 観光文化交流局長から、検証委員会の最終報告を踏まえて、観光文化交流局の総括や再発防止策を示した上で、当事者へまず謝罪し、それを受け入れていただくなど、信頼回復に取り組むことを最優先すべきであると考えていることを答弁(3月8日) 総務環境委員会において、委員より、過去の市民向け説明会で、本事業に賛同する方の動員依頼が市長特別秘書からあった旨の発言(3月15日) 経済水道委員会において、委員から、前市長から反対派ばかりではいけないので、賛成派も集めろという指示があったのかとの質問があり、当局から、そのような発言があったことを過去の担当職員に確認した旨の答弁  附帯決議(3月15日)「なお時間を要すると考えられる名古屋城木造天守閣復元事業については、過去の市民説明会において、市長から職員に対し、賛成の意見を持った参加者を動員するよう発言があった旨の答弁があったことから、公平性、公正性が担保されるよう、観光文化交流局におけるこれまでの取組を総点検し、適正な職務執行に努めること。」 令和6年4月1日 名古屋城天守閣整備事業先行工事(木材の製材)の追加(その3)の契約締結 121ページ 令和6年5月31日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会の総点検について」 質疑及び附帯決議を踏まえ、公平性、公正性の観点から、名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会に係る総点検の結果等を報告 令和6年6月18日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣木造復元市民向け説明会の総点検について」 5月31日の経済水道委員会で指摘をいただいた点や追加の調査を実施した上で明らかになった点を報告 令和6年6月19日から7月4日 6月定例会 議員より「市民との対話のための方策からバリアフリーの方針の検討まで約2年程度必要」との所管副市長への説明資料について質問(6月26日) 令和6年9月18日 「『名古屋城バリアフリーに関する市民討論会』における差別事案に係る検証について(最終報告)」の公表 令和6年9月13日から10月16日 9月定例会 議員より「特別史跡名古屋城跡を誰もが歴史を体感できる日本最先端のユニバーサルデザインの城にするために」という文書について質問(9月24日) 令和6年9月30日 総務環境委員会所管事務調査「「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会からの最終報告について」 経済水道委員会との連合審査会に関する申し入れ 令和6年10月11日 経済水道委員会所管事務調査「名古屋城天守閣木造復元事業の進め方に係る現段階の考えについて」 令和6年10月11日 総務環境委員会所管事務調査「名古屋市情報公開条例における行政文書について(スポーツ市民局)」、「名古屋市情報あんしん条例における行政文書について(総務局)」 令和6年10月11日 経済水道委員会・総務環境委員会連合審査会「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会からの最終報告を踏まえた名古屋城天守閣木造復元事業の進め方について」 令和6年10月15日 前市長失職 第50回衆議院議員総選挙への出馬に伴い、前市長が自動失職 令和6年11月24日 名古屋市長選挙 広沢一郎氏が名古屋市長に当選 令和6年11月19日から12月6日 11月定例会 市長から、3人の副市長にそれぞれの立場から意見を述べてもらい、しっかりと議論を重ねた上で、最終的に市政の責任者として判断していくことを答弁(12月5日) 122ページ 令和7年1月31日 名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書に係る覚書(その4)の締結 木造天守の完成期限を暫定的に延長する覚書を締結 令和7年2月19日から3月21日 2月定例会 市長から、石垣の保存対策を含めた史跡の保護、現天守閣の価値の評価、機運醸成に加え、バリアフリーとの両立が欠くべからざる要素であると認識をしていることを答弁(3月10日) 令和7年4月1日 名古屋城天守閣整備事業先行工事(木材の製材)の追加(その4)の契約締結 123ページ 資料4 経済水道委員会説明資料「名古屋城天守閣の整備に関する調査について」 平成27年6月17日 市民経済局 124ページ 目次 1 名古屋城天守閣の概要 (1)経緯 (2)現天守閣 (3)断面図 2 平成25年度までの調査の経緯 3 平成26年度調査 (1)前提 (2)検討内容 (3)比較検討 4今後の進め方 125ページ 1 名古屋城天守閣の概要 (1)経緯 ・天守閣は慶長17年(1612年)に完成 ・昭和5年(1930年)に城郭建築における国宝第1号に指定 ・昭和20年(1945年)に戦災により焼失 ・昭和34年(1959年)に再建 (2)現天守閣 工事期間 昭和32年6月から昭和34年10月 総費用 約6億円 うち約2億円が寄附 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造 階数 大天守閣は地下1階地上7階、小天守閣は地下1階地上3階 延床面積 大天守閣は5,431.73平方メートル、小天守閣は1,347.71平方メートル 126ページ (3)断面図 地下1階地上7階の大天守閣の構造 地階は入口ホール 1階から5階は展示室 6階は一般開放していない機械室 7階は展望室 階段では地階から7階まで移動可能 エレベーターでは地階から5階まで移動可能 石垣の高さは本丸地盤から12.42メートル 建物の高さは石垣上端から36.03メートル 石垣と建物を合わせた高さは本丸地盤から48.45メートル 地下1階地上3階の小天守閣の構造 地階は外部から大天守への経路となるホール 1階から3階は一般開放していない収蔵室 石垣の高さは本丸地盤から8.29メートル 建物の高さは石垣上端から16.40メートル 石垣と建物を合わせた高さは本丸地盤から24.69メートル 127ページ 2 平成25年度までの調査の経緯 平成22年度の耐震対策調査 ・耐震補強及び改修方法の検討 ・耐震と改修事業費約29億円 平成22年度の木造復元にかかる課題調査 ・耐震性、避難安全性、バリアフリー、木材調達等への対応 ・本丸御殿復元工事との重複 平成23年度の天守台健全性調査 ・戦災による石材の劣化 ・石垣の孕み出し 平成24年度の木造復元にかかる概算経費・工期算出調査 ・概算経費として、全て国産材の節無しで約400億円、全て国産材の節有りで約320億円、外国産材及び国産材の節有りで約270億円 ・工期約18年(現天守閣の解体・石垣工事等含む) 平成24年度の天守台測量調査 ・北面石垣の現状把握 平成25年度の博物館機能の調査 ・収蔵品の総数約5,600点 ・収蔵必要面積約1,600平方メートル 平成25年度の工事期間中の入場者数への影響調査 ・類似施設の入場者数として、姫路城は約4割減、平等院は約6割減 ・類似施設の入場料として、姫路城は600円から200円減額、平等院は600円から300円減額 平成25年度の木造復元にかかる廃棄物の調査 ・コンクリートは約7,500トン ・鉄骨鉄筋は約800トン 128ページ 3 平成26年度調査 (1)前提 ・現天守閣は再建されてから55年が経ち、老朽化が進行している ・耐震性能が現行の基準に合わない ・耐震改修した場合でも概ね40年の寿命 ・再建する場合は木造復元に限られる(文化庁の見解) (2)検討内容 文化財・展示物等の移転 木造復元の場合、工事期間中におけるサービス機能確保を検討したところ、重要文化財以外の美術品等収蔵場所の確保が必要との結果に 耐震改修の場合、工事期間中におけるサービス機能確保を検討したところ、耐震補強計画との整合性を図った展示室の配置が必要との結果に 既存建築物の取り扱い 木造復元の場合、現天守閣の解体に伴う市民の想いの継承を検討したところ、現天守閣部材の再利用と展示コーナーの設置が必要との結果に 耐震改修の場合、工事に伴う内部造作物等の取り扱いを検討したところ、内部造作物等の状態確認及び再配置が必要との結果に 石垣保存 木造復元・耐震改修ともに、文化財としての取り扱いを検討したところ、石垣管理マニュアルを作成し整備することが必要との結果に 建築関連のうちのバリアフリー関連 木造復元の場合、バリアフリーへの対応を検討したところ、エレベーター設置シミュレーションの実施が必要との結果に 耐震改修の場合、バリアフリーへの対応を検討したところ、エレベーター改修工事の実施が必要との結果に 建築関連のうちの工事関連 木造復元の場合、工事仮設計画を検討したところ、天守北側への工事ヤードと鋼台・足場の設置が必要との結果に 耐震改修の場合、工事の影響範囲を検討したところ、天守東側内苑への工事ヤードと足場の設置が必要との結果に 施設運営 木造復元・耐震改修ともに、整備時期に沿った施設運営等の課題を検討したところ、城内工事動線の輻輳及び入場者の安全確保が必要との結果に 129ページから130ページ (3)比較検討 ア 考え方 いずれかの時期には木造復元が必要であるため、可能な限り早期の木造復元か、耐震改修し概ね40年後の木造復元かについて比較検討した イ 比較 木材調達として、角材として400ミリメートル角以上の大径木の流通量 可能な限り早期の木造復元の場合、大径木の流通量が少ないため、困難であると考えられるため、「困難」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、他の城郭等の整備が進むことにより、今後より一層入手が困難になっていくと予想されるため、「極めて困難」 木材調達として、国有林の木曽檜の流通量 可能な限り早期の木造復元の場合、木曽檜の供給量は、森林保護の観点から供給量を調整しており、入手困難な状況が続くと予測されるため、「困難」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、現状と40年後の木材流通量が大きく変化しないと考えられるため、「困難」 木材調達として、一般木材の流通量 可能な限り早期の木造復元の場合、120ミリメートル角程度の住宅用木材は安定して入手できる状況であるため、「普通」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、現状と40年後の木材流通量が大きく変化しないと考えられるため、「普通」 社会情勢として、建設コスト 可能な限り早期の木造復元の場合、人工不足と資材不足による高騰が生じているため、「困難」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、想定は困難であるが、人工不足や建設費の上昇は予測されるため、「困難」 社会情勢として、生産年齢人口 可能な限り早期の木造復元の場合、平成27年に約143万人、平成32年には約140万人と予測されるため、「普通」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、平成52年には約116万人と予測されるため、「困難」 社会情勢として、税収 可能な限り早期の木造復元の場合、好調な企業業績などにより3年連続で増収であるため、「普通」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、東京都の試算ではあるが、10年後に都税収が1.5%減、歳出が8%増となっているため、「困難」 社会情勢として、大工や技術者の確保 可能な限り早期の木造復元の場合、大工や技術者の確保が可能な状況であるため、「普通」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、減少傾向にあり、後年になるほど減少が予測されるため、「困難」 施設運営として、工事期間中の観光魅力 可能な限り早期の木造復元の場合、本丸御殿完成後であり、集客を見込むことが出来るため、「普通」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、新たな観光資源等の検討が必要であるため、「困難」 施設運営として、40年間の維持管理費 可能な限り早期の木造復元の場合、現天守閣の耐震及び大規模改修が不要なため、「普通」 なお、光熱水費及び通常改修費は約12億円 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、現天守閣の耐震及び大規模改修が必要なため、「極めて困難」 なお、改修費は約29億円で、光熱水費及び通常改修費は約43億円 財源 可能な限り早期の木造復元の場合、十分な検討が必要ため、「困難」 耐震改修し概ね40年後の木造復元の場合、十分な検討が必要ため、「困難」 131ページ 4 今後の進め方 ・現天守閣は石材の劣化、設備の老朽化や耐震性の確保など、さまざまな課題が生じている。また、耐震改修した場合でもコンクリートの劣化から概ね40年の寿命であり、再建を行う場合には木造復元に限られる ・平成26年度調査では、可能な限り早期の木造復元か、耐震改修し概ね40年後の木造復元かについて比較検討した結果、木材調達、社会情勢及び施設運営の各項目において、可能な限り早期に木造復元を行うことに優位性があった ・今後は可能な限り早期の木造復元を目指し、調査結果などを市民に丁寧に説明しながら、財源の確保や技術的課題などを一つ一つ整理していく 132ページ (空白) 133ページ 資料5 指示書 平成27年8月24日付け 名古屋市長 河村たかし より 市民経済局長 みやむらよしあき殿 あて 1 名古屋城跡の具体的な復元整備計画を、速やかに策定すること。 2 復元整備計画は、まず本丸(大小天守、東北隅櫓、多聞櫓、門、石垣等)、二の丸(御殿、庭園、門、石垣等)を整備することとし、本丸天守の復元は、今秋から着手すること。 3 本丸天守の復元の手法については、技術提案交渉方式を採用するものとし、9月議会までに法的・技術的課題をクリアすること。また、技術提案交渉方式を進めるために必要な予算を9月議会に提出すること。 4 今後の名古屋城の維持・管理・運営について、新たに民間の知恵も導入すること。 以上、本件の全責任は私が取るので、各員全力で取り組まれたい。 134ページ (空白) 135ページ 資料6 経済水道委員会説明資料 令和元年9月25日 観光文化交流局 経済水道委員会説明資料(1) 136ページ 目次 1 本市が想定している現状変更許可の手法のイメージ 2 天守台北側石垣にかかる本市と石垣部会の見解 137ページ 1 本市が想定している現状変更許可の手法のイメージ 発掘調査等では、現状変更許可を得て発掘調査・分析をして保存方針を策定する。 現天守閣解体では、継続審議の現状変更許可申請に保存方針を反映させてから現状変更許可を得て解体に進む。 穴蔵石垣の解体・発掘調査では、現状変更許可を得て解体・発掘調査・分析をする。 天守木造復元では、保存方針を反映させたものを復元検討委員会にかけて現状変更許可を得たら、穴蔵石垣の解体・発掘調査も調査結果を反映させて復元に進める。 138ページ 2 天守台北側石垣にかかる本市と石垣部会の見解 (1) 一致している点 ・北面の孕み出しの直下の堀底の状況を調査によって確認し、必要であれば対応策を講じる (2) 一致していない点 本市の見解 ・レーダー探査及びビデオスコープ調査の結果から、石垣背面の栗石の緩みはあっても、大きな空洞はない ・非解体の補修は、必要に応じて行う 石垣部会の見解 ・足場に登って見た限りでは、築石の目地の奥には栗石が見えず、内部に空洞がある ・何らかの非解体の安定処置は絶対に必要 139ページ 経済水道委員会説明資料(2) 140ページ 目次 参考資料 現天守解体の現状変更許可申請に対する本市への指摘事項 141ページ 参考 現天守解体の現状変更許可申請に対する本市への指摘事項 1 文化審議会の判断 文化審議会において、更に確認を要する点があり、名古屋市に追加情報の提供を要請し、その内容を踏まえて引き続き調査を行うことが適当であると判断された 2 追加情報の提供を求められた事項 (1) 現天守の解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための調査・検討について ・今回のような石垣等遺構に近接する地点で行う大規模工事を計画するのであれば、考古学的視点からの調査・検討と、工学的視点からの検討とを突き合わせ、総合的な視点から、特別史跡の石垣等遺構への影響評価を行い、当該各種調査・検討結果を踏まえて、適切な解体・仮設物設置計画を策定するべきである ・また、これらの諸過程において、各分野の有識者による十分な議論と合意形成がなされることが必要である ・仮設物の設置等が、地盤や石垣全体へ与える影響を分析する等の工学的視点から検討されており、文化財である石垣や地下遺構の詳細な現状把握に基づく考古学的視点からの調査・検討が不足している ・名古屋市においては、以下に示す点を始めとして、どのような調査が必要かについて、各分野の有識者による十分な議論と合意形成を行った上で、必要な調査を実施し、石垣等遺構に影響の無い工法を選択し、その保存を確実に図る計画となるよう必要な見直しを行うべき 142ページ ア 内堀の地下遺構の把握、御深井丸側内堀石垣の現況及び安定性を確認するための追加発掘調査 ・大型重機や仮設構台を設置することとされている内堀底面については、地下遺構の全体状況を正確に把握し、遺構保存を前提とした仮設物設置計画の検討が必要である ・内堀底面についてはこれまで13箇所で発掘調査が実施されているが、調査箇所が限定的であるため堀底面の安定性の確認が困難であり、地下遺構の全体状況の正確な把握のためには不十分である ・内堀内に盛土し、大型重機や仮設構台を設置することにより土圧のかかる御深井丸側内堀石垣については、石垣の現状を把握した上で、石垣に影響のない工法及びその保存を確実に図る計画について検討することが必要である ・当該石垣については、これまで、地上部分については現況調査が実施されているが、地中の石垣裾部の発掘調査については一部実施されているのみであり、石垣の現状の正確な把握のためには不十分である ・これまでの調査により、孕み出し箇所も確認されており、石垣裾部の発掘調査等、より詳しい現況調査が必要と思われる ・内堀内の調査を速やかに実施し、その結果を踏まえて石垣等遺構に影響の無い工法を選択し、その保存を確実に図る計画となるよう必要な見直しを行うべきである 143ページ イ 御深井丸の地下遺構把握のための発掘調査 ・仮設構台・桟橋を設置することとされている御深井丸については、地下遺構の状況を把握し、遺構が集中している箇所には構台等を設置しない等の検討が必要である ・御深井丸についてはこれまで地下遺構把握のための発掘調査が実施されていない ・御深井丸では構台設置個所の西半分のみの試掘の計画となっており、外堀に向かう桟橋橋脚設置地点については試掘の計画がない ・仮設構台・桟橋設置地点全体において、調査を実施した上で、石垣等遺構に影響の無い工法を選択し、その保存を確実に図る計画となるよう必要な見直しを行うべきであり、別途必要な調査に係る現状変更許可申請を行った上で調査を実施し、その結果を踏まえて計画に変更が必要かどうかを検討すべきである ウ 大天守台北面石垣の孕み出しについての調査・検討 ・内堀内に盛土し、大型重機・仮設構台を設置することで土圧がかかることにより、孕み出し部分裾部が影響を受ける可能性があるため、発掘調査を実施して孕み出し部分裾部の石垣及び地盤の状況を把握する必要がある ・大天守台石垣裾部の発掘調査について、速やかに申請を行い、調査を実施した上で、その結果を踏まえて石垣等遺構に影響の無い工法を選択し、その保存を確実に図る計画となるよう必要な見直しを行うべきである 144ページ エ 天守台石垣背面等の空隙についての調査 ・天守台石垣については、工事の影響を直接的に受ける場所であるとともに、内堀内に盛土し、大型重機・仮設構台を設置することにより石垣下部に土圧がかかることから、石垣の現状を把握した上で、石垣に影響のない工法及びその保存を確実に図る計画について検討することが必要である ・石垣背面に大きな空隙が確認されていないことをもって、天守解体による天守台石垣等への影響が軽微であると判断する旨の所見が示されているが、工事による天守台石垣等への影響を判断するためにはこれらの調査内容では不十分であり、有識者における議論の上で、レーダー探査を行う間隔を狭めて観察する等、精度を上げて調査することが必要である ・天守台以外の石垣については、空隙調査は実施されていないとのことであるが、これらの石垣についても調査が必要であると考えられる (2) 現状変更を必要とする理由について ・天守解体という現状変更を必要とする理由が耐震対策のみであるのか、木造天守復元のためであるのかについて、整理がなされていない状況にあり、申請者において改めて検討・整理することが必要である ・天守解体を選択する理由として木造天守復元を挙げるのであれば、天守解体と木造天守復元を一体の計画として審議する必要があるため、木造天守復元に係る計画の具体的内容を追加提出されたい 145ページ 資料7 第6回天守閣部会議事資料「バリアフリーの検討(案)について」 1 基本方針 史実に忠実な木造復元 ・名古屋城天守閣は、昭和実測図、ガラス乾板、金城温古録等の史資料が豊富に残されているため、史実に忠実な木造復元を行う。 ・特別史跡名古屋城跡の本質的価値を高めるため、原則として、旧来の材料と工法により木造復元を進める。 利用者の安全性の確保 ・大規模木造建築となる復元天守は、火災発生時は炎や煙が瞬時に拡大するため、防火対策や消火設備を最優先で設置する。 ・多層階の木造建築物となる復元天守は、火災発生時等の非常時に不特定多数の利用者が速やかに退城できるようにするため、安全かつ円滑に避難できる対策を講じる。 ユニバーサルデザイン(バリアフリー)の採用 ・木造復元天守は、すべての来城者にとって公平かつ快適に利用できるようにするため、障害者、高齢者、外国人等に配慮したユニバーサルデザインを導入する。 ・車いす使用者等が、木造復元天守を不自由なく観覧できるようにするため、エレベーターの設置や段差の解消等、合理的配慮を目指す。 2 エレベーターの設置について 本市の考え方は、エレベーターは設置しない。ただし、代替案で車いす使用者等の合理的配慮を目指す。 3 エレベーター設置に代わる代替案と課題 代替案 ・地層から5層の表階段に設置するチェアリフト ・地上から5層の移動用に導入する階段昇降機 チェアリフトの課題 ・すべての表階段にチェアリフト用レール及びイスを付加することとなる。 ・各層を観覧する際は、別途車いすが必要となる。 チェアリフトと階段昇降機の課題 ・チェアリフトまたは階段昇降機の使用時は、表階段の片側通行や通行止めをおこなって、一般観覧者の通行を一時制限する等の安全対策が必要となる。 階段昇降機の課題 ・既製品では、木造天守階段の急勾配や高い蹴上等に対応できないため、技術開発が必要となる。 ・急勾配及び蹴上が高いため、階段昇降機を取り扱う介助者が操作中にバランスを崩した時など、安全面に懸念がある。 4 結論 ・現時点では、エレベーターを設置せず、地層から5層の表階段にチェアリフトを設置する。 ・今後の技術の進展を注視し、優れた代替案があれば、改めて検討する。 146ページ (1) 代替案のチェアリフトの例 シンテックス社のタスカル・アルーラ ・屋内や屋外、踊り場や曲がり階段に対応した、座った状態のまま階段の昇降が可能。 ・積載量は90キログラム。 ・定格速度は分速5.5メートル。 ・勾配は0度から55度まで対応。 ・レールの長さは最長で50メートルまで、標準は7メートル。 ・操作については、手元のレバーを押すのみ。また、呼び送りスイッチで離れたところからも操作可能。 ・誤動作防止用のキースイッチや障害物検知装置、シートベルト等の安全装置あり。 ・イスが90度回転する機能があり、乗り降りしやすい。 ・レールがあるため、階段の有効幅員が14センチメートルから20センチメートル減り、また、イスを折り畳んだ壁からの出寸は37センチメートルとなり、階段幅は75センチメートル以上必要。 ・1階から2階で1日10回往復する場合、消費電力は、1日約2円。 (2)代替案の階段昇降の例 アルバジャパンのスカラモービル ・駆動システムを持つ、座った状態のまま、階段を昇降することが可能。 ・重量は29キログラム。最大積載量は180キログラムで、利用者体重の最大は140キログラム。 ・階段の端の段鼻を傷めない構造。 ・踏面170ミリメートル以上、蹴上250ミリメートル以下での対応は可能。 ・最速で1分間に18段のぼることが可能で、最遅は1分間に8段。 ・昇降可能角度は50度まで、勾配50度以上での対応の可否は不明。 ・専用の車いすとセットのタイプについては、平行移動から階段昇降する際に車輪の着脱が必要。 ・本体に椅子が直接ついているタイプは、平行移動も可能だが、平行移動用の車輪でないため、負荷し続けた場合、車輪が損傷する可能性がある。 ・耐用年数は6年、メーカー保障は1年。 ・介助者・操作者については、メーカーからの操作講習を受ける必要があり、講習修了後、認められた者が証書の免許を発行し、介助が認められる。 ・発売されてから、20数年の間、死亡に至る大きな事故はなし。 ・市内・県内での納入実績を調査中。 ・開発費がかかる前提で特注品の新規開発を打診中。 147ページ 資料8 経済水道委員会説明資料「名古屋城天守閣整備事業における解体と復元を一体とした全体計画(中間報告)について」 令和4年12月5日 観光文化交流局 148ページ 目次 1 「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」の結果 2 解体と復元を一体とした全体計画 添付資料 特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計(案) 149ページ 1 「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」の結果 (1) 公募の目的 公募によりできるだけ多くの方が使用できる昇降技術を募り実用化することで、史実に忠実な復元とバリアフリーの両立を実現 (2)公募における高齢者、障害者等の意見聴取 ア 高齢者、障害者等の参画 令和2年の「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の改正において、歴史的建造物を再現する場合等におけるバリアフリー整備の在り方について、高齢者、障害者等の参画の下検討が行われるよう、必要な措置を講ずることとされた趣旨針監み、提案された昇降技術に対し、高齢者、障害者等からの意見を聴取し、技術対話でその意見を反映 イ 意見聴取(ワークショッフ) 令和4年9月2日・9月3日 高齢者45人参加 令和4年9月9日・9月10日 障害者等28人参加 (3) 審査 ア 日程 令和4年11月24日 イ 評価員 五十音順、敬称略 アベ カズオ 一般社団法人バリアフリー総合研究所ユーディーラボ東海代表理事 専門分野は建築バリアフリー カワタ カツヒロ 名古屋工業大学名誉教授、名古屋市文化財調査会委員(建造物?町並み部会部会長) 専門分野は建築史・意匠 グリズデイル・バリージョシュア 観光地のバリアフリー情報「アクセシブル・ジャパン」運営代表 専門分野はインバウンドバリアフリー タナカ ヒデカズ 元名古屋工業大学特任教授、田中秀和技術士事務所所長 専門分野は制御工学 ツカダ アツシ 名城大学理工学部准教授 専門分野は福祉機器の開発等研究 ヤマモト タツヒサ ボーダレス・プランニング株式会社代表取締役 専門分野は経営学 150ページ ウ 主な審査基準及び内容 実現性の最低要求水準 ・提案に実現性があること ・必要な許認可を把握していること 実現性の加点要求水準 ・体制及び開発・導入スケジュールにより昇降技術開発、製造、導入が可能であると見込めること ・必要な許認可が得られる見込みがあること 安全性の最低要求水準 ・停電、火災、地震等災害が発生した場合の対応策が講じられていること ・利用時のいかなる場合でも利用者等の安全が確保されていること 安全性の加点要求水準 ・利用時の安全性確保のための対策が講じられていること ・木造天守自体の防災・安全性に支障を与えない工夫がされていること 価格の最低要求水準 ・見積金額が指定する契約金額の上限以下であること 価格の加点要求水準 ・導入費用等が抑制されていること ・維持管理費用が抑制されていること バリアフリーの最低要求水準 ・少なくとも大天守1階に昇降ができること バリアフリーの加点要求水準 ・利用対象者の範囲が広いこと ・誰もが簡単に使えること ・可能な限り健常者の移動と同じような時間で移動できること ・多人数による反復した利用が可能であること ・可能な限り健常者の移動経路を妨げず、共存した経路であること ・大天守のより上層階まで上がれること ・怖い思いをしないで利用できること ・他人の助けを借りることなく昇降ができること 史実に忠実の最低要求水準 ・柱や梁などの主架構を変更しないこと ・取り外すことにより、史実に忠実な状態に戻すことができる設置手法とすること 史実に忠実の加点要求水準 ・可能な限り木造天守の外観や内観を損なわないこと ・木造天守に使用されている木材を保護すること 運用の最低要求水準 ・導入後も日本国内に5年以上サポートし続けられる体制を確保できる見込みがあること 運用の加点要求水準 ・導入後の維持管理、サポート体制が設けられていること 151ページ エ 審査方法 ・審査は、様々な分野の有識者である評価員が行い、書類審査及びプレゼンテーション審査を実施する ・書類審査は、公募参加者が提出した審査申請書類について最低要求水準が満たされているかを確認した後、加点要求水準の審査を行い、採点する ・プレゼンテーション審査は、公募参加者によるプレゼンテーションを受け、書類審査で実施した加点要求水準の採点を必要に応じて修正し、採点を確定する (4) 審査結果及び最優秀者 ア 審査結果 評価員6名による1,000点満点の採点で平均点が高い順の4者の結果 株式会社エムエイチアイ・エアロスペースプロダクション 提案技術は、フェリー等の船舶内及閃抗空機搭乗機材への導入実績のある技術をベースに開発する垂直昇降設備 点数は857.7点 ティーケー・ホームソリューションズ・ジャパン株式会社 提案技術は、階段部にレールを設置してそのレールの形状に沿って駆動する「いす」型階段昇降幾 点数は645.3点 サイバーダイン株式会社 提案技術は、装着者の姿勢や動きをアシストする装着型ロボット、及び、平地と階段の両方を移動する搭乗型ロボット 点数は528.0点 トッパン印刷株式会社 提案技術は、配信者が撮影している城内の映像を大型ディスプレイ等通じてコントローラーや音声でコミュニケーションをとりながら遠隔体験する技術 最低要求水準未達のため採点なし 152ページ イ 最優秀者 株式会社エムエイチアイ・エアロスペースプロダクション ウ 最優秀者の提案内容 昇降技術開発は税込で79,000,000円 昇降技術導入は税込で198,000,000円 提案技術の主な内容 ・1階ごとに昇降する設備を各階に設置 ・大天守内部の昇降が可能な垂直昇降設備 ・復元する木造天守の、地震時等に通常の建築物より大きく揺れるという課題に対応可能 ・車椅子利用者1名と介助者1名、もしくは非車椅子利用者4名の搭乗が可能 ・船舶等への導入実績のある垂直昇降設備をベースに開発し、柱・梁の間に収まる大きさにダウンサイジング 駆動部をダウンサイジングすることで面積を小さくできる図を掲載 153ページ エ 意見聴取(ワークショップ)における最優秀者への主な意見及び反映状況 バリアフリー対応装備 「かごが狭いので、操作ボタンの設置個所を増やしてほしい」の意見に対し、「かごの両側面に操作パネルを設置」と反映 「開延長ボタンや挟まれ防止のセンサーが欲しい」の意見に対し、「操作パネルに扉開時間の延長機能と、挟まれ防止の扉反転機能を付加」と反映 「鏡は車いす利用者にとって必要なので、設置して欲しい」「点字の対応も必要」の意見に対し、「手すり、鏡、点字を設置」と反映 「視覚障害の方の利用を考え、音声案内があると良い」の意見に対し、「運転方向や到着を音声で案内」と反映 その他 「密閉空間が苦手なので、外が見えるようにして欲しい」の意見に対し、「ドアに小窓を設け、閉塞感を軽減」と反映 「二方向に扉を設置し乗った向きのまま出られるスルー型にできると良い」の意見に対し、「技術的にスルー型は対応可能であるが、かご内寸法が狭くなるので、開発段階での協議により対応」と反映 オ 提案技術等に対する障害者団体からの主なご意見 ・垂直昇降設備が良い ・垂直昇降設備のものが一番良く、これであれば納得できる ・垂直昇降設備とその他の技術を組み合わせると良い ・皆さんが利用しやすいものであればどれでも良い ・これまでにない新しい技術がもっと出てきて欲しかった ・公募の実施自体に反対の立場である 154ページ (5) スケジュール 令和4年度のスケジュール 令和4年4月18日 公募開始 令和4年6月10日・7月11日 質問回答 令和4年8月12日 提案書の提出期限 令和4年9月2日・9月3日・9月9日・9月10日 提案技術に対する高齢者、障害者等の意見聴取 令和4年10月24・10月25日 技術対話 令和4年11月24日 審査 最優秀者1者選定 令和5年1月から3月にかけて協議して、バリアフリーの全体計画に反映 令和5年度以降のスケジュール 基本協定締結 昇降技術開発に向けて、技術開発に対する高齢者、障害者等の意見聴取をして、試作機を含めた設計及び開発 昇降技術導入に向けて、実機製作及び木造天守に導入 155ページ 2 解体と復元を一体とした全体計画 (1) 計画の位置付け 現天守閣の解体と木造復元の現状変更許可申請手続きを行うためには、文化庁の復元検討委員会での復元事業の妥当性についての議論が必要となる。その議論の開始のために、解体と復元を一体とした全体計画を「特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画」として取りまとめる。 (2) 特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画の構成 ア 本編 第1章 木造天守復元の概要 本計画策定の目的、特別史跡名古屋城跡の概要、天守復元の目的・意義・方針、整備スケジュール及び有識者会議における検討経過等 第2章 石垣等遺構の保存 天守閣整備事業に係る石垣等遺構・遺物の現況の整理及びその中長期的な保存のために必要な対応策 第3章 現天守閣の記録の保存と記憶の継承 現天守閣の概要、果たしてきた役割等の評価及び現天守閣の記録の保存と記憶の継承 第4章 復元の根拠資料 遺構、遺物、古写真、昭和実測図、古絵図及び文献等の復元根拠資料の採用方針と復元根拠資料を用いた復元原案検討の考え方 第5章 復元時代の設定 復元する天守の時代設定(宝暦大修理後〜焼失前) 第6章 復元原案の考証 各復元根拠資料を相互に照合・分析した結果に基づく復元原案(設定した時代における本来の天守の姿)及び復元原案図 第7章 現天守閣の解体・木造天守復元時における仮設計画 現天守閣解体時、木造天守復元時、石垣の保存及び安全対策工事時における各段階の仮設計画と、その仮設計画が石垣等遺構の保存を確実に図ることができることを検証 第8章 復元計画と利活用 復元原案に、観覧者の安全対策、バリアフリーを含めた観覧環境の整備等を付加・反映した、実際に復元する木造天守の整備計画と公開活用、維持・修繕計画 156ページ イ 図面編 復元する木造天守の主要図面及び現天守閣の主要図面 ウ 資料編 本編に整理した各事項に係る調査、分析、検討等に関する資料及び本編の内容を補足する資料 (3) 取りまとめの進捗状況 ア 全体の進捗状況 文化庁とも相談の上有識者会議に諮り、全8章の構成となる本編の概ね第7章まで了承を得るなど取りまとめを進めている イ 本編各章の進捗状況 第1章「木造天守復元の概要」は、概ね完了で、鳥緻図作成中 第2章「石垣等遺構の保存」は、今後、穴蔵石垣の調査結果を反映 第3章「現天守閣の記録の保存と記憶の継承」は、完了 第4章「復元の根拠資料」は、完了 第5章「復元時代の設定」は、完了 第6章「復元原案の考証」は、概ね完了で、大天守の一部と小天守について取りまとめ中 第7章「現天守閣の解体・木造天守復元時における仮設計画」は、完了 第8章「復元計画と利活用」は、取りまとめ中 157ページ (4) 主な課題にかかる検討状況 石垣保存方針・基礎構造の方針の現状 ・天守台の現在の石垣面の状況を踏まえ、石垣の本質的価値を適切に保存するための管理の徹底と、現変形が進んでいる石垣面の適切な修理を石垣保存の原則として第2章にまとめた ・天守の地階となる穴蔵石垣の遺構の残存状況及び安定状況の把握を目的として、穴蔵石垣の根石周辺及び背面の発掘調査を現状可能な範囲で実施 石垣保存方針・基礎構造の方針の課題 ・穴蔵石垣の根石付近や穴蔵の床面において江戸期の旧状を留めている部分があることを把握 ・穴蔵石垣は、適切な構造を有しておらず、安定性が担保されているとは言えないことを把握 石垣保存方針・基礎構造の方針の今後の方向性 ・現在行っている穴蔵石垣の調査結果等を踏まえて、天守台の遺構の保存が可能な基礎構造につい畠て有識者への相談を進め、今後、第8章にまとめる予定 ・なお、現天守閣解体後に穴蔵石垣の全面的な発掘調査を行ったうえで、大地震発生時にも観覧者の安全が確保できる安定性向上及び安全確保の対策と基礎構造について、改めて具体的な方法を検討 バリアフリーの方針 ・公募により天守に導入する昇降技術を選定 ・今後は、選定した昇降技術を踏まえた木造天守観覧の移動手段におけるバリアフリーの方針について有識者への相談を進め、第8章にまとめる予定 158ページ (5)今後の予定 令和4年度の進め方 令和4年度末までの取りまとめに向け、引き続き、文化庁、有識者に相談、ご指導をいただきながら進めていく 工事着手までのスケジュール 令和4年度は、特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画の取りまとめ 令和5年度以降は、特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画を文化庁へ提出し、復元検討委員会を経て、文化庁への許可申請手続きを終えて、復元工事に着手